嘘つき娘のはかりごと

「ふふっ……久しぶりだね、お父さん」

会社に行こうと玄関の扉を開けたところに、
一人の女の子が立っていた。

昔と変わらない綺麗な黒髪が、
頬の辺りで少し内側にカールしてる。
僕の記憶よりも少し大人びていた。
あどけなさがほんの一筋だけ残り、
かわりに、しずかな色気が漂いはじめてる。

お父さん、と彼女は僕を呼んだけれど
本当のところは血の繋がりなんてない。
数年前、僕が結婚した女性の連れ子だった。
それからわずかな間、一緒に暮らした女の子。

「春なのに、この辺りはまだ寒いね。
 冷えてきちゃった……なかに入ってもいい?」

あいまいに僕がうなずくと、
嬉しそうに目をほそめて、少女が部屋に入ってくる。
後ろ手に、器用にドアの鍵までかけてしまう。
カチ、というロック音がやけに大きく響いた。

「詩帆……どうやって、ここが?」

「……『どうして』じゃなくて、『どうやって』が先なんだ。
 自分の保身ばかり考える癖、変わってないね。
 でも、それでこそお父さんだけど。
 私を汚して、それから逃げ出したあのときと一緒」

言い返す言葉が、なにも出なかった。
詩帆の言うとおりだった。
結婚生活をはじめてほどなく、僕は……彼女を汚した。

そんなつもりはまるでなかった。
だけど、詩帆には言葉では説明できないなにかがあった。
そばにいるだけで、その身体に触りたくなってしまう。
肌を撫で、髪に指を絡ませ、首筋に鼻をこすりつけたくなる。
そしてその先まで、果てしなく行為に及んでしまいたくなる。

下着を漁り、着替えをのぞき、眠っている身体を触り、
行為はどんどん醜くあさましくなっていった。
やがてその身体に性器をこすりつけて射精して。
そのまま犯しかけたところで……突然に怖くなった。

自分のしていることの罪深さに気づいて、耐えられなくなった。
気づいたら、妻も娘も捨てて、逃げ出していた。
遠く離れたこの土地で、過去をまるでなかったことにして
一人で暮らしはじめた。

「どうやって、って聞いたよね。
 本当はね、どこにいるかはずっと知ってたの。
 だってお父さん、偽名も使わずに再就職するから。
 ちょっとしたところに依頼したら、すぐに分かっちゃうよ」

たしかに不思議だった。
失踪届けが出ていれば、すぐにでも警察が来るかと思った。
でも、誰からもなんの連絡もなかった。

「私がお母さんに言ったの。放っておこうって。
 だってそうでしょ?
 お父さんみたいなどうしようもない人を追いかけて、
 それで私たちになにか得があるのかな?」

詩帆は部屋に上がりこみ、ソファに腰かける。
小雨で濡れでもしたのか、黒い靴下を脱いでいく。
ふくらはぎから足首、つま先…と、
白くてきれいな脚が露わになっていく。

「これ、干してもらってもいい?」

「あ……うん」

ちょうど室内にかけてあった靴下干しに吊るしていく。
べつに濡れてもいないことに、かすかに違和感を覚えて。

「油断しすぎだよ、お父さん」

背後から声がかかったと思った途端、
足首になにかロープのようなものが巻きつけられるのを感じた。
でもそれを確認するより早く、背後から手をつよく引っ張られる。

「………!」

足が縛られてるせいで、そのまま背中から床に倒れこむ。
鈍い衝撃と一緒に、肺から息が漏れる。一瞬、気が遠くなる。
朦朧とする意識の中で、今度は手首がきつく縛られるのを感じる。

「うん、とりあえずは……これでいいかな」

痛みに呻いていたのは、せいぜい十数秒だったと思う。
でも、そのあいだに手首と足首は完全に拘束されてた。
登山用のロープみたいな太い縄で、引きちぎるのは不可能に見えた。
しかも結んだ上から金具でロックされていて、ほどくのも無理だった。

