ふしだらパーティ 僧侶編

……足元がふらつく。
……昼過ぎなのにひどく寒い。

見渡すかぎり草原が広がってる。
街まではまだ少し距離がある。
だけどもう……歩けそうにない。

草に足をとられて、地面に倒れこんだ。
土と草の入り混じった臭いが鼻をつく。
脇腹から血が流れ出ていくのを感じる……。

このまま……死ぬんだろうか。

少しでも早くレベルを上げたかった。
僧侶と魔法使いに気持ちいいことをしてほしかった。
そのために格上の魔物ばかりに挑み、
挙句の果てに致命傷を受けてしまった。

転移呪文を唱える力もない。
傷を癒す道具さえ残っていない。
野垂れ死ぬ以外に、選択肢はなかった。

なんてみっともない死に様だろう。
でも……これでいいのかもしれない。
快楽に溺れた屑勇者の最期にはふさわしい。
そうかもしれない……。

意識がゆっくりと遠くなっていく……。

ああ……でも。
最後に………もう一度だけ……。
……気持ち良く……なりたかった…な…………。
 
 
 
     * * *
 
 
 
とく…とく…と血液が身体のなかを巡るのを感じる。
頭の辺りがじんわりとあたたかい。
花の香りのような、良い匂いもかすかにする。
そうっと目を開けると……僧侶の顔があった。

「勇者様、気がつきました?」

僧侶が真上から僕をのぞき込んでいた。
すこし遅れて、自分が彼女に膝枕されているのだと気づく。
気恥ずかしさが溢れて、思わず身体を起こそうとする。
その途端、鋭い痛みに襲われた。

「あ、だめですよ……無理したら。
 勇者様、本当に死んじゃう一歩手前だったんですから」

目だけ動かして辺りを見渡す。
意識を失う前と同じ、だだっ広い草原だった。
僕の傷口はほとんど塞がりかけている。
痛みは残っているけれど、命の危険は感じない。

「僧侶が……助けて…くれたの?」

「そうですよー。
 勇者様が帰ってくるはずの日なのに遅いから。
 心配して探しに来たら、ここで血まみれで倒れてて。
 びっくりしちゃいましたよ、もう。
 あんまり無茶しちゃだめですよ?」

僕の髪の毛を指で梳きながら、僧侶が柔らかく微笑む。
永遠にそうやって見つめていてほしい。
そんなふうにお願いしたくなる、慈愛に満ちた表情だった。
……だけど。

太陽が雲に隠れて、かすかに日が翳る。
それに合わせるように、僧侶の表情が変わっていく。
唇のゆるみが大きくなり、目尻がさらに下がっていく。
いやらしさに満ち満ちた顔になっていく。

半ば無意識に、自分がはめている指輪に目をやった。
指輪は黄色い光を放っていた。
あの禁呪……レベルドレインへの警告の光。

「それにしても……どうしてこんなに無茶したんですか?
 大怪我しちゃうほど強い魔物と戦うなんて。
 ね……どうしてですか、勇者様?」

顔を近づけて僧侶が囁いてくる。
あたかかく濡れた吐息を感じる。
やわらかい胸の感触が頭にあたる。

「もしかして……いっぱいレベルを上げたかったんですか?
 私にいっぱい射精させてほしかった。
 ……そうなんですか?」

白手袋をはめた僧侶の指が、僕の下半身へと伸びていく。
ズボンがするすると脱がされる。
そこではじめて、自分が鎧を脱がされていることに気づく。

「否定しないっていうのは、そういうことなんですよね?
 ふふ……じゃあ、勇者様の望むとおりにしてあげます。
 たくさんレベルを上げてきてくれたご褒美に、
 白いのを気持ちよくびゅーびゅーさせてあげます」

下着も脱がされ、性器が露出する。
勃起さえしていないそれを、白い指が弄びはじめる。

「あは……まだちっちゃくて可愛いおちんちんですね。
 死んじゃいそうで、怖くて怯えてたのかな?
 でももう大丈夫だよ。
 僧侶のお姉さんが回復してあげたからね。
 ほら、いい子いい子」

