Honey Chocolate

「受け取って、もらえ、ますか…?」

たどたどしい言葉とともに、女の子が僕に小さな袋を差し出す。
今日はバレンタインデーで、ここは人目につきにくい廊下で、
差し出されたのはきっとチョコレート。
だけど……受け取るわけにはいかなかった。
だって、僕には彼女がいるんだから。
断らなきゃ、いけない。

この女の子のことを、僕は知っていた。
彼女のテニス部の後輩で、それなりに仲も良さそうだった。
だから、僕と彼女の関係だって知っているはずなのに。
なのに……。

「やっぱり、だめ……ですか?」

睦美(むつみ)ちゃんは少しうつむき、差し出していた袋を胸元に戻す。
その仕草に誘われるように、彼女の胸をつい眺めてしまう。
彼女に比べると背丈は小柄だけれど、
それなのに胸元はブラウスをはっきりと押し上げてた。

(もし……このチョコを受け取ったら……)

この子と付き合うこともできるんだろうか。
この身体を抱くこともできてしまうんだろうか。
この腰を抱き寄せたり、首筋に鼻をこすりつけて匂いを嗅いだり、
彼女の豊満な胸に指をうずめたり……。

自分に好意を持ってくれてると分かっただけで、
身勝手な想像がたちまちはびこってくる。
そんな自分自身にぞっとしてしまう。
こんなの、どうかしてる。
早く断ってしまわないと。早く。早く。

「僕には……」
「睦美ー、なにしてるのー?」

僕と睦美ちゃんの肩が同時に震える。
睦美ちゃんの友達であろう生徒が、こちらを見つけて小走りに寄ってくる。

「あ、あの……返事はいまじゃなくて、いいです、からっ…」

不意にチョコレートが僕の胸元に押しつけられて、
思わずそれを受け取ってしまう。
そのまま睦美ちゃんは、友達のところへ駆け寄って行ってしまう。
僕の手元にはチョコレートだけが残されて。

「見ーちゃった♪」

全身がぞくっ…と震える。
背後から聞こえたのは、とてもとてもよく知っている女の子の声だった。
僕の彼女の……詩乃(しの)だった。

詩乃はくすくすと、とても楽しそうに笑ってる。
いまさっきのことを見ていたはずのに、怒った様子もない。
墨を流し込んだように綺麗な長い黒髪が、くすくす笑いのたびに揺れる。
とても楽しげで、でも深い井戸のように底の見えない、いつもの笑い方だった。

「わ、チョコレートもらえたんだ。
 よかったね、モテモテだー♪」

「いや、これはちがっ…て……その…っ……。
 べつに、あの子が好きとか、付き合うつもりとかじゃ、なく…て…!」

責められているわけでもないのに、ひとりでに弁明をはじめてしまう。
詩乃に見つめられると、いつもこうだった。
なにもかも見透かされそうで、つい自分からぜんぶ喋ってしまう。

「ふーん、なるほどなるほどー。付き合うつもりないんだ?
 私、捨てられちゃうのかなーって、びくびくしちゃった」

わざとらしい調子でうそぶいて、それから詩乃がにんまり…と笑う。

「じゃあ、なんですぐに断らなかったのかな?
 あの子……睦美はすごくいい子なんだよ?
 部活でも努力家さんだし、それでいて周りの面倒もよく見てあげてて。
 付き合うつもりもないのに、気のある素振りなんてしたら、かわいそうだよ。
 なのに……どうして受け取っちゃったの?」

「……それ……は………」

詩乃の前でもさすがに正直には言えなくて、言葉に詰まってしまう。
そんな僕を見て、彼女はくふふっ、と嬉しそうに笑って歩み寄ってくる。
僕の首筋に手のひらを添えながら、詩乃が囁く。

「言えないなら、私が言ってあげようか。
 欲情、しちゃったんだよね。
 あの子にえっちなことができるかもって思って、興奮したんだよね…♪」

「ち…がっ……」

「違わないよね? 性欲に流されそうになったんだよね。
 そうでしょう、変態くん…♪
 でも大丈夫。私は少しも怒ってないよ。
 男の子だったら、しょうがないことだもの。
 それに、本当に好きなのは私だけだって、よく知ってるから」