「詩帆……なんで、こんなこと……」

「さっきも言ったよね、お父さんを追いかけてもなんの得もないって。
 じゃあ、どうして私はここに来たのかな?
 答えは簡単。ただただ、あなたを苦しめるために来たの」

くすくすと笑いながら、詩帆が僕のベルトの止め具を外す。
スラックスと下着が、足首のところまでずり下げられる。
そこではじめて、自分がうっすらと勃起しているのに気づく。

「ね……どうしてかな?
 どうしてお父さんはこんな状況で性器を膨らませてるのかな。
 なにかを……期待してるの?」

また、くすっと笑われる。
その鼻息が股間にかかって、ペニスがぴくりと跳ねてしまう。
それを見て、詩帆がにやぁっと頬をゆるめる。

「あは……こんなのでも感じちゃうんだ?
 じゃあ、もっとしてあげようか。
 ほら、ふぅー……ふぅー…っ……」

すぼめた小さな唇から、吐息が吹き出される。
亀頭や尿道口に吐息があたって、くすぐったい。
陰毛がさわさわと揺れる感触が、なぜか無性に心地いい。

「ふふ、どんどん大きくなってくるね。
 ふーふーってされただけで、おちんちん気持ちよくなれて
 とってもお手軽な身体だね…♪」

馬鹿にされてると分かってるのに、
ペニスがどんどん固く大きくなっていく。
頭を持ち上げると、勃起して上を向いているペニスが見えた。
それに……。

「ん……また、びくって跳ねた。
 今度はなにに反応してるのかな?」

僕の両脚をまたぐようにして、詩帆はかがみ込んでる。
そのせいで丈の短いワンピースが膝上までめくれ上がって、
太もものあいだから白い下着がちらちらと見えていた。

「いったいなにかな? なにに反応してるのかな?」

口ぶりだけは疑問形だけど、その顔は全部知ってる表情だった。
わざとらしく太ももをこすりあわせてショーツを隠したり、
逆に股を一瞬だけ大きく開いてみせる。

「あはっ……すごい…♪
 私がパンツ見せてあげるたびに、おちんちんも
 それにあわせてひくついてるよ。
 お父さん、とっても器用だね。
 でも、この程度でそんなに興奮してていいのかな?」

詩帆がさらに腰をかがめて、
そのまま僕の両脚の上に体重を預ける。
僕の腿の上に、詩帆のお尻が押しつけられる。

「ほら、次は……触っちゃうよ?」

ほそい指が伸びてくる。
すっかり膨れ上がったペニスの裏筋を、
すべすべの指の腹がそうっと撫でる。

「………ぁ……っ……」

ぞくっとした快感が背筋に走って、
思わず全身が突っ張る。
脚の上で、詩帆の尻肉がやわらかく変形するのを感じる。

射精感が膨れ上がるけど、必死でそれをこらえる。
なにがなんだか分からないけど、出したらいけないと思った。

「あれ、なんで我慢しちゃうのかな?
 お父さん、気持ちいいんでしょ?
 だったら気にせずに射精しちゃえばいいのに。
 そうしたらほら、私の身体を精液でべとべとにできるよ。
 あのときみたいに……ね?」

詩帆の身体を汚した日のことが、まるで昨日のように思い出される。
薄暗い部屋のなかで、布団をめくりあげて、パジャマのボタンを外して。
カーテンの隙間からこぼれた光で、胸の膨らみをじっと観察して。
そのまま、そこにペニスをこすりつけて……。

「ふふ……頬がゆるんでるよ?
 でも仕方ないよね……すごく気持ちいい体験だったんだから。
 お父さんのことだから、きっとしょっちゅう思い出してたんでしょ。
 そうやって思い出に浸りながらおちんちんを扱いて、
 妄想のなかではもっとひどいことまでして。
 それでいっつも精液をびゅーびゅー吐き出してたんだよね?」

本当のことだった。
あのときのことを思い出すたびに後悔して、唇を噛みしめて、
でもいつのまにかだらしなく口を開いてよだれを垂らして
詩帆の身体を思い出して自慰行為に耽ってた。