子供の頭を撫でるみたいに、
萎縮したペニスの先っぽが人差し指でさわさわ撫でられる。
シルクのなめらかな感触に、背筋が震える。

「ん……ちょっとおっきくなってきました。
 勇者様、ちゃんと気持ち良くなってくれてるんですね?
 じゃ、もっと触っちゃいます」

僧侶の手のひらで、きゅっと肉棒が包み込まれる。
その中はすべすべで、あったかくて。
でもあっというまにペニスは大きく硬く勃起して、
彼女の手からはみ出してしまう。

「もう……すっかり大きな子に成長しちゃいましたねぇ。
 でもたぶん、甘えたさんには変わりないですよねぇ」

手袋越しに両手がペニスに絡みついてくる。
小動物の身体をくすぐるみたいに、
十本の指が亀頭、カリ首、竿の裏側…と色んなところをまさぐる。

「や……め…っ……それ…だめ…ぇ………」

「くすっ……なんだか女の子みたいなはしたない声ですよ?
 でも、私知ってるんですよー。
 勇者様がそういう声を出すのは、幸せいっぱいのときなんだって。
 だから……もっとしてあげます」

僧侶の手つきがさらに激しくなる。
すべすべての絹地をたっぷりこすりつけてきたかと思うと、
不意に指の節々でこりこりっと亀頭を刺激したりもしてくる。

「…ぁ……ん……っ……!」

全身がびくびくと跳ねてしまう。
僧侶のタイツ越しの太ももに僕の頬がこすれる。
かすかなざらつきと、弾力のあるやわらかさ、あたたかさ。
同時にペニスに絡みつく、すべすべして、こそばゆい感覚。
それから傷口の焼けつくような痛み。

何種類もの感覚が混じりあって、頭の中がパンクしそうになる。
脳みそがどろどろに溶けてしまってる気がする。

「勇者様ったら……鼻水やよだれがだらだら出てますよ?
 もう……私以外の女の子だったら、汚いって嫌っちゃいますよ。
 ほら、ちゃんと拭かないと」

ペニスから手が離れて、わずかに僕の頭が持ち上げられる。
頭の下から僧服の前かけが引き抜かれ、それで口元をぬぐわれる。

「はい、これで綺麗になりました。
 ん……どうかしたんですか?
 そんなに目を見開いて……気になるものでもあります?」

見ちゃいけない、と思うのだけれど目が離せない。
前かけがめくれたせいで、僧侶の身体が丸見えになっていた。
全身タイツを着けてはいるけれど、
そのせいでかえって身体のラインがよく分かる。
とくに彼女の胸のふくらみは際立っていた。

「ふふ……おっぱい、じーっと見ちゃって。
 本当にどうしようもない、やらしい勇者様ですね。
 ね……触りたいですか?」

うなずくよりも早く、唾をごくりと飲み込んだ。
それだけで……なにもかも見抜かれてしまう。

「くすっ……そんなに触りたいんですか?
 勇者様……いつのまにそんなに快楽に素直になったんですか?
 ちょっと前までは、だめだとか、やめようとか、精一杯抵抗していたのに。
 なのに、いまじゃオナニーを覚えたお猿さんと一緒。
 そういう人には……触らせてあげません」

そんな、と思わず声がこぼれた。
無意識のうちに手が持ち上がり、彼女の胸に伸びていく。

けれど、途端にペニスが指でつよく弾かれる。
性器の痛みに身をよじり、そのせいで傷口が地面に触れた。
刺すような痛みが身体中を走り、思わずうめく。

「勝手なことしちゃだめですよー。
 神様に仕えてる女の子の身体にいたずらしようなんて、
 そんな人には罰が当たって当然です。
 そのかわり……じっとしてたら、ちゃんと気持ち良くしてあげますから」

今度は優しく、さするようにしてペニスがしごかれる。
痛みが少しずつうすらいでいき、
かわりにふわふわとした心地よさが満ちてくる。

指と手の動きに合わせるようにして前かけが揺れ、
僕の首筋をくすぐっていく。
前かけの隙間から、大きな乳房が揺れるのが見える。
その胸に触りたくて、指先がぶるぶる震える。
じれったくて、もどかしくて、息苦しい……。

