最低ラバーズ(後編)

「……ぁ……はぁ…………あぁ……」

やっと射精が終わる頃には、自分の身体を支えていられなくて
トイレの壁に斜めに身体を預けていた。
ゆかりの手がそっとペニスからスカートを剥ぎ取っていく。

「……うわぁ、すごい量だねぇ。
 あのね……さっきより重たくなってるの分かるよ。
 洗濯機から出したみたいに重いし……臭いもすごい。
 ふふ……こんな行為でこんなに射精できるなんて。
 やっぱり私の思ってたとおりの人だ……」

汚物を持つようにしてスカートをつまみながら、
もう片方の手でゆかりは鼻をつまんでいた。
スカートのひだのあいだから精液がつうっと垂れて
僕の膝にこぼれ落ちる。

「あぁ……本当に汚い、最低の人間の精液。
 でもいいよ……小野くんが屑であればあるほど私は嬉しいの」

「……ゆかり……なんで?
 なんでこんなことするの……僕がなにかした?
 怒らせたなら謝るから……」

呼吸を整えながら問いかけた。
でもゆかりは微笑み返してくる。

「怒ってなんかいないよ?
 いまも言ったでしょ、私はとってもとっても嬉しいの。
 こんな最低の人と知り合えて」

「ねえ……どうしたのさ……!
 こんな手錠とか、それに……その、射精させたりとか。
 おかしいよ……どうかしてる」

「そうだね……そろそろ答え教えてあげようか。
 じゃあ、こっちに付いて来て」

言って、ゆかりはすたすたと廊下を歩き出す。
僕はまたあの不格好な歩き方で、必死に彼女の後を追う。
ペニスも露出したままだったけれど、どうしようもない。

少し先で立ち止まったゆかりが、笑いながら僕を見てる。
たしかにその笑顔は嘘には見えなかった。
どこか歪んでいる気はしたけれど、でも幸福な表情だった。

ゆかりはそういう人だった、ということなんだろうか。
恋人をいじめて遊ぶのが好きで好きでたまらない人。
その素顔を今夜さらけ出した……そうなんだろうか。

「ふふ、遅かったね」

辿りついたところで、からかうように言われる。
けど、いまはもう言い返す気力も湧いてこなかった。
ゆかりはちょっと意外そうに僕を見つめて、
それからくすっと笑う。

「疲れちゃったかな?
 でも……そっちはまだまだ大丈夫だよね」

ゆかりの視線は僕の股間に向いていた。
さっき射精したばかりなのに……またペニスが上向き始めてた。
いくらなんでも異常だった。

「小野くん、絶倫なんだ……なんて言われたら嬉しい?
 でも残念、これも私のおかげなんだよ。
 睡眠薬と一緒にね、そういう薬入れておいたの。
 何回でもたっぷり射精できるようになる、素敵なお薬」

「どうして、そんなこと……」

「それはもちろん、いまから気持ちいいことするためだよ。
 さっきのなんかより、何倍も何倍も気持ちいいこと。
 オナニーの真似事なんかじゃなくて、
 直接女の子の身体に触れられる楽しいこと。
 もちろんしたいよね?」

したくない、とは言えなかった。
たとえ彼女の愛情がひどく捻じ曲がったものだとしても、
それでも僕は受け入れたかった。
ゆかりが好きだという気持ちは変わらないし、
それに……先ほどの快感が忘れられない。
あの気持ちよさをまた味わえるなら、
歪んだ恋人たちになってもいいと思えた。

うなずいた僕を見て、ゆかりの目尻がまた緩む。

「ありがとう……ね、最後に確認していいかな?
 小野くんは、私に一目惚れしたんだよね。
 見た瞬間、もういきなり好きになっちゃったんだよね?
 この身体にやらしいこといっぱいしたくなったんだよね?」

「……うん」

「そっか……じゃあ夢を叶えてあげる」

ゆかりが目の前の部屋の扉を開けた。
背中を押されて、中に入る。

「………………え……?」

部屋の床で寝巻き姿の女の子が眠っていた。
手錠と足錠をはめられて、口にはガムテープを貼られてる。
僕との違いは、後ろ手に拘束されていないぐらい。
だけど、そんなことより、なにより。