「私のあそこも、おっぱいも……もう一度だけでいいから見たいって、
 ずーっとそう思ってたんじゃないのかな?
 ね……お父さん?」

僕の脚に座ったまま、詩帆がもぞもぞと身体を動かす。
わずかずつ、僕の股間に向けて近づいてくる。
腰骨に、彼女のやわらかい太ももが押しつけられる。
ペニスがまたびくっと跳ねる。

「その願いを……今日は叶えに来てあげたんだよ?
 私って、とっても良い娘だよね……ふふっ」

「嘘だ……だって、苦しめに……来たって……。
 そう…言ったじゃ……ないか……」

快感に耐えて歯を食いしばったまま、
息をもらすようにして言い返す。
理性がぎりぎりのところで叫んでる。
こんな状況はおかしいって。
なにかがおかしい。罠だって。

「くすっ……もちろんそうだよ?
 でもね、だからこそ気持ちよくしてあげるの。
 といっても、お父さんには理屈が分からないかな?
 お猿さんみたいに射精するしか能がない人には」

詩帆の太ももが、さらに僕の身体を這い上がる。
ワンピースの裾が、ペニスの先を撫で上げる。
視界の端に、汚く筋の残った布地が見える。

ショーツの感触が、竿の裏側に当たる。
陰嚢にも、すべすべの布地がこすれる。
薄布一枚隔てて、娘の秘所と密着してる……。

「どうせお父さんには理解なんてできないんだから、
 難しいことなんて忘れちゃおう?
 それより、せっかくの気持ちいいのを味わっておこうよ。
 ほら、あのときみたいに裸を見せてあげる…♪」

艶っぽく微笑んで、詩帆が片腕を上げる。
ワンピースの袖から、するすると左腕が抜かれていく。
ぱすっ、という乾いた音といっしょに布地が落ちる。
肩口から、左胸の中ほどまでがはだける。

「あは……じーっと見つめちゃってる。
 自分の娘のおっぱいが、そんなに気になるんだ?
 いいんだよ、言わなくても分かってるから。
 このおっぱいに人指し指を突き立てて、
 柔らかさを確かめるみたいに、つつきたいんだよね。
 それから手のひらで鷲掴みにして、
 指の隙間から肉がはみ出そうなぐらいに揉み回したいんだよね。
 あ……でも、いまはそれよりも」

詩帆が目をほそめながら、身体をわずかに揺らす。
乳房の中ほどに引っかかったワンピースが、
脱げた袖と一緒にゆらゆら揺れる。

「いまはなにより、おっぱいの先っぽが見たいんだよね?
 もう気づいてるだろうけど、ブラはつけてないよ。
 これがずれたら、全部丸見えになっちゃうの。
 答えてほしいな、お父さん。
 ね……見たい?」

うん…と、気づけば言っていた。
詩帆がにんまりと笑う。

「そうなんだ……見たいんだ?
 私をさんざん汚して、その挙句に逃げ出して。
 それでも反省せずに、娘の裸をせがむんだ?」

忘れていた罪悪感が蘇る。
自分の情欲に流されて、妻と娘を不幸にした事実を思い出す。

そんな僕を見ながら、詩帆がわらう。
反対側の右の肩紐も、ほんの少しだけ肩から外す。
布地全体が下にずり落ちる。
昔よりも深くなった谷間が見える。

「私はお父さんを責めてる途中なのに、
 そんなことより娘のおっぱいが見たくて仕方ないんだ?
 身体に乗られてお話されてるだけで、出しちゃうんだ?」

詩帆が楽しそうに身体を揺らす。
左胸はもう大半が露わになってる。
なのに、胸の先だけは器用に隠れてる。

目を逸らさなきゃいけないと思うのに、できない。
精液が腰の奥にとろとろと流れ込んでくるのを感じる。
このままだと出してしまう。射精してしまう。

そんなのは……だめ…だ………。
なんとか……我慢しないと…。
せめて、あともう少しだけ……耐えて……。
せめて、せめて………詩帆の乳首を………。

「ふふっ………♪」

前のめりになって、ペニスに体重をぐっとかける。
いつのまにかカウパーまみれになっていた竿を、
ショーツがにゅるっと滑っていく。
詩帆の胸の先に引っかかっていた布地がずれ落ちる。
真っ白でやわらかそうな乳房が露わになる。
薄赤く尖った乳首まで、ぜんぶはっきり見えて。