その口調からは、たしかに怒りは感じられなかった。
だけど……もっと暗くあたたかいものを感じる。
ちらり、と詩乃の瞳を見てしまう。
とても優しい顔つきをしてた。
とても恐ろしいことを、いとも簡単に口にするときの顔だった。

「だけど……証明はしてくれないと、だめだよ?
 あの子への気持ちは、たんなる性欲なんだって証明してくれないと。
 そうじゃないと私、安心できないから」

詩乃がにんまりと唇と目をほそめる。

「それじゃ、行こっか」
 
 
 
     * * *
 
 
 
「はい、どうぞー♪」

僕の背中に覆いかぶさった詩乃が、明るい声音で囁く。
まるで手料理を僕の口に運んでくれるかのような、楽しげな声。
だけど、目の前の状況はまるで違ってる。

彼女に連れ込まれたのは、テニス部の女子更衣室だった。
詩乃はわざと部活に遅刻して、更衣室の鍵を先生から受け取ってきたらしい。
目の前の長椅子には、ロッカーから見つけてきた睦美ちゃんの制服が並べてある。
そして僕はペニスを露出して、いまにも制服に擦りつけようとしてる…っ…。

「どうして……こんな……こと…っ…」

何度口にしたかしれない言葉を、もういちど呟く。
詩乃のくすくす笑いが耳元から聞こえてくる。

「だから何度も説明してあげてるのに。
 これからあなたは、睦美の制服でオナニーするんだよ。
 ん……なんで、そんなひどいことさせるのかって?
 ひどいことだから、してほしいんだよ?
 本人の知らないところで、そのお洋服にびゅーびゅー射精するって、
 すごく醜い最低の行為だよね。
 本当にその子のことが好きだったら、
 とてもじゃないけどそんなことできないよね。
 だから……いまからするんだよ?
 あの子に抱いた気持ちは、たんなる性欲なんだって証明するために…♪」

詩乃の指がペニスに絡みついてくる。
白くてほっそりとした指が、竿や亀頭の上をするすると滑ってく。
甘く痺れるような快感が走って、ペニスが一気に膨らんでく。

「それに……本当は嫌がってないんでしょ?
 だって、あなたは変態さんだから。
 女の子がいつも着てるお洋服、いつも自分が目にしてる女の子の格好、
 そこにおちんちんを擦りつけて、精液でどろどろに汚して、
 それで女の子を征服した気分になって気持ちよくなっちゃう人だもの。
 ほら……いまなら、それができちゃうんだよ。
 さっきまで会ってた可愛い後輩の制服だよ」

長椅子の上の制服は、ショーケースにでも並べるみたいに
丁寧にブレザーの内側にブラウスがしまわれて、その下にスカートが置いてある。
詩乃の言葉に誘導されるようにして、睦美ちゃんのイメージを重ねてしまう。
椅子の端から垂れ下がった袖口さえ、
なんだか無防備な姿をこちらにさらけ出してるように見えてしまう。

「あ……ほら、やっぱり♪
 おちんちん、もうガチガチになってるね。
 さあ、早くごしごしー♪ってお猿さんみたいに擦りつけちゃおうよ。
 心配しなくても、まだ練習はじまったところだから誰も来ないから。
 だから、たっぷり気持ちよくなれるよー」

抵抗しようとする気持ちが、少しずつほどかれてく。
彼女の左手が、僕の腰をそっと押す。
ベンチにまたがった格好の僕の下半身が、ゆっくりと前へ突き出される。
ペニスの裏筋が、スカートの裾のあたりに擦れる。