「ゆか……り……?」

その女の子は、ゆかりと同じ顔をしていた。
耳の形も、肌の色も、身体つきもなにもかも同一。

「私たちは双子なの」

その瞬間、すべてが繋がったような気がした。
どうしてゆかりがこんなに豹変してしまったのか。
まるで別人みたいになってしまったのか。

「まさか、君は……ゆかりじゃ、ない……?」

「いいえ。……私はゆかりだけど?」

「……うぁ?」

びっくりするぐらい間抜けた声が漏れた。
それを聞いて彼女は弾けたように笑い出す。

「あはっ……ふふふ、そういうこと言うかなって思ったけど。
 やっぱり考えちゃうよね、そういうこと。
 でも安心していいよ。
 どこかで入れ替わってました、とかそういうことはしてないから。
 小野くんが妹……すみれと会ったことは一度もないの。
 すみれは別の学校に通ってるぐらいだし」

僕はゆかりと床の女の子を交互に見る。
でもどうしても見分けることができなかった。

「疑うのも無理はないけど、ほんとだよ。
 きっと私の性格が変わった理由が欲しいんだよね?
 答えは、たんに私がそういうふりをしてただけ。
 小野くんと付き合うのにちょうどいい、可愛い女の子を演じてただけ。
 それもぜんぶ……今日のため」

背後からゆかりが抱きつき、体重をかけてくる。
僕はそのままくず折れて膝立ちになる。
ゆかりとそっくりの……すみれの顔が近くなる。

「さあ、これがとっておきのクリスマスプレゼント。
 いまから……すみれを犯すの」

ペニスがびくっと震えて、でもそれを見なかったことにしたくて
身体をよじってゆかりを振り払う。

「そんなこと……そんなことしない!
 意味が分からない。君は……ゆかりなんだろ?
 なのになんで、ゆかりじゃなくて……この子としろだなんて。
 しかも犯せだなんて、なんの理由があって」

「すみれを不幸にしたいから」

僕の背中から離れたゆかりが、すみれに近づく。
手錠のついた両腕を頭の上にどけると、
パジャマのボタンを外していく……。
ブラジャーもつけていなかったのか、
色白で形の良い胸がいきなり見えてしまう。

薬のせいで限界まで屹立していたせいか、
胸を見ただけでペニスが跳ねて射精しそうになる。
んっ…と情けない声がこぼれる。

「かっこいいこと言ってても、もう出ちゃいそうなんだ……。
 そうだよね……私の身体、大好きなんだもんね。
 私のとおんなじおっぱい見たら、もうたまらないよねぇ。
 ほら見て、肌すべすべ。手ざわりもいいんだよ。
 ………………傷なんてどこにもない綺麗な身体」

ゆかり?と思わず声をかけた。
彼女の声があまりに震えていたから。
いまにも泣き出しそうな声だった。

「私とすみれはとっても仲良しだったの。
 どこに行くのも、なにをするのもいっしょだった。
 だけど……あの日は違った。
 家族みんなで親戚の家に出かけた日、
 すみれだけは風邪のせいで出かけなかった。
 私たちだけが玉突き事故に巻き込まれて、
 お父さんもお母さんも死んで、私も大怪我をした」

呟きながら、ゆかりは妹の衣服をさらに脱がしていく。
寝巻きの下も足首まで引きずりおろす。
こまかなレースのついたピンク色のパンツが見える。
ペニスは相変わらず固くなったままだった。

「私、体育のときいつも見学してたでしょ。
 背中にね……大きな傷があるの。
 誰にも見せたくない、見せるつもりもない醜い傷。
 ……おかしいよね?
 私だけこんな身体になるなんて。
 すみれは私の介抱を一生懸命してくれた。
 親切で優しい妹だった。
 だけど……その優しい顔が許せない。
 見ているだけで、頭がずきずき痛むの。
 だから、私はすみれを不幸にするって決めたの。
 私と同じぐらい不幸にしてやるって」

いつのまにか、ゆかりはまた僕の背後に回っていた。
背中に思いきり体重がかけられる。
膝立ちになっていることすらできなくて、
すみれの身体の上に……倒れ込む。

やわらかさが身体中に広がる。
すみれの乳房が頬にあたってぐにゃりと歪む。
逃げようともがくけれど、
ゆかりに押さえられているせいでそれもできない。
むしろすみれの太ももに当たるペニスに、
気持ちのいい刺激を与えるばかりだった。