「……ぅ……あ………あぁあぁぁっ…!」

詩帆の下半身に押さえつけられたまま、
ペニスがびくびくと跳ね回る。
精液がすごい勢いで噴き出して、ワイシャツやスーツを汚す。

そのあいだも詩帆は性器の上で、にゅるにゅると腰を揺らす。
そのたびに腰の奥が震えて、また精液が流れ出る。
自分の下腹部が、生あたたかい感触に濡れていく……。
 
 
 
ペニスの震えが収まって、射精の余韻さえ消えた頃になって
やっと詩帆は僕の身体から立ち上がる。
写真でも撮っていて脅されるのかと疑っていたけれど、そんな様子もない。
かといって、手足の拘束を解いてくれる気配もなかった。

「ん……お父さんったら、怖がってるんだ?
 大丈夫だよ、痛いことなんてなにもしないから。
 ただね、ほんのちょっと私と一緒に暮らしてほしいだけ。
 親子水入らずの楽しい時間を過ごそうね……ふふっ」
 
 
 
     * * *
 
 
 
それから何日も過ぎた。
僕は手足をロープで縛られたまま、裸でベッドの上に寝かされてる。
ロープはベッドの脚にくくりつけられていて、どこにも行けない。
食事やトイレのときだけ、足枷を外してもらえる。
でも、逃げようとは思えなかった。
詩帆から逃げられる気が到底しなかった。

ときおり詩帆がベッドの上にやってきて、僕の身体を撫でる。
まるで条件反射を覚え込まされた犬みたいに、
すぐに性器がみっともなく反応する。
詩帆が薄く笑いながら、それを射精に導く。その繰り返し。

詩帆はときおり深夜に買出しに行く以外は、
ずっとこのワンルームに居続けた。
大抵は本を読んでいて、ときおり音楽を聴き、
夜はいつもソファで眠った。
そんな日々が、ずっと続いていく……。
 
 
 
 
 
 
「あ、お父さん……起きちゃった?」

目を開けると、ベッドの上に詩帆がいた。
ここに来たときと同じ、白いワンピースを着てる。
その布地にも、詩帆の指にも白く濁った液体がついてる。

「眠ってるあいだに射精しちゃったんだよ?
 といっても、私が遊んであげたからなんだけど。
 こういうのも夢精っていうのかな?」

詩帆が僕の目の前に手のひらを突き出す。
五本の指を広げると、そこかしこに白い糸が伸びる。
精液の生ぐさい臭いが鼻をつく。

「詩帆……こんなこと……もう…やめてほしいんだ……」

「ふふっ、おかしなこと言っちゃだめだよ。
 これは、お父さんの方から望んだことなのに。
 ね……まだ分からないんだ?
 これだけ馬鹿みたいに毎日よがって精液を吐き出して、
 それでもまだ分からないんだ?
 いまは、お父さんのあの日の夢が叶った世界なんだよ。
 娘の身体で射精しながら、社会からこぼれ落ちてく。
 快楽に溺れて、破滅していく。
 それがお父さんの望みだったんでしょう?」

手のひらにこびりついた精液を、
詩帆は自分の脚にゆっくりと広げはじめる。
どこか夢見るようなうっとりとした表情で、
ボディクリームを塗るように丹念に塗り広げる。
太ももも、ふくらはぎも、膝裏も、ぜんぶ精液にまみれていく。