「……ぁ……っ……」

「んふふー、可愛らしい声だ。
 おちんちん、急にざらざらのスカートに擦れたから
 びっくりしちゃったんだ?
 でも……それが気持ちいいんだよね」

もっとしてごらん、と詩乃が耳元で囁く。
吐息が僕の首筋をつたって、鎖骨の辺りをくすぐる。
頭がふわふわして、半ば無意識のうちまた腰を突き出してしまう。
プリーツスカートのひだが、裏筋をぞぞっ…と撫でる。

「ひ…ぁ……っ…!」

思わず大きな声を上げそうになって、慌てて口をつぐむ。
誰もいないと分かってるのに、辺りを見渡してしまう。

「心配しなくても大丈夫だよ。本当に誰も来ないから。
 私があなたを陥れるようなこと、するはずないでしょ?
 安心していいんだよ。
 大丈夫。心配する必要なんてなーんにもないの。
 ただ気持ちよくなることだけを、いまは考えようね…♪」

蜜のように甘く優しい言葉が、僕の思考を溶かしてく。
詩乃がまた僕の腰をそっと後ろから押す。
ペニスがスカートの粗い布地にざらり…と擦れる。
小刻みに震えるような快感が、背筋を這い上がる。
そのまま何度も、何度もペニスをスカートにこすりつけてしまう。

「あはっ……うんうん、そうだよ。とっても上手。
 スカートの表も、裏も、ひだのあいだも、ぜんぶぜーんぶ汚しちゃおうね。
 ほら……擦れば擦るほど気持ちよくなれるよ」

詩乃はもうペニスからはすっかり指を離して、僕の腰を後押しだけしてくれる。
その優しい手つきが、まるで頭を撫でられてるみたいに安心できる。
いけないことをしてるって分かってるはずなのに、
このまま快楽に身をゆだねてしまいたくなる……。

「とっても一生懸命になってきたね…♪
 年下の女の子のスカートにおちんちん押しつけて腰を振って。
 まるで電車の中で痴漢さんがするみたいな悪いことしてるんだよ?」

罪悪感と背徳感が混じり合って、ぞくぞくと背筋が震える。

「でも良かったね。痴漢さんはこっそりやらないと捕まっちゃうけど、
 いまはなんにも気にせず女の子のスカートに擦りつけていいんだよ。
 それからもちろん……擦りつけるだけじゃなくて
 どろどろに汚しちゃっていいんだからね」

その言葉に、ペニスがひくっと反応する。
ついで、尿道の中をとろり…となにかが流れてくるのが分かる。
まずいと思ったけれど、詩乃に押さえられていて腰を引くこともできなかった。
カウパーが鈴口から溢れだし、スカートの上に染みを作る。

「あーあ、汚しちゃったね…♪
 後輩の女の子の制服に、おちんちんからお漏らししたものをこぼしちゃった。
 あの子、これがなにか気づいたら怖がるよー」

「…………っ……」

「そんなに慌てなくても平気だよ。
 ちょっとぐらい、あとで上手に拭えば分からなくなっちゃうから
 たぶん、だけど…♪
 そんなことより、気持ちいいことに集中しなくていいのかな?
 こんなチャンス、もう二度とないかもしれないんだよ」

詩乃が僕の背中に覆いかぶさり、体重をかけてくる。
身体が前のめりになり、ペニスがスカートの上に押しつけられる。
裾のあたりに、透明な液体がべっとりと絡みつく。
あっというまに布地が濃く変色していく。
また汚しちゃったね、と詩乃が嬉しそうに呟く。

「女の子たちがいつも下着姿になって着替えてる場所で、
 女の子の制服に自分の体液こびりつかせるの、たまらないでしょう?
 こうやって……ぬるぬるに濡らせば濡らすほど、
 もっともーっと気持ちよくなるよー」

僕の腰に手をやって、詩乃が前後に小刻みに動かす。
その動きに合わせるように、腰を振ってしまう。
カウパーにまみれはじめた布地の上を、
鈴口や裏筋がじゅるじゅるっ…と這いずり回る。
ざらついた乾いた刺激が、少しずつ柔らかく濡れた刺激に変わってく。