その焦燥感が……少しずつ射精感に変わっていく。
腰の奥がひくひくと蠢いてるのが自分でわかる。
僧侶の手袋がカウパーにまみれていく。
つるつるとした手袋に粘液が広がり、
ペニスがぬるぬるの感触に埋もれていく。

「にちゃにちゃぁって……いやらしい音ですね。
 透明なのがいくらでも出てきますよ?
 さっきの声も可愛らしかったですけど、
 ここも女の子みたいにびしょびしょです」

風が吹くたびに草々がざぁっと鳴って、
それから濡れたペニスにひんやりとした感触が広がる。
そしてまた僧侶の手で優しくあっためられていく。

傷の痛みはもうほとんど感じない。
腰から下と頭が直結してしまったみたいに、
ペニスが弄ばれる感触ばかり感じる。

「おちんちん、ぴくぴくする回数が増えてきましたね。
 勇者様……そろそろ出したくなっちゃいました?
 神聖な僧侶さんの手のひらにいっぱい出したくて、
 もうたまらないんですか?」

うん…うん…とかろうじて返事をする。
快楽で舌の根までが痺れていて、声がほとんど出ない。
僧侶の唇が横に大きく広がって、淫猥な笑みを形作る。

「ふぅん……そうなんですか。
 でも、一応ちゃんと確認とっておきますね。
 いま射精したら、勇者様の力は私に吸われてしまいますよ?
 それでいいんですか?
 後悔しないって誓えますか?」

こくこくと首を振る。
いまさらすぎる質問だった。

僕はもう……自分が最低な勇者だってわかってる。
レベルを上げるのだって僧侶や魔法使いに力を吸ってほしいから。
気が狂うほどの快楽のなかで、何度も射精したいから。
それだけのために魔物を倒してる屑だってわかってる。

だから、いまさら迷うことなんてなかった。
どうして今日にかぎってそんなことを聞かれるんだろう。

「あはっ……本当ですね?
 後悔しないって誓うんですね……勇者様。
 ……もうっ……なんてあさましいんでしょう……。
 気持ち良くなることしか頭になくて、大切なことも分からないんですね。
 でもいいですよ……勇者様がそう言うのなら、してあげます。
 何度でも、何度でも」

僧侶が膝枕をくずし、僕の頭を草地に横たえる。
それから僕の両脚のあいだに身体を滑り込ませる。

そして祈るように両手を組むと、
手のひらの間にペニスを飲み込んでいく……。
まるで手でできた膣のなかに挿入するような感覚。

挿入感に心奪われながらも、
さっきの僧侶の言葉にかすかに恐怖を覚える。
大切なことが分からないって、いったいなんのことだろう?
射精して、力を吸われて、それでなんの問題があるんだろう?

魔王退治ができない?
そんなこと他の勇者がやればいい。
僕の力が弱くなる?
そんなのいつもみたいにまた経験値をためればいい。

「勇者様……考えたって無駄ですよ。
 射精できればなんでもいいようなお猿さんには、
 いくら考えたって分かりませんよ。
 そんなことより、お猿さんらしく気持ちいいことだけ考えるんです。
 私の両手のなかでたっぷり、たーっぷり射精することだけ。
 あへあへってよがりながら、白いのびゅーびゅー出しましょうね」

僧侶が組んだ両手にぎゅっと力がこめられる。
竿が左右から圧迫されて、またゆるめられる。
ぬっちゅ…にゅっちゅ…と粘ついた水音が響く。

「どうですか、これ?
 おててで出来たあそこですよー。
 こういうのも、ちょっと違う刺激で素敵ですよね?」

まるで膣を締めるようにして、
僧侶の手がぎゅっぱぎゅっぱと小さく開閉する。
ときおり親指が尿道口をとんとんと叩く。
子宮口を打ちつけているみたいな錯覚。

ペニスの表面に、ぞわぞわとした鳥肌みたいな震えが走る。
陰嚢が持ち上がり、精液がペニスの根元に流れ込む。

「くすっ……出ちゃいそうなんですね、勇者様。
 いいですよ、いっぱい出して。
 後先のことなんて考えずに、思いっきり出してくださいね。
 ほら……ほら…っ…」

ぎゅうっっ…と、ひときわ強く両手が締めつけられる。
手のひらの膨らんだ部分がポンプみたいに圧をかけてくる。
強制的に射精が促される……!