「お父さんが私を汚して、そのまま消えてから
 ずっとずうっと考えてたの。
 あなたに復讐するにはどうすればいいかって。
 あなたを破滅させるにはどうすればいいかって。
 それでとつぜんに気づいたの。
 簡単なことだなって。
 お父さんの夢を叶えてあげればいいんだなって」

精液まみれの脚を、詩帆がペニスに近づける。
ぬるんだ太ももが、そうっと性器に押しつけられる。
ペニスは知らぬ間にまた膨らんでる。
詩帆の柔肉に亀頭が触れる。カウパーが溢れ出す。
乾きはじめた精液を上塗りするみたいに、
透明な粘液がどんどんと彼女の脚を汚していく。

「くすっ……またこんなに大きくして。
 気持ちいいことに本当に弱いんだね、お父さんは。
 ほら……私の身体、もっとたくさん感じてみようね」

目を細めながら、詩帆が足をゆっくり動かす。
亀頭が長い脚のうえをどんどんと滑っていく。
やわらかい太ももから、弾力のあるふくらはぎへ。
それからまた脚を這い上がっていく。
往復するたび、カウパーが詩帆の脚に汚い跡を残す。

尿道口と裏筋が、やわらかい肉の感触に満たされる。
腰の奥に、むずむずとした気持ちよさがたまっていく。
気がついたら、腰を突き上げてみずから快感を求めていた。
手足にロープが食い込むのもかまわず、
腰を押し上げて詩帆の足を必死に犯す。

「また我慢できなくなっちゃったの?
 でもね、お父さん……忘れちゃだめだよ。
 これは私があなたを苦しめるための行為なの。
 快楽をあげるのも、奪うのも、ぜんぶ私が決めるの」

おもむろに詩帆が膝裏にペニスを挟みこむ
ふくらはぎと太ももに竿がぴっちりと挟まれる。
性器全体があたたかさに包まれて心地いい。
でも、だけど……。

「ん……どうしたの、そんなに苦しそうな声だして。
 自分の好き勝手に動けないのが辛いのかな?」

足できつくペニスを挟んだまま、詩帆が薄く笑う。
彼女の脚に包まれるのは気持ちよくて、
でもただそれだけでは物足りなかった。
くちゅくちゅと脚で扱いて動いてほしかった。
だけど、詩帆は楽しそうに笑うだけ。

「苦しい? でもお母さんはもっと苦しかったと思うよ。
 お父さんがいなくなったあとは、驚いて、悲しんで。
 なにか悪いことしたのかなって自分を責めて。
 だからね、私はちゃんと教えてあげたんだ。
 お父さんが私になにをしたかっていうこと。
 どんなふうに私の胸やお尻をまさぐって、
 どんなふうに息を荒げながら精液を吐き出したのか。
 とってもとっても丁寧に、長い時間をかけて説明したの。
 そしたらね……抜け殻みたいになっちゃった。
 それもぜんぶお父さんのせいだね……悪い人だね」

罪悪感が、快楽を打ち消していく。
どうしてそんなことをしたんだ、と詩帆を問い詰めたくなる。
だけど、その気持ちをまた情欲が上塗りしていく。

ふにふにとした柔らかい膝裏の中で、
ペニスが射精を求めて震えつづける。
先端からはカウパーがだらだらと流れて、
性器の周囲をぬるぬるに浸していく。
このまま脚を動かしてくれたら、とても気持ちいいはずなのに…。

「もう……お父さん、ちゃんと私の話を聞いてる?
 ぜんぶお父さんが悪い、っていう話だよ。
 ね……分かった?」

首を必死に持ち上げて、こくこくと上下に振る。
なんでもいいから、とにかく精液を吐き出したかった。
毎日詩帆に弄ばれ、我慢することさえできずに射精させられて。
それを繰り返した挙句に、今度はこうやって焦らされて。
こんな状態に耐えられるわけがなかった。