「………ぁ……っ……!」

腰の奥が、どくん!と跳ねる。
射精感がいきなり膨れ上がる。
ペニスの根元とお尻のあいだが、ひくひくと蠢き出す。
このままだと……出ちゃう……出ちゃう…っ……。

「ん、もう出ちゃいそうなんだ?
 くすっ……そうだったよね。
 変態さんなだけじゃなくて、早漏さんでもあったもんね。
 それに、こんな天国みたいなオナニーさせてもらってたら、
 我慢できなくてもしょうがないよね」

耳元に息を吹きかけながら、
詩乃は指で僕の陰毛を指でかき混ぜる。
そんな弱い刺激でさえ、もう射精の引き金になりそうだった。
だけど……射精だけはしちゃいけない…っ…。
どれだけ頭が快楽に蕩けても、それだけは分かってた。
精液をこびりつけたりしたら、痕跡を隠すなんて無理に決まってた。
なのに、詩乃はまるで止める気配を見せない。

「………や…め……っ………」

「ふふっ……なに言ってるのかな?
 出しちゃだめどころか、出さなきゃいけないんだよ。
 睦美の制服をどろどろに汚して、
 あの子の気持ちを踏みにじっちゃえばいいんだよ。
 だって、あの子に抱いた気持ちはたんなる肉欲でしかないんだから」

詩乃が僕の両肩に手を乗せ、さらに体重をかける。
スカートと糸を引くほどに大量に溢れ出していたカウパーが、
ペニスと一緒にスカートに押しつけられる。
竿が粘液にまみれて、睦美ちゃんのスカートの上で滑る。
……ぁ……ひ…ぁ…っ……もう……ほんと…に…っ……。

「あ、そうか…♪」

なにかに気づいたように、詩乃が僕の腰を身を引く。
射精寸前で、ペニスから刺激が引き離される。
もどかしさと焦燥感と、でも大きな安堵が押し寄せる。

「ごめんね、気づいてあげられなくって。
 もっと気持ちよいのをたっぷり味わってから、
 それから最高の射精がしたかったんだよね」

「…………え?」

「私ったら早く証明してほしくって、焦っちゃったみたい。
 ごめんね、察しの悪い恋人で」

表情が見えないから、どこまで本気で言っているのか分からない。
いや、顔が見えてたとしてもきっと分からない。
ぞくり…と、恐怖とも期待ともつかないものが背筋を走り抜ける。

「じゃあ……こっちも汚しちゃおうね」

詩乃が僕の背を押す。
背もたれのない長椅子をまたいだ格好のまま、二、三歩前に進む。
ペニスの先端が……ブラウスに小さく擦れる。

「…………ぅ……ぁ……」

「あはっ……ちょっと触っただけで喘いじゃったんだ?
 でもスカートに比べたら刺激がソフトだから、
 もうちょっとは我慢できるんじゃないかな。
 ほら、もっとおちんちんで、ごしごしってしてみようねー」

半ば詩乃の言葉に操られるようにして、ペニスを突き出す。
ブラウスの布地を鈴口が撫でるたびに、
さらさらとした優しい心地良さが流れ込んでくる。
かと思えば、だらだらとこぼれたカウパーをたちまち布地が吸い込んで、
ぬるぬると絡みつくような淫らな快感に変わってく。

「遠慮しないで、もっと上の方も汚しちゃっていいんだよ。
 そうそう……胸元のあたりとか♪
 おっぱいがいつも、むぎゅっ…って押しつけられてるところ。
 睦美って、すごくおっぱい大きいもんね。
 あの胸におちんちん押しつけてるとこ、想像していいんだよ?」

チョコレートを渡されたときの睦美ちゃんの姿を思い浮かべてしまう。
ブラウスを下から押し上げていたあの膨らみを思い出して、
ペニスがびくっと跳ねて、胸元にカウパーを飛び散らせる。

「おっぱいのところ、もっと汚しちゃおうよ…♪
 どこもかしこもべとべとになるぐらい、念入りに擦りつけるの。
 やらしいことも、もっと考えていいんだよ。
 たとえば、おっぱいの谷間におちんちん挟み込んで、
 ずりずりーって動かしてみたりだとか。
 男の子って、そういうの大好きだもんね」