……びゅちゅっ………ぶちゅちゅっ……じゅぶっ……!

飛び出した精液が僧侶の手にぶつかっていく。
いくばくかは指の隙間から漏れて、
僧服の前かけや全身タイツの上に飛び散っていく……。
 
 
 
 
 
 
「いっぱい出ましたね……勇者様。
 あはっ……ちょっとこぼれちゃいました」

僧侶は手の平にたまった精液を音を立ててすする。
手の甲や指のあいだにまとわりついたものまで、綺麗に舐め取っていく。
最後には手袋を外して口にくわえると、
布地に染みこんだものまで、ちゅうちゅうと吸っていた。

彼女の姿を見ながら、僕は例の感覚に身を委ねる。
自分の力が抜け落ちて行くときの、あの独特の虚脱感。
この気だるいような感じも、
慣れてしまったいまでは射精の余韻ぐらいにしか感じない。

身体の力がどんどん抜けて…………痛い。痛い。痛い…!

とっさに脇腹を押さえた。
その手にまだあたたかい血が付着する。
傷口が開いて、血がまた流れ出していた。
忘れかけていた痛みが、急速に膨れあがっていく……。

「あ……さっそくですか?」

前かけに飛び散った精液を指ですくい取りながら、
どこかのんびりした口調で僧侶が言う。

「……ぁ…え…? これ……なん…で……?」

「なんでって、勇者様のレベルが下がったからですよー。
 私は勇者様の傷、完全には治してませんでしたから」

タイツの上に水たまりのようにたまった精液もすくいながら、
僧侶はにこやかに話しつづける。

「さっきまでのレベルなら、大した傷じゃなかったんですよ?
 でもいまの弱くなった勇者様にとっては、相当な傷ですから。
 だから、かなり痛みますよね?」

僧侶の言うとおりだった。
のたうち回るような激痛というわけではないけれど、
呼吸するのが苦しくなるほどの痛みだった。
それに、流れ出る血が止まる気配もない。

「だから、さっき確認したじゃないですか。
 本当に後悔しませんかって。
 でも大丈夫だって言ったのは勇者様ですから。
 自業自得ですよ?」

服に飛び散った精液をすっかり舐め取ると、
僧侶は今度は僕の身体にこぼれた精液を舐めはじめる。
太ももの上を、彼女の小さな舌が這い回っていく。

痛みに混じって、あたたかく濡れた舌が肌を這う感触が伝わってくる。
両脚についた精液を舐めきると、舌は下腹部へと近づいてくる。
僧侶が陰毛を口に含み、ねぶっているのが感じられる。
ペニスがまたゆっくりと持ち上がりはじめる……。

「やめ…て……お願い……もう…舐めないで……」

「ん……どうして舐めたらいけないんです?
 力を吸わせてくれるって言ったのは、勇者様ですよ?
 私は約束に従ってるだけですから」

竿が、れろり…れろり…と舐められていく。
ペニスはあっというまに硬くなり、空に向けてそそり立つ。
どくん、と肉棒が震えるたびに、脇腹がずきずきと疼く。
下半身に血が流れ込むのにあわせて、
傷口からは赤黒い血液がさらに大量に流れ出す。

「ふふ……また大きくなりましたね。
 私が舐めやすいようにしてくれてるんですか?
 優しいんですね、勇者様って」

「ち…が…………ぅ……ぁ……」

ぴちゅ…ちゅぱっ…とわざとらしく大きな音を立てながら、
僧侶の舌がペニスにこびりついた精液をねぶっていく。
乾きかけた精液を溶かそうとしてか、
ときおり一部分だけがれろれろと執拗に舐められる。

身体が熱い。額に汗が噴き出してくるのを感じる。
脇腹とは別に、こめかみあたりがズキズキと痛む。
言葉にならない嗚咽めいたものばかり漏れる。
その声を聞いて、僧侶が顔を上げて微笑む。