「うん、じゃあ悪いお父さんは、悪いことしちゃおうか。
 自分の娘の身体に、おもいきり精液かけちゃおうね…」

詩帆がにっこりと微笑んで、
自分の前脚をくいくいっと上下に動かしはじめる。
カウパーがたっぷりと塗り込められた膝裏が、
ちゅくちゅぷっ…という淫猥な音を立てる。

「さ、いっぱい気持ちよくしちゃうよ……」

僕の下腹部に手のひらを置いて、
自分の体重を支えながら、詩帆が太ももで扱く速度を上げる。
ぬるぬるの肉が左右からペニスを押し潰す。
にちゅ…にちゅっ…と、粘ついた肉のこすれる音が響く。

「ほらほら、もっと身体の力を抜いて……。
 頬をゆるめて、目元をだらしなく垂れ下げて、
 よだれが出ちゃうぐらいに口をみっともなく開いて。
 身体も心もどろどろに溶かしながら、精液いっぱい出そうね…」

詩帆の指先が、僕の陰毛の生え際をくすぐる。
ちぢれ毛を五本の指にくるくると巻きつけながら、
くすくすと楽しそうに笑いつづける。

「それじゃ、出しちゃおうね…♪」

僕にのしかかるみたいに、詩帆が前のめりになる。
ペニスを挟む力が、ほんのわずかだけ緩む。
カウパーまみれの太ももとふくらはぎのあいだを
ペニスがゆるく締めつけられたまま、にゅるんっ…と滑って。

「……ぁ……あぁ……ぁああぁあぁ…っ!」

射精感が噴き上がり、同時に精液が勢いよく迸る。

……びゅるるっ……! びゅくっ……じゅちゅっ…びゅぶっ……!

すべすべでぬるぬるの脚に優しく挟まれたまま、
白い液体が真上にびゅくびゅくと噴き出す。
飛散した精液が、詩帆の顔や手足を汚していくのが見えて、
それでまた腰の奥が蠢く。

……どぷっ……びゅぶっ……じゅぷっ……!

衰弱した身体のどこにこれだけの精液があったのか。
自分でも信じられない量の白濁液が撒き散らされる。
そのあいだもずっと詩帆は薄く笑いながら、
僕が馬鹿みたいに射精しつづけるのを眺めてる……。
 
 
 
 
 
 
「ん……やっと終わった?
 本当にいっぱい出したね……お父さん。
 娘の身体に自分の精液をぶちまけられるのが、
 そんなに嬉しかったの?」

詩帆がゆっくりと自分の片脚を広げる。
にちゅっ…という粘ついた音がして、
それから精液の臭いがむわっ…と広がる。
性器も、詩帆の膝裏もうっすらと赤く火照っていて、
それを隠すみたいに大量に精液が付着していた。

「こうやって足で挟まれるだけでも、出しちゃうんだね。
 くす……分かってはいたけど、心底快楽に溺れやすいね。
 なんだか私、かえって心配になってきちゃった」

詩帆が僕の身体に覆いかぶさる。
ワンピース一枚隔てて、下着もつけてない身体を感じる。
僕の心臓の音を聞くみたいに、左胸に耳を押し当てて
それから身体を少しだけ這い登る。
薄布がさらさらと、僕の乳首や腰骨をくすぐる。
詩帆が首筋に頬をこすりつけてくる。

「ふふ、なんだか本当に心配だな。
 いまからすることにお父さんが耐えられるのかな?
 脚にちょっと挟まれただけであんなにびゅーびゅー出してるんじゃ、
 私の身体を犯したりしたら、どうなっちゃうんだろうね」

「………え?」

犯す…?
僕が……詩帆…を……?