「……ぁ………は…ぁ…っ……」

気づけばもう、ひとりでに腰をかくかくと動かしてた。
胸のあたりに、執拗に尿道口を擦りつける。
ブラウスの布地がよじれて皺ができてしまうけれど、
もう快感を貪るのを止められなくなってた。

「うん……それでいいんだよ。
 欲望に素直になって、気持ちよくなっちゃえばいいの。
 私は少しも軽蔑したりなんてしないから。
 安心してびゅーびゅー出しちゃっていいんだよ」

詩乃が僕の頭をそっと撫でてくれる。
口元がゆるんでしまうのが、自分で分かる。
忘れていた射精感が、一気に膨れ上がってくる。

「……ぁ……し…の………詩乃…っ……」

この気持ちよさを捨てたくなくて、
でも射精したらなにもかもおしまいだって分かってて。
どうしようもなくて、懇願するように彼女の名前を呼んでしまう。

「ん……ほんとに出ちゃうんだ?」

僕の頭を撫でていた詩乃の手が、そっとペニスに絡みつく。
両の手のひらで、ペニスの先端がぎゅうっと優しく包まれる。

「出しちゃっていいよ…♪」

「……ぁ……あぁ……ああぁああぁぁっ……!!」

大量の精液が迸る。
詩乃の手のなかに、どぷどぷと白く濁った液体がこぼれてく。
一滴もこぼさずにそれを受け止めたまま、詩乃が囁く。

「もっともっと出していいんだよ。
 あの子に欲情しちゃった気持ちを、ぜんぶ吐き出しちゃっていいんだよ」

さっきの睦美ちゃんの姿を思い出す。
あのときの本能的な欲望が湧き上がる。
あのまま廊下に押し倒して、太ももに腰をこすりつけて、
乱暴に胸をまさぐって、服を破り捨てて、おっぱいにペニスを挟み込んで、
そのままびゅくびゅくと射精する。
そんな淫らな妄想が、頭のなかを駆け巡ってく。

「……ぁ……あぁ…っ……あぁあぁぁ…っ…!」

どぷり、どぷり…とポンプでゆっくり押し出されるみたいに、
あとからあとから精液が吐き出される。

「そう……いっぱい出していいんだよ。
 だってあなたは、私以外にはやらしいことしか頭にない
 最低な男の子なんだから…♪」
 
 
 
     * * *
 
 
 
「うん、ちゃんと証明してくれたね。
 偉い偉い。私、とっても嬉しかったよー」

にこにこと、心から幸せそうに詩乃が笑ってる。
その笑顔を見ると、もうなにも言えなくなってしまう。
だいいち……最低のことをしてるのは、僕だ。

いくら詩乃に誘われてお願いされたことだからって、
その理屈がどんなに狂ったものだったとしても、
結局は気持ちよくしてくれるってことに甘えただけだ……。

……本当に僕らは、恋人同士だって言えるんだろうか。
付き合ってるだなんて、言えるんだろうか。

「ん……どうしたの? 心配事?」

睦美ちゃんの制服をロッカーに戻してきた詩乃が、
僕の顔を覗き込んでくる。

「あ、もしかして制服汚しちゃったのが心配?
 大丈夫だから安心してね。
 精液自体はかからなかったし、付いた汚れも上手に落としてきたから。
 最初から心配しなくても、あとであなたが困るようなこと、
 私が本当にするわけな」

詩乃の言葉が、そこで止まる。
僕も同時に気づいてた。
誰かがやってくる気配がする……。

「……詩…っ………」

声を上げかけた僕を、詩乃が目で制す。
それから、あの……とんでもないことを平然と考えている笑顔になって、
僕の手を引いた。

部室の片隅のロッカーのドアを詩乃が開ける。
詩乃の名前のネームプレートがはまっているのが、ちらりと見えた。
でもよく確認する間もなく、ロッカーの奥に押し込められる。
さらにそのまま……詩乃まで中に滑り込んでくる…っ…。