「みっともない声出さないでください。
 このくらいの怪我だったら、死んだりしませんから。
 ああ、もちろん……いまのレベルのままだったら、ですけど。
 あと何回か吸われたら……どうでしょう?」

だけど、僧侶の行為は止まらなかった。
今度はカリ首の周りが、入念に吸われ、舐められる。
裏筋の隙間に舌先がねじ込まれ、
こびりついた精液を恥垢ごとこそぎ取っていく。

血はどんどん流れ出ていく。
精液の臭いに、鉄錆めいた血の臭いが混じりはじめる。
当初感じた鋭い痛みのかわりに、
鈍く重く、けれど確実に命をすり減らすような痛みが広がる。

なのに……なのに射精感がせり上がってきてしまう。
何日も自慰さえせずに、今日この日のために我慢してきた。
溜まった欲望のはけ口を、身体が探し求めてる……。

「だ…め……止め、て………出ちゃ…う……から…」

「いいじゃないですか、出しちゃっても。
 大丈夫、あと一回ぐらいなら死んだりしませんよ。
 きっと気が狂いそうなほど痛むだけ。
 たぶんそれだけですから、気にせず出しちゃいましょう?」

笑いながら僧侶はペニスに頬をこすりつけてくる。
それだけでもう射精してしまいそうで、
でも痛みに意識を集中して必死にこらえる。

僧侶はああ言ったけれど、もう一度出したら死んでしまう。
そんな予感があった。

死ぬのは嫌だ。死にたくなんてない。
僕と同じように、脇腹を食い破られて死んでいった
武闘家の女の子の亡骸を思い出す。
あんなふうにはなりたくない。嫌だ。嫌だ。

なのに、腰のなかの震えが止まらない。
精液を吐き出したくて下半身がひくついてしまう。
恐怖と快感で、歯の根ががちがちと打ち合わされる。

「さあ、我慢したって無駄ですから。
 出しちゃいましょうね……たっぷりと。
 人生最後になるかもしれない射精ぐらい、
 思いっきり楽しまないと損ですよ?」

そう言って、僧侶が亀頭に口づける。
そしてストローで飲み物でも吸うようにして、
尿道に残った精液をちゅううぅっ…!と勢いよく吸う。
それでもう……なにもかもの糸が切れてしまった。

下半身が大きく跳ねて、腰が地面から浮いた。
精液が身体のなかをどくどく通っていくのを一瞬感じて、
そして盛大に噴き出す…!

僧侶は亀頭をくわえ込んで、
その噴き出した精液を出るそばからちゅうちゅうっと吸っていく。
どくっと律動するたびに、痛みが馬鹿みたいに膨れあがる。

視界が赤く染まっていく。
目を開けているのに、なにが見えているのか分からない。
脳みそが脇腹からこぼれ落ちたんじゃないかって思える。
もう身体にはペニスしか残ってないような気がする。
痛みと快楽がぐちゃぐちゃに混じって、
もうどっちを感じているのかも分からない……。
 
 
 
 
 
 
やがて……静かになった。
風の音も、草がそよぐ音も聞こえない。
辺りは真っ暗だった。

それから、自分がまぶたを閉じていることにやっと気がついた。
ゆっくりと目を開けると……唇の端から粘液を垂らした僧侶がいた。
僕を見て、彼女は微笑んだ。

「ほら……言ったじゃないですか。
 たぶん死にませんよ、って。
 ちゃんと勇者様は生きてますよ」

僕の手を持ち上げて、ぶらぶらと動かす。
それが見えていて、彼女の声が聞こえているってことは、
たしかに僕は生きているみたいだった。

でも、本当に生きているって言えるんだろうか。
いまはもう、その手を自分の意思で動かすことすらできそうになかった。
立ち上がって歩くことも、まして魔物と戦うなんて考えらなかった。
かろうじて死んでいない、それだけに思えた。