「そうだよ……いまからね、あなたにチャンスをあげる。
 私を犯して、そのまま快楽に溺れて破滅するか。
 それともあの日みたいに逃げ出すか。
 もう一度だけ、選ぶチャンスを用意してあげる」

詩帆が身体を少し起こして、ベッドの下に手を伸ばす。
取り出したのは、大振りのカッターナイフだった。
手足を縛っているロープが、ざくざくと切断されていく。
ほんの数十秒で、手足すべてが自由になる。

「さあ、準備完了だよ。
 で、どうするのか……教えてほしいな」

カッターナイフを部屋の隅に放り投げて、
もういちど詩帆が僕に覆いかぶさる。
首筋が小さな舌でちろちろと舐められる。

「分かっていると思うけど、
 私を犯したら……もうなんの言い訳もできないよ?
 あなたはただ精液を気持ちよく吐き出すために、
 娘さえ犯してしまった最低でどうしようもない人になるの。
 まともな人間に戻ることなんてもうできない。
 自分を屑だと自覚しながら、永遠に絶望して生きていくの。
 それが私からお父さんへの復讐」

白いワンピース越しに、詩帆の胸が押し当てられる。
さっき飛び散った精液が布地に染み込んで、
その向こうの乳房が透けて見える。

「それともあの日みたいに逃げる?
 逃げて逃げて、自分はいつか真人間になれるかもしれないって
 そうやって信じつづけながら生きていく?
 それができるなら、あの日のことはなかったことにしてあげる。
 ふふ……ね、どうするの?」

詩帆のくすくすという吐息が、耳にまで届く。
精液がべっとりとついた詩帆の太ももが、
僕の脚ににゅるにゅるとこすりつけられる。

腕をゆっくりと身体の横に下ろす。
本当に手足の拘束は解かれていた。足だって動く。
いまなら、詩帆の言うとおりに逃げ出すことができた。
どんなことでも可能だった。
どんなことでも…………。

「………あはっ…」

詩帆が息を吐いて、身体をくねらす。
僕の手のなかで、詩帆のお尻が揺れる。
僕は……詩帆の身体をまさぐってた。

「それがお父さんの選択なんだね…♪」

ペニスがまたがちがちに勃起する。
竿がワンピースの裾をめくり上げて、
カリ首が詩帆のショーツに何度もこすれる。
それだけでもう達してしまいそうなほどだった。

さっき射精したことなんて忘れたみたいに、
精液を吐き出したくてたまらなかった。
詩帆を抱きしめながら、その身体を犯したい。

「そうだよね。本当はずっと我慢してたんだもんね。
 あの日からずっと、したかったんだよね?」

そうだった。ずっとこうしたかった。
あの夜の詩帆の肌の色、太ももの感触、手ざわり、
おっぱいのやわらかさ、秘所のぬくもり。
心の一番深いところで、あのとき逃げたことを後悔してた。
あの日の感触を思い出して何度も自慰行為に耽った。

詩帆の手で、胸で、ぬるんだ膣で搾られることを想像しながら、
毎晩のように大量の精液を吐き出してきた。
はだけたパシャマの隙間から見えた乳首を思い出して、
汗でしっとりと濡れたショーツの湿り気を思い返して、
そこに精液をぶちまけることを想像して性器を扱いてた。

「いいんだよ……今日はその夢が叶う日なんだから。
 あなたが屑だって証明されたかわりに、
 これ以上ない快楽を貪ることが許された日なんだから」

左手をショーツの上に滑らせて、そのつるつるとした感触を味わう。
右手はさらに下着の中に潜り込ませて、尻肉を撫で回す。
ペニスが根元から何度も跳ね回る。
入れたい……これを突き入れたい……!

「大丈夫……もう焦らしたりなんてしないよ。
 ちゃんとあなたの答えが聞けたんだから」

詩帆が身体を起こす。
ベッドに両手をついて、腰を持ち上げる。
ほとんど無意識のまま、僕の指が下着をずらす。
ぬるんだ割れ目に、亀頭があてがわれて、そのまま。

「………ぅ………ぁ……っ…」

突き入れた途端、待っていたみたいに詩帆の膣肉が絡みつく。
ひだがペニスを幾重にも撫でながら、きゅうっと全体で締めつける。
詩帆が左右に腰を捻るたびに、
膣壁がにゅるっ…にちゅるっ…!と竿の側面をこすり上げる。