内側からロッカーのドアを詩乃が閉める。
とたんに視界が暗闇に覆われる。
それから更衣室に誰かが入ってくる。

「せんぱーい、顧問がまだ来ないのかって怒ってますよー」
「あれ……誰もいないみたい」

詩乃を探しに来た二人組みたいだった。
鍵が開いてるのにとか、すれ違いになったのかなとか、
そんなことを話し合っている声が聞こえる。
そして……途中で僕は気づいてしまう。
その声は、睦美ちゃんとその友達だった。

「しょうがないから戻ろっか……って、睦美どしたの?
 なんだか今日、元気ないよ。まあ……なんとなく察しはつくけど。
 チョコレート、渡せただけでもよしとしないと。
 もともとあの人は詩乃先輩の彼氏なんだし、望み薄なんだから」

『私たちのこと、話してるね』

暗がりのなかで、不意に詩乃が囁いてくる。
耳の中にまで吐息が吹きかかるくらいに近い距離で、
いまさら自分が置かれてる状況を理解する。
狭いロッカーの中で、これ以上ないくらいに詩乃に密着してしまってる。

『暴れちゃだめだよ。見つかっちゃうから』

僕にはそう言っておきながら、詩乃は自分ではわずかに身をよじる。
彼女の胸が、僕の胸板にぎゅっと押しつけられる。
睦美ちゃんほどではないけれど、でもしっかりと量感のある乳房の感触が
服越しにでもはっきり伝わってくる。

(……ぁ……こんな…の………ま…た……)

ズボンの下でペニスに血が流れ込んでく。
しかも大きくなるほどに、詩乃の太もものあたりにペニスが押しつけられる。
その柔らかい弾力を感じるたびに、ますます勃起してく。

『あはっ…♪ また大きくしてるんだ?』

詩乃の声音に、やらしくて妖しい響きが混じりはじめる。
音を立てないようにゆっくりとジッパーが引き下ろされ、
ペニスが取り出されて、指が絡みつく。

『私の身体にぴったりくっついて、それで興奮しちゃったんだ。
 ふふっ……とっても嬉しいな。
 だったら、また気持ちよくしてあげるのが私の責任だよね』

詩乃の指が、ペニスの鈴口を優しく撫でる。
それだけでペニスが根元から何度も痙攣してしまう。
身体がまた快楽を求めてしまう。

(こんな…の……おかし…い……のにっ……)

誰かに見つかる危険があるからじゃない。
そうじゃなくて……こんなふうに、いともたやすく快楽を与えられて
あっというまに淫らな行為に耽ってしまう僕らの関係が。
それ自体が、あまりに異常で、とても恋人同士だなんて言えそうになくて。

「でも……詩乃先輩たちって、ほんとに付き合ってるのかな」

睦美ちゃんの声だった。
心臓が大きく跳ねる。
どういう意味?と、睦美ちゃんの友達が問いかける。

「だって……私ね、こっそり見てたんだけど。
 先輩たち……二人一緒にいても、なんだかそういうふうに見えないの。
 もちろん手を繋いだり、一緒に帰ったり、それに……キスしてるのも見ちゃった。
 だけど、それでもどうしても……付き合ってるとは思えなくて。
 だから、もしかしたら私にもチャンスがあるのかな…って」

『くすっ……私たち、随分ひどい言われようだね。
 おかしいね、こんなに仲いいのに…♪』

カウパーにまみれた指で裏筋を丹念に撫でまわしながら、
僕の彼女がくすくすと笑う。

竿の裏側がべとべとになるくらいにカウパーを塗りつけてから、
詩乃がさらに身体を密着させてくる。
にゅるっ…と、詩乃の太ももの内側にペニスが擦れる。
女の子のすべすべした肌の感触がじかに伝わってくる。