「だからね……小野くんが告白してくれたときは嬉しかったの。
 一目惚れだって言ってくれたでしょう。
 それってようするに、私の見た目に欲情したってことでしょう?
 それを体のいい愛の言葉に置き換えただけでしょう。
 いつもオナペットにしてますけど、
 よければダッチワイフになってくれませんかってことでしょう」

「ちが…………ん…んんっ……!」

否定しようとした僕の口にすみれの乳房が押しつけられる。

「ほら、綺麗なおっぱいでしょ?
 想像のなかでオナニーして犯してたおっぱいと同じだよ。
 いくらでもちゅーちゅー吸っていいよ。
 揉むのはいまはできないけどね……ふふ」

すみれの胸が僕の唇に押し当てられる。
唇を真一文字に必死に囲んで、それを拒む。

「我慢しなくていいのに……。
 どうせ妹は寝ていてなにも知らないんだから。
 乳首舐めても、身体に跡が残るわけでもないもの。
 せっかくだったら、くわえておいた方がお得じゃない?」

言いながら、かすかに赤く尖った先端を唇の隙間に当ててくる。
それでも僕が拒んでいると、鼻がつままれる。
呼吸ができなくて、思わず息を吸って……乳首を口に含んでしまう。
一度くわえてしまうと、もうだめだった。
いけないと思っているのに……ねぶってしまう。

「ほら……やっぱりそういう人間でしょう?
 睡眠薬を飲まされた無防備な子にだって興奮しちゃうんだよねぇ。
 どんなそれらしいことを言っても、結局は射精のことしか頭にない。
 そうでしょう?
 ……でもいいんだよ、それで。
 そんな人じゃないと、私のためにすみれを犯してくれないもの。
 かんたんに欲望に負けてくれる、
 屑なあなただけが私の願いを叶えてくれるんだから」

舌の先で、すみれの乳首が固く尖っていくのを感じる。
早くしゃぶるのをやめなきゃと思うのに……できない。

「ふふ……もう夢中だねぇ。
 無抵抗な女の子の乳首をちゅうちゅう吸うの気持ちいい?
 いいよ、その最低な唇でおっぱいを隅から隅まで汚してあげて。
 あとですみれが知ったとき、
 絶望して窓から飛び降りたくなるぐらいに穢してあげて」

僕の腰の上にゆかりが座る。
彼女の体重でペニスが押し潰される。
身体の下のすみれの太ももにぎゅうと沈み込む。
こぼれたカウパーで肉棒がぬるぬるに包まれる。

さっきあれだけ出したのに、また射精感が近づいてくる。
竿が震えるたびに、すみれの脚まで振動して、
それがまたたまらない刺激になる。

「さあ、我慢なんてしないで出しちゃおうね。
 いつも妄想してた身体でオナニーできるんだよ?
 良かったねぇ……私みたいな優しい子が恋人で。
 妹の身体で性欲発散させてくれる、最高の彼女でしょう」

出しちゃいけないと思った。
このすみれっていう女の子のために。
そして……ゆかりのために。
僕が我慢できたら、ゆかりを説得できるかもしれない。
こんなことしちゃだめだって、言えるかもしれない。
けど。

「どっちみちね、小野くんはもうすみれを汚してるんだよ?
 さっきのこれ……私のスカートじゃないの。
 すみれが今も毎日着てる高校の制服。
 それをもうどろどろに精液で汚しちゃってるの。
 取り返しなんてつかないの。
 いま我慢してもなにも変わらないの」

その言葉を聞いたとたん、張りつめていたなにかが……切れた。

「……あ………あぁ……!」

精液がどぼっどぶっと鈍い音を立てながら吐き出される。
放つというよりも、バケツをゆっくりと傾けるような射精だった。
大量の精液がペニスの先から流れ出ていく。
すみれの太ももの上に垂れ広がるのもわかる。
垂れた一部が陰嚢のしわの間にまで入り込んでくるのも感じる。
脳の芯が痺れるような気持ちよさがゆっくり続く。
 
 
 