「お父さん、気持ちいいかな……なんて聞かなくていいよね。
 その顔を見れば、もう十分だね……ふふっ。
 脳みそまで全部溶けて、おかしくなってもいいんだよ?
 どっちにしろ、お父さんの人生に価値なんてもうないんだから」

詩帆の腰が上下に動くたびに、脳に痺れたような感覚が走る。
全身の毛が逆立つような、ぞくぞくとした快感が広がる。
頭の中で、気持ちいい…っ…という言葉をうわごとのように繰り返す。

「んっ……なかでびくびくって震えてる…。
 もう出そうになってきてるんだ?
 それを出したら、本当にもう非の打ち所のない終わりなのに。
 私がそのまま警察に行って、強姦されましたって言っても言い訳できない。
 お父さんの人生のなにもかもが終わるのに。
 なのに……それでもやっぱり出したいんだ?」

ほんの一瞬、快感とは違うぞくりとした感覚が背筋を走る。
だけど、後からやってきた気持ちよさの波がそれを消してしまう。
詩帆と繋がった場所から、ちゅくちゅくと精液をねだるような音が聞こえる。
ここでやめるなんて、できるわけなかった。
たとえこのあと死ぬとしても、射精せずにいられない。

「じゃあ、最後にひとつだけ命令しようかな。
 射精するときには……私の名前を呼んでね。
 娘からのお願い、聞いてほしいな……」

心臓の鼓動が痛いくらいに強くなる。
指先がまもなくやってくる快感を怖がるみたいに震える。
それを抑えようとして、詩帆のほそい腰を両手で抱く。

「さ……びゅーってしちゃお…♪」

詩帆の中がひときわ強く収縮する。
ぬるんだ肉ひだが、カリ首と裏筋をぞぞぞっ…とこすり上げる。
身体が弓なりに反り上がる。
詩帆の名前を呼ぶ。射精感が弾ける…!

……じゅぶっ……びゅぶるっ………じゅちゅっ…!

あったかくてやらかい蜜壷の中に精液が飲み込まれてく。
ペニスを根元までしっかり押し込んで、
詩帆の腰をこれ以上ないくらいぴったり密着させて
そのまま精液を思いっきり吐き出しつづける…!

……ぶびゅる…っ…じゅぶっ……ずぶびゅっ……!

身体が本当におかしくなったんじゃないか、
そう思えるほどに何度も何度も果てしなく射精する。
結合部から愛液と精液が混じったものがこぼれ出し
秘所からペニスがずり落ちて、でもそれをまた突き入れる。

……びゅばっ……びゅぶちゅっ……ずじゅっ……。

溢れた粘液が、僕の下腹部に溜まって。
シーツにも大量にこぼれ落ちて汚い染みになって、
それからようやく律動が収まっていく。
 
 
 
「はい……これでおしまい。
 あなたのいまの生活も、将来も、なにもかもが終わり。
 さ……どんな気分?」

不思議と……後悔はなかった。
ぜんぶ詩帆の言うとおりだろうと思う。
僕はどうしようもない人間だった。
道端に吐き捨てられた吐瀉物以下の人間。
だから、どうなっても仕方がない。
いまは、それがよく分かる。

いまさら詩帆に抗うようなことはなにもなかった。
ただ、一つだけ聞いておきたいことがあった。
どうしてこんな方法をとったのか、と。

僕がそのとおりに聞くと、詩帆は少し黙り込んだ。
それからペニスを引き抜いて、また僕の上に倒れこんでくる。
そして僕の頬に唇が触れるか触れないかの距離で、
しずかな声で囁く。

「あなたはあの日、自分に嘘をついたでしょ?
 自分はまともな人間だから、これ以上はいけない、って。
 本当は最低な人間なのに、ね。
 私も……たぶん同じなの。
 私も、自分に嘘をついたの。
 そうしてそのまま……嘘をつき続けてるの」

詩帆はそこで言葉を切って、
指についた精液を唇に含んで、少し啜った。
それからその指を、僕の唇にそっとあてた。

「だからね、私はきっと本当は……」

END