『ぬるぬるの太もも、気持ちいい?
 おちんちんが満足するまで、いっぱい擦りつけていいんだよ。
 こんなことしてあげるのも、あなたにだけなんだよ。
 睦美はそんなことも分からないのかな…♪』

快感で膝の力が抜けて立っていられない。
でも狭いロッカーの中では倒れることすらできなくて。
背中がロッカーの壁を少しずつずり落ちてく。
覆いかぶさるように、詩乃が僕に体重を預けてくる。
太ももの上をにゅるにゅるっ…とペニスが這い回る。

『んっ……おちんちん暴れてるね。
 でも、あんまり暴れすぎるとばれちゃうよ?
 だから…♪』

にゅるんっ…と一際大きく滑ったペニスを、
詩乃が自分の太もものあいだにぴったりと挟み込む。
肌の上を滑るばかりだったもどかしい快感が、
密着した柔肉の感触にとって変わられる。

太ももの内側がたちまちカウパーにまみれてく。
ペニスが左右から、ぬるぬるに濡れた太ももでくちゅくちゅっ…と擦られる。
にちゃにちゃ…と、粘液が糸を引く音が外に聞こえそうで、
でもそんなことに構っていられないくらいに気持ちい…ぃ…っ…。

「んー、睦美と違って、私には先輩たちの関係はよく分かんないけど……。
 まあでもチョコが渡せたってことは、一応可能性はあるんじゃないかな?」

外の女の子の声を聞いて、また詩乃が吐息で微笑む。

『ふふっ……そういえばチョコレートがあったね』

ペニスを太ももで揉みくちゃにする粘ついた音のなかに、
かさかさ…と包み紙を静かにほどくような音が混じる。
それから僕の唇になにかが押し当てられる。
反射的に開いてしまった口のなかに、チョコの塊が放り込まれる。

舌に触れる感触で、チョコがハート形をしてるのが分かる。
だけど、その舌の上でチョコはあっというまに溶けて
ハートの形もどろどろに崩れてく。
詩乃も一口食べたみたいで、小声で呟く。

『これ、蜂蜜入りだね。ちゃんと手作りみたいだし。
 きっと頑張って作ったんだね…♪』

詩乃の囁きに合わせたみたいに、ロッカーの外で睦美ちゃんが呟く。

「先輩、チョコ食べてくれたかな……」

胸の奥に疼くような痛みが走る。
こんなふうにチョコを食べたって、喜ばれないに決まってた。
あの子の気持ちを台無しにしてるんだっていう罪悪感が胸を満たす。
なのに……。

『わ……おちんちん、すごいびくびくって跳ねてるよ。
 私の足のあいだで、気持ちいいよーって叫んでるみたい。
 ね……どうしたの?
 自分のことを想ってくれる女の子の気持ちを踏みにじりながら、
 おちんちんを太ももでごしごしされるのが好きなんだ?
 快感に溺れる後ろめたさが、たまらないんだ…♪』

また僕の口にチョコが押し込まれる。
チョコと蜂蜜が溶けだして、舌いっぱいに甘い味が広がってく。
狭いロッカーのなかに、詩乃の匂いと、精液の臭いと、
それからチョコレートの甘ったるい香りが充満してく。

脳みそがふやけたみたいに、なにも考えられなくなってく。
詩乃が両脚を擦り合わせる。
ぬるぬるになった太もものあいだで、ペニスがやわらかく押し潰される。
精液が優しく搾り出されるような感覚に声が出そうになって、
でもそれより早くまたチョコが放り込まれる。

『美味しいチョコレートを味わいながら、
 おちんちんはいっぱい気持ちよくしてもらえて嬉しい?
 ふふっ……顔は見えないけど、ちゃんと分かるよ。
 喜んでくれて、私も嬉しいな。
 あなたが喜んでくれることが、私の幸せなんだから。
 だから……もっともっと気持ちよくなってね』
 
詩乃が僕の腰に両手をまわす。抱きしめられる。
腰が砕けた格好のまま、詩乃にぎゅうっと密着する。
詩乃のブラウス越しの乳房が、僕の顔に優しく当たる。
腰の奥が、きゅうっ…と一際つよく収縮する。
精液がペニスの根元に流れ込んでくる…っ……。