「はい、またひとつどうしようもない人になれたねぇ。
 寝ている女の子の身体で自慰行為にふけるお猿さん。
 もう人間の屑っていうより、人間以下になっちゃったかな?
 そこに気持ちの良さそうなものがあれば、
 なんでも抱きついて腰を振っちゃうんだねぇ」

違う、と言いたくて……すみれの乳房から口を離した。
だけど、自分の唇と彼女の胸をつないでいる唾液の糸を見ると、
もうなにも言えなかった。

「ん……おっぱいには満足したのかな?
 あはぁ……ねえ見てよ、これ。
 この子のおっぱい、もうべっとべとじゃない。
 どこもかしこも濡れてるし……わ、変な臭いまでする。
 とっても汚いね。醜いね」

あんまり嬉しそうにゆかりが言うせいで、
自分がしてることが悪いことだと忘れそうになる。
頭がくらくらする。

「それじゃあ次に行こうか……お待ちかねの時間だよ。
 想像のなかで何回も何回もしてたはずの、
 最高に気持ちいい時間がやって来たの。
 この子の穴を犯しつくす楽しい時間」

盛られた薬のせいだろうか、
あるいは僕が最低な人間のせいだろうか、
またペニスが固さを取り戻しはじめる。
腰の奥が異様に熱を持っている。

でも、でもいくらなんでもそれだけはしちゃいけない。
たとえ舌を噛み切ってでも、防がなきゃいけない。
この子のためにも、僕のためにも……ゆかりのためにも。

「さあ、まずは一回起き上がろうねぇ」

ゆかりの手で僕の身体がすみれから引き離され、
膝立ちの体勢に戻される。

あたたかい妹の身体が離れる感覚が切なくて、
それからすぐにそんな思いを抱いてしまった自分に吐き気を覚える。
僕はいま、彼女の復讐の道具にされているっていうのに。
この子はなんの罪もないのに。
なのに、その復讐に乗って気持ちよくなりたがる自分が気持ち悪い。

「ゆかり……こんなこと、もうやめよう」

だけど彼女は僕の言葉なんて無視して、
すみれの姿勢を変えていく。

まずパンツを足首まで引きずりおろした。
それから身体を丸めて膝を抱える格好にして、
そのまま両脚をぐいっと持ち上げる。
体操の後ろ回りをしようとして、
途中で止めたみたいな姿勢だった。
そして……すみれの秘所が丸見えの体勢だった。

「ね……とっても気持ち良さそうな穴でしょう。
 何回でも何回でも、満足するまでここに出せるんだよ?
 小野くんは気持ちがいい。そして私は幸せ。
 止める理由なんてないでしょ?」

「この子が……すみれちゃんが悲しむ。傷つく。
 そうだろ? ……ゆかりの気持ちも分かるよ。
 分かるけど、でもそんなの……逆恨みじゃないか。
 僕はゆかりにそんなことしてほしくない。
 そんなゆかりは好きじゃ」

「綺麗事言わないで」

いきなり……さっき汚したスカートを顔に投げつけられる。
鼻をつくような臭いとともに、精液が頬や唇にこびりつく。

「そんなことしてほしくないって?
 ねえ……本気でそんなこと言ってるの?
 私はあなたが望んでるとおりにしてあげるお人形じゃないの。
 あなたの言うことをなんでも聞く女の子が欲しいなら、
 粘土でもいじって作ってればいいのよ。
 どうせよがってびゅーびゅー射精するくせに、
 私を分かったようなこと言わないで。
 そんなことを言うような人なら、人間の屑の方がよっぽどまし。
 罪悪感を感じながらも、素直に欲望に溺れる人間の方がまし。
 ……わかった?」

しばらく……放心していた。
そんなに感情を剥き出しにした彼女をはじめて見たから。
そして……彼女の言うことが正しいかもしれないと、
そんな気がしてしまったから。

「………………わかった。
 じゃあ、ゆかりのためにとは言わないよ。
 自分の保身のために言う……この子を犯したくない」

「なら私はこう言ってあげる。
 ねえ、本当にいいのかな、ここで終わって?
 ここで終わるっていうなら、私は部屋を出て行くけど。
 すみれは目が覚めたらどう思うかな。
 自分は縛られて、自分の足にべっとり精液がくっついてて。
 自分の制服でオナニーされたあともあって。
 知らない男性が同じ部屋にいて。
 それであなたは言い訳できるのかな。
 優しく親切なお姉ちゃんのはずの私が、
 そんなひどいことをしようとしてたなんて信じてもらえると思う?
 ねえ……あなたの人生はそこで終わりよ?
 でもね、すみれを犯してくれたら……手錠を外してあげる」