唇についた精液を舐め取って僧侶が笑う。

「それじゃ……もう一回しましょうか」

「…………え?」

心臓が、とん、と一回だけ強く跳ねた。
なにを言われたのか分からない。分かりたくない。

「聞こえませんでした?
 もう一回気持ちいいことができるんですよ。
 だって、勇者様の力はまだ残ってるじゃないですか。
 いつもみたいに最後の一滴まで吸いつくしてあげるんです。
 ね……どうしたんですか?
 そんなに脅えた顔をして」

動けないと思っていた身体が、恐怖に突き動かされる。
上半身をわずかに持ち上げ、寝そべったまま後ずさる。
身体を動かすたびに激痛が走るけれど、それでも必死に動く。

「ほら、勇者様はまだ元気じゃないですか。
 これならきっともう一回吸ったって死んだりしませんよ。
 うん、きっとそうですよ……」

僧侶が、あっというまに僕に追いついてくる。
僕はもう逃げることすらできず、ただ嗚咽を漏らす。
いつのまにか涙がこぼれていた。
頬を生ぬるい液体が垂れ落ちていくのを感じる。

「ん……怖くて泣いちゃったんですか?
 ふふ、おかしな勇者様。
 魔物と戦っていても死んじゃう可能性はあるんですよ?
 それにさっき私が助けに来なかったら死んでたんですよ。
 なのに……いまさら死ぬのが怖いんですか?」

僧侶は僕の頬にそうっと口づけると、
垂れ落ちた涙を舌で舐め取っていく。
彼女の唇から、かすかに精液の香りがする。

「怖がらなくていいですよ。
 もし死んじゃうとしても、
 とっても幸せな心地のまま天国に行けますから。
 ね……そうでしょう?」

「どうして…さ……僧侶……どうして…こんなこと……?」

「理由ですか?
 とくにないんですけど……強いて言うなら、いじわる、ですよ。
 私、最近の勇者様があんまり好きじゃなかったんです。
 快楽にすっかり流されて、自分から喜んで力を吸われて。
 とっても醜い人間だったから。

 以前の勇者様は違いましたよ。
 魔王退治っていう崇高な目標を掲げながら、欲望と必死に戦ってました。
 もちろん、最後はいつも負けてしまっていましたけれど、
 あの葛藤する姿……私は大好きだったんです。
 でも、いまの勇者様はただの屑ですよね。
 ううん……もう屑って優しく呼び捨てにしてあげる価値もないですね。
 ただの下品な生物です。

 私、そういうのは大嫌いなんです。
 だから、思い出してほしかったんですよ。
 快楽に流されないように頑張るひたむきさを。
 でもお猿さんになってしまった勇者様にとっては、
 死ぬことぐらいしか怖がることがないでしょう。
 だから……殺してあげるんです。
 最後に素敵な勇者様に戻って、そうして死んでくださいね」

僧侶が再び立ち上がり、また僕の両脚のあいだに座る。
彼女の大きな胸が、ペニスの上にのせられる。
さっきまで凝視していた胸が、触りたくたまらなかったおっぱいが、
今はペニスに触れてしまってる。
その事実に……性器が膨らみはじめる。

獣のように叫び声を上げたかった。
のたうち回りながら抵抗したかった。
だけど、もうそうする力は残っていなかった。

さっきまでの熱っぽさは消えて、
いまは逆に身体が冷たくなっていた。
ひんやりした感覚のなかで、痛みすらもうすらぎはじめてる。
だけど……それがどうしようもなく怖い。

一方で、ペニスの感覚だけはしっかりあった。
まるで身体のなかで性器だけが生きてるみたいに、
僧侶の胸のやわらかさが存分に感じられる。

「ふふっ……安心してくださいね。
 おちんちんには、ちゃんと回復魔法をかけてあげましたから。
 ここだけは最後まで、たっぷりと快感に浸れます。
 ようするに……我慢なんて無理ですよ」

僧侶が前かけをとり、全身タイツにペニスを近づけていく。
両胸の隙間にスリットが入っているのが、一瞬見えた。
ほどなくして……ペニスが胸のあいだに飲み込まれる。

にゅるんっ…と押し寄せるやわらかさに、ペニスがいきり立つ。
そこだけ感覚が生々しく残っているせいだろうか、
今まで味わったどんなときより気持ち良かった。
その乳肉がむにむにとペニスを包み込む。