『このまま、びゅーって出しちゃっていいよ…♪
 今度は私の制服だから、気にせず汚しちゃっていいの。
 頭からっぽにして、精液がどぷどぷっ…て吐き出される感触に、
 ずーっと浸っていいんだよ』

詩乃が太ももをさらに密着させる。
カウパーにまみれたペニスが太もものあいだを滑り上がり、
彼女のショーツ越しの秘所にカリ首が擦れる。
ショーツのつるつるとした感触が気持ちよすぎる。
口元から、チョコレートの臭いのよだれがこぼれてしまう。
ペニスが根元から波打つように何度も蠢く。
射精感が引き返せないところまで膨れ上がってく。

『さあ……射精していいよ。
 私があなたのことを幸せにしてあげられたっていう証拠、
 私に見せてほしいな…♪』

『……ぁ……あ……詩…乃…っ……』

かすれた声で恋人の名前を呼びながら、腰を動かす。
詩乃の太ももとショーツのあいだをペニスが乱暴に前後する。
勢いよく突き出すたびに、太ももの向こう側のスカートの生地が
ペニスの鈴口を擦ってく。

ぬるぬるの太ももの気持ちよさと、ショーツのつるつるした感触と、
スカートの裏地のざらりとした強い刺激。
頭の芯がじんじんと快感で痺れる。

『あなたのこと、大好きだよ』

精液が噴き出す…!
太もものあいだにぴっちり挟まれたまま、
スカートの裏地にびゅくびゅくと精液が当たってく。
詩乃の両脚が、射精の手伝いをするみたいにリズミカルに動く。
精液が搾り出されてく…っ…。

『……ぁ…あ……ぁ……す…ご……っ……』

詩乃にしっかりと抱きとめられたまま、
ペニスの先からどぷどぷと精を漏らしつづける。
頭の中が真っ白に霞んでく。
なんて気持ちいいんだろう。
なんて素敵なことをさせてくれる女の子なんだろう。

『ん……焦らなくていいんだよ。
 最後の一滴が出ちゃうまで、いつまでだってこうしててあげるから』

詩乃が後ろ手にスカートの布地を操って、
尿道口の汚れをかき出すみたいにペニスの先端を拭う。
それだけでまた、精液がどぷり…と吐き出される。
詩乃は優しくいたわるように、何度も何度もペニスを拭ってくれる。
そのたびに、精液をとぷとぷと漏らしてく……。
 
 
 
 
 
 
詩乃に抱かれたまま射精の余韻に身を委ねていると、
僕たちの入ったロッカー前を、足音が通りすぎてく。
どうやら二人が部活に戻っていくようだった。

「でもさ、私は睦美のこと応援してるから。
 睦美はこう、ひたむきで一生懸命で、なんていうのかな、
 あの先輩への気持ちも、いかにも純愛って感じだし。
 応援してあげたくなっちゃうから」

ありがとう、と睦美ちゃんが答えてる声が少し遠くに聞こえて
やがて足音とともに消えていく。
詩乃がロッカーの扉を押すと、キィッ…と軋んだ音を立てながら扉が開く。
蛍光灯の白い光が、僕らのいるロッカーの中に差し込む。

「くすっ……純愛なんて馬鹿みたい」

詩乃がおかしくってしょうがない、という風に笑う。
いままでの僕なら、困惑するはずだった。
でもなぜか、いまは詩乃の気持ちが分かるような気がした。

「そんな分かりやすく綺麗なもの、どこにもないのにね。
 どこにもないから、素敵なのに。
 どうしてそのことが分からないのかな……ふふっ」

それから詩乃は不意に僕に顔を寄せる。
彼女の唇が近づいてきて……口づけされると思った瞬間、
僕の唇の端がぺろりと舐めとられる。

「チョコレート、ついてただけだよ?
 なに期待しちゃったのかな、私の恋人さん…♪」

END