嘘を言っているようには見えなかった。
……そうかもしれない。
彼女にとっては妹を汚すことが目的で、
それが終わればあとはどうでもいいのかもしれない。
きっと…………そうだ。

「さあ、それじゃあ……どうぞ」

向けられた蜜壷に膝立ちでゆっくりと近づく。
さっきまでの行為で無意識に感じていたのか、
秘所はすでに濡れていた。
すみれの太ももの下に僕の膝を滑り込ませるようにして
そのまま……挿入する。

ぬるっ……という感触とともに亀頭が飲み込まれる。
我知らず、膝を前に進ませていた。
竿が奥へ奥へとどんどん差し込まれていく。
すみれの顔がわずかに歪む。
その表情を見た瞬間、
自分が彼女を……ゆかりを犯しているような錯覚に陥る。
あの身体と交わりたいと願っていたのが実現してる、
その興奮が突然に襲ってくる。

「あぁ……んっ……いい…………いいぃ……!」

手が使えないのがもどかしかった。
彼女の背中を抱いて、思いきりペニスを突き立てたかった。
だけど、いま出来るのは腰を前後に揺らすことだけだった。
たまらなく気持ちよくて、でも絶対的に物足りない。

「あはっ……!ほら、ほぅら……!
 結局そうやって腰を振るんでしょ。いいよ、いいよぉ……。
 もっとしてあげて、犯してあげて。
 恋人のかわりに、下種なあなたの子種を注いでやるの」

恋人、という言葉に一瞬腰が止まる。
だけど、すぐさまゆかりが僕の肩をつかみ、
身体を前後に揺さぶってくる。
結合部からはちゅぷちゅぷと音がする。

「そう、恋人……すみれの彼氏は今もずっと待ってるはず。
 待ち合わせに来ない彼女にいらついたり、心配したり、不安になったり。
 今晩すみれを抱くことを楽しみにしてたのに……かわいそうだねぇ。
 その身体は、こんな品性下劣な人が犯してるんだから」

「……ぅ……あ……」

心臓がべこりと音を立てた気がした。
空き缶を握りつぶしたみたいななにかが歪む音だった。
だけど、もうなにもかも取り返しがつかなかった。
ペニスを抜き取ろうにも、僕の背には彼女が覆いかぶさっていた。
僕にできるのは、すみれの膣でペニスをびくびくさせるだけ。
それに妹の中はどうしようもなく気持ちよかった。
僕を射精するためだけに作られてきたんじゃないかと思うほど。

「さっきの昔話にはね、続きがあるの。
 妹は風邪で寝込んでいたって言ったでしょう。
 あれはね……嘘だったの。
 すみれはばれてないつもりでいるけど、私は知ってるの。
 あの事故の日、この子はそいつとデートをしてたの。
 私が怪我をして泣きじゃくってるときに、
 どこかのホテルであんあん喘いでたの。
 そんなの許せる?……許せないでしょう。
 だから罰を与えるの。
 知らない男の精液をたらふく流し込んであげるの。
 二度と誰かに抱かれようなんて思えなくなるように。
 永遠に不幸にしてあげるの」

……あぁ……そうか。
どうしてゆかりがこんなにも妹が嫌いなのか、分かった気がする。
…………うん……そうだね、それは悪い子だ。
たしかに悪い。罰を与えなきゃいけない。
犯されても…………仕方ない。

……僕がこうやっているのも当然だ。
だから、いいんだ。もっと気持ちよくなっても。
……もっと犯してあげよう。
僕の臭いがとれなくなるぐらい射精しよう。

「ん……動き激しくなったねぇ。
 私の気持ち……分かってくれたのかな?
 それともたんに欲望に負けたのかな?
 ふふ……どっちでもいいか。
 さあ、たっぷり快楽に浸ってね」