「……あ……あぁあぁ……っ…!」

それだけで射精感の引き金が引かれてしまった。
命の最期の一滴が、あまりにあっけなく漏れそうになる。
でも。

「あはっ……まだだめですよ?」

僧侶の指先が、脇腹の傷口に突っ込まれる。
そのまま肉の内側を、がりっと爪で引っ掻かれた。

「あ…ぁ……あぐぁぁうぁぁぁっ……!」

忘れかけていた痛みが蘇り、絶叫した。
身をよじろうとするけれど、
僧侶に押さえつけられているせいでそれさえできない。
ノコギリで脇腹から身体を真横に切断されている気がする。
神経を直接に鋸歯で引き切られるような痛み。

「あ……やっぱり痛そうですね。
 でも感謝してくださいね?
 おかげで勇者様は射精せずに済んだんですから。
 言うなれば、私は命の恩人なんですよ?」

そう言ってから、僧侶は楽しそうに目を細める。

「なんて……すぐに私が殺しちゃうんですけど。
 でも、あんまり早いとつまらないですからね。
 勇者様が苦しむのを眺める時間がないと」

指が傷口から引き抜かれる。
赤い血がぽたぽたと下腹部に滴るのが見える。
少しずつ……痛みが収まってくる。

かわりに、僧侶が両胸を寄せて上下に動かしはじめる。
痛みのあとに訪れた心地よさの中で、脳がどろどろに溶けていく。

カウパーがこぼれ出し、
僧侶の胸のあいだをぬるぬるの肉壷に変えていく。
全身タイツに圧迫された乳肉のあいだを、
亀頭がぐにぐにと変形させながら通っていく。

ずちゅ…ずちゅ…と僧侶の胸が卑猥な音を立てる。
あたたかい胸のあいだでペニスが溶けているんじゃないかと
本当にそう思ってしまいそうになる。
消えていた射精感が少しずつ戻ってくる。

「ん……私のおっぱい、気持ちいいですか?
 さっきだって、じぃっと見てましたものね。
 そこにおちんちん突っ込んで、ちゅぽちゅぽできてるんですよ?
 良かったですね。幸せですね。
 このまま死んじゃってもいいですよね……」

「…ぁ……や…だ…………やだ……やだぁ……」

重たい頭を必死に左右に振って、
涙と鼻水を撒き散らしながら懇願する。
こんなのやだ。死にたくない……!

「ん……素敵な表情ですよ、勇者様。
 そういう顔が見たかったんです、私は。
 うん……これでもう満足です」

僧侶の動きが止まる。
ほんの一瞬、自分が解放されたのだと思った。
思ってしまった。だけど。

「じゃあ、もう終わりにしましょうか」

再び、僧侶が両胸をすり合わせはじめる。
止まっていた快楽が奔流のように押し寄せてくる。

「大丈夫。これで最後の一回にしますから。
 きっと勇者様はまだ死にませんよ……きっと」

信じられるわけなかった。
出したらなにもかも終わりにちがいなかった。
なのに、腰の奥がぶるぶると震えるのを押さえられない。
出したくて出したくてたまらない。

「さあ、人生の最後の射精、しちゃいましょうか。
 最後が女の子のあそこですらなく、
 おっぱいのあいだだなんて、惨めな勇者様らしくていいでしょう?
 ね……ほら」

両腕で胸が寄せられ、やわらかい肉が
これ以上ないくらいペニスに密着する。
腰から先が、ぐちゅぐちゅという音とぬくもりだけになる。
我慢しようとする身体の力さえ、最後に溶けてしまう。

精液が胸のあいだから噴き出す。
胸のあいだぼ隙間からどろどろと白い精液がこぼれる。
タイツのなかで、精液が僧侶のお腹に垂れて行くのが透けて見える。
その光景を見ながら、意識が闇に落ちていく。

意識が消える直前、小さなあたたかさを感じる。
それが回復魔法だったのか、
それともペニスをねぶられただけだったのか。
僕にはもう……分からなかった。

END