心にのしかかっていた邪魔なものがなくなった感じがする。
身体のなかを興奮が駆け巡るのを感じる。
排水溝から逆流する汚水みたいに、
抗いようのない肉欲が溢れかえってくる。

ペニスを何度も突き入れながら、脚に頬をこすりつける。
ああ、なんてすべすべなんだろう。
なんてやらしくて罪深い身体なんだろう。

「ね、ほんとにいやらしい身体だよねぇ」

僕の心を見透かしたみたいにゆかりが囁く。

「小野くんの顔見てればわかるよぉ……。
 すみれの中、とっても気持ちいいんだよねぇ。
 ふふ、よだれが床にも飛び散ってる。
 いい?……あそこの中を、上も下も横も、全部こすり上げるの」

言いながら、ゆかりは妹の腰を持つ。
ぐいっと上から圧がかかり、カリ首が膣壁の上を強くこする。
それから今度は下から押し上げる動きに変わり、
裏筋をひだが次々としごいていく。

「ね、私の妹は最高のダッチワイフでしょ?
 もしも小野くんが望むなら、これをいつでも貸してあげる。
 好きなときに好きなだけ使える自慰道具」

いつもしているオナニーを思い出してしまう。
ゆかりのことを考えながら、自分の手で慰めているあの時間。
あるいはもっと以前の、パソコンで動画や画像を見ながら
虚しくティッシュに吐き出していた時間。
それがこの気持ち良さに永遠に置き換わる。
勃ったなと思ったらすぐにこの身体を犯せる。

……想像した瞬間、射精感がこみ上げてくる。

「分かるよ……出るんでしょ?
 いいよ、なんにもためらわずに出して。
 穴の中ぜんぶに粘っこいのをくっつけるぐらい。
 水なんかじゃ洗い流せないぐらいたっぷりと」

ゆかりがまた僕の背中に回る。
手足が上手く動かせない僕のかわりに、彼女が背中に体重をかける。
ずぽずぽと腰の動きを再現する。
セーター越しに彼女の胸が背中にあたる感触がするたびに、
ペニスのカリ首をぬめったひだがこすっていく。
おっぱいの感触だけで犯されているような異常な感覚。

「……ぅ……あぁっ…………!」

ペニスの付け根がぼこっとへこんだ気がした。
臓器のなにかが破裂したんじゃないかと感じた。
精液が噴き出す。
びゅうっ……びゅーっ……と
精液が飛び出す音が身体の中で鳴りつづける。

ゆかりは体重をかけるのをやめない。
射精中の敏感なペニスが、さらに否応なく抜き差しされる。
彼女の体温を背中に感じながら、彼女そっくりの身体を犯す。
その快感だけがいまのすべてだった。
止まらない。止まらない。
何度も何度もペニスが震えつづける……。
 
 
 
 
 
 
射精が止まり、僕が息を吐く音ばかりが響き、
その次に聞こえてきたのは……くぐもった声だった。
妹が……すみれが目を覚ましていた。

目を見開き、ガムテープ越しになにやら叫ぶ。
だけど僕の隣にいたゆかりの姿を認めて、それも止まる。
瞳が焦点を失っていくのが、はっきりと見てとれた。

ゆかりが僕の背中から離れ……すみれに話しかける。

「あら……起きちゃった?
 そうだよね……さすがにこれだけされたら起きるよね。
 ねえ、すみれ……自分がなにされてるかわかる?
 あのね、この人に犯されたんだよ。
 全然知らない人に、もうたっぷりと膣出しされたの」

声さえ出せず、すみれはただ首を左右に振った。
夢から覚めろとでも言うように、何度も激しく。

「ごめんね……これは現実なの。
 ああ、とってもかわいそうなすみれ。
 ね……まるで交通事故に遭うぐらい突然の出来事だものね」

すみれの瞳に涙が浮かんでいく。
あっという間に涙は膨れあがり、頬をこぼれ落ちていく。

「そんなに泣かないで……あとで私が慰めてあげるから。
 そうね……クリスマスが終わって、大晦日がすぎて、
 とてもいい気持ちで新年を迎えて。
 それでもあなたがまだ正常でいられたら、ゆっくり慰めてあげる。
 ……あ、それから」

ゆかりはポケットから小さな鍵を取り出す。
僕の背に回り、金属音を幾度かさせて……手錠が外される。

「ね、約束ちゃんと守ったでしょ?」

そしてそのまま部屋を出て行ってしまう。
僕の足はまだ拘束されたままだった。
それでも両手が自由になれば…………できることは色々ある。

「……んっ………んんぅ…んむぅっ……!」

両腕を伸ばして、すみれの胸を揉みしだく。
血液が腕に流れ込むこそばゆい感覚と、乳肉のたまらないやわらかさ。
ペニスがまた膨らんでいく。
すみれのおっぱいをまさぐりながら、腰をまた打ちつける。
くぐもった悲鳴を上げながら、それでも膣は淫らに収縮する。

乳首をつまんで引っ張ると、すみれの目がほそく歪む。
そのたびに彼女の中がきつく締まる。
下乳を持ち上げるようにして思いきり揉み込むと
膣がぶるぶると蠕動する。
あぁ、なんて出来のいいダッチワイフなんだろう、この子は。

「…………ぅ……ぁ……」

すみれの嗚咽がどんどん弱くなっていく。
でも、そんなことはどうだっていい。
さっきまで触りたくて触りたくたまらなかった身体を
思う存分にまさぐってやる。
足の裏、ふくらはぎ、太もも、おへそ、脇の下……。
股間からこぼれた精液を手のひらにつけて、
彼女のあらゆる場所を生臭い粘液でべとべとにしていく。

ぬるぬるになった身体を撫でこすりながら、
せり上がってきた射精欲求にまた身をまかせる。
どぱぁ……とすみれの中に静かにたっぷりと射精する。
蜜壷がうごめいて、精液を飲み込んでいくのがわかる。

すみれはもうなにも言わなかった。
唇の端をわずかに開いて、そのまま意識を失っていた。
また眠ってしまったのか、あるいは衝撃で気を失ったのか。
僕にはどちらでもよかった。
ただこの子がまた従順な肉に戻ったという事実があるだけ。

自由になった両手で彼女の腰を抱き、性器を強くこする。
肉と肉がぶつかりあう音が小気味良く響く。
また精液が染みだしてくる。
こらえることなく、漏らすようにして精液を垂れ流す。
何回でも射精しつづける……。
 
 
 
 
     * * *
 
 
 
 
……私は、妹の部屋のドアを開ける。
床の上では、彼がすみれをまだ犯していた。
窓の外はすっかり暗い。
もう25日の夜、クリスマスももうすぐ終わりだった。

およそ丸一日、彼はすみれと交わりつづけていた。
すみれは時々目覚めては、
そのたびに犯されている自分に気づいてまた気を失った。
彼はときどき彼女の身体を抱きしめたまま眠り、
起きるたびにすみれの中に、あるいは外に精液をかけ続けた。

今はもう、すみれも快感に浸っていた。
ガムテープの端から泡立ったよだれをこぼしながら、
穴の開いたような瞳で彼を見つめてる。
ペニスで突かれるたびに、喉元で喘いでいる。

とてもしずかでいい気持ちだった。
自分がとことん最低の人間だと感じられて、
でもそれが不思議と幸せだった。
こんな素敵な夜に出会えて良かったと思う。
それを叶えてくれた彼に感謝してしまう。
醜く息を吐きながら腰を動かしている彼に。

立ち上がり、彼の背中にそっと手をつく。
彼は少しだけ安らいだ表情になる。
でもすみれを汚す行為が止まることはない。
それでいいと思うし、それが嬉しかった。

私は彼の耳に唇を近づけて呟く。
心からの言葉を囁く。
 
 ねえ、私……あなたのこと好きじゃなかった。
 すみれを犯すために必要な道具だと思ってた。
 なんの感情も抱いていなかった。
 
 ……でも、どうしてだろうね。
 こうして私を幸せにしてくれたあなたが、いまはなんだか特別に感じる。
 こういうのも好きになった、って言えるのかな……なんてね、ふふ。
 
 ちょっと恥ずかしいけれど……べつにいいかな。
 どうせ、私の言葉を理解することなんてもうできないものね。
 だから言っちゃおうかな……クリスマスだし、ね。
 
 ほんとうに…………あなたのことが大好き。
 
END