万引き少女のおままごと(中編)

「ありがとうございました」

レジを済ませた女性客を、鈴音は笑顔で送り出す。
接客の手際も、マナーも、ほぼ完璧に近かった。

僕が鈴音の人形になって……二週間が過ぎた。
鈴音はいま、このコンビニでアルバイトとして働いてる。

アルバイトとしての鈴音は、本当によくできた子だった。
一度教えたことはまず忘れないし、
商品の陳列も、接客も、清掃もなんでも器用にこなした。

だけど、一つだけ大きな問題がある。
それは……鈴音がここで働いている理由。
毎日のように彼女がシフトに入るのは、
お金のためでも、ましてや社会経験を積むためじゃない。
ただただ……なるべく長く僕を弄ぶためだった。

この二週間、鈴音は気まぐれに僕で遊びつづけた。

倉庫で荷物を運んでいると、背後から抱きつかれる。
そのまま後ろから手でしごかれ、精液を絞り出される。
トイレの清掃中に入ってこられて、
便器のなかへと勢い良く射精させられる。
そんなことが数知れずあった。

いまではもう、鈴音が近くにいるだけで身体が熱くなる。
無意識にペニスに血が流れ込みそうになる。
もちろん……いまも。

「店長……どうしたんですか?」

振り向いた彼女の顔は、接客の笑顔とはまるで違う。
朗らかな明るさのかわりに、淫らな暗さに満ちてる。
目尻がいやらしく下がってる。
蛍光灯の明かりを反射して、唇が薄桃色に光る。

「なんでも……ない、よ」

大きくなりはじめたペニスを隠すように腰を引く。
本当は、今すぐあのすべすべの指でしごいてほしかった。
だけど、それは無理な話だった。
僕からはおねだりをしない、というのが
鈴音に取り決められたルールだから……。

「そうなんですか?
 無理して嘘を言わなくてもいいんですよ。
 おねだりしちゃだめなだけで、
 みっともなく勃起してます、って告白するのは構いませんよ?」

「そんなこと……!」

慌てて、店内を見渡す。
そんな台詞、誰かに聞かれたらどうなるか分からない。
でも幸い、店の中は無人だった。

「くすっ……なに怯えてるんですか?
 お客さんがいないことぐらい、知ってますよ。
 店長さん……しっかりしてくださいね。
 ちゃんとお店のことは自分で把握しておかないと。
 あ……もしかして。
 私にぼーっと見とれていたんじゃないですか?」

鈴音が歩み寄ってきて、おへその辺りをさわさわ撫でてくる。
かすかに伝わるあたたかさに、身体の力が抜けていく……。
なのに一方で、性器はどんどん固くなっていく……。

「ほら……やっぱり大きくしてるんじゃないですか。
 本当はびゅーびゅー射精したくてたまらないのに、
 おねだりできないから我慢して。
 それで見栄を張って嘘ついて。
 だめなお人形ですね……お兄さん」

お兄さん、と呼ばれた途端、ペニスが一気に膨らむ。
その呼び方は、鈴音が僕と遊びはじめる合図だったから。
いまから気持ちいいことをしてもらえる。
ああ……でも…でも………!

「だめ……だよ…だって……こんなとこ…で……」

店内にはたしかに誰もいない。
だけどいつ誰かが入ってくるか分からない。
外から誰かに覗かれる恐れだってある。
いくらなんでも……こんなところで……。

「きっと大丈夫ですよ……お兄さん。
 この時間帯は、毎日がらがらじゃないですか。
 たぶん誰も来ませんよ………たぶん……ふふ」

鈴音が慣れた手つきでペニスを取り出す。
人差し指で尿道口をとんとんと叩かれると、
そのたびに透明な糸が伸びる。

「ぬるぬるいっぱいで喜んでますね……ここ。
 お兄さんもじつは期待してるんですね?」

「違う……ちが………う…」

「そうですか?
 まあ、私にはどっちでもいいですけれど。
 お人形さんがどう思っていても、遊ぶのは私ですから」

カウパーを手のひらにこすりつけるようにしながら、
くちゅくちゅと揉むようにしてしごかれる。
快感が身体のなかから溢れてくる。
口の中でよだれがどんどん湧き出してくる。

「もうひくひくって動いてますよ……。
 昨日も、一昨日も、その前も、
 あんなに出したのにそれでもまた出したいんですね。
 お手入れが面倒なお人形さんですね、お兄さんは」

余っていた左手をペニスの先端にのせて、
円を描くようにくるくると手の平で撫で回す。
気持ち良さで視界が歪む。
天井の蛍光灯がひどく明るく見える。

「さ、もっと幸せそうな顔をしてください……。
 お兄さんが見とれていた女の子、
 その綺麗な手でくちゅくちゅしてもらってるんですよ。
 お仕事しながら、今日はいつしてもらえるんだろうって、
 盛りのついた犬みたいに思っていたんですよね?
 おててで触ってもらいたい、足にこすりつけたい、
 スカートをめくりたい、乳首をなめたい、
 そんなことばっかり考えていたんでしょう……?」

言われるたびに、その光景ひとつひとつが想像できてしまう。
レジを打っている彼女に抱きつき、
全身をまさぐりながらペニスを押しつける。
そんな淫らなイメージでいっぱいになる。

「今日は特別にお兄さんの夢をひとつ、叶えてあげましょうか。
 ほら、こうやって……」

薄く笑いながら、鈴音がスカートの裾に手をかける。
指についたカウパーが、紺の布地を少し濡らす。
それから、ゆっくりと裾が持ち上がっていく……。

「お兄さんの考えていること、当ててあげましょうか。
 見えそう、見えそう。見たい、見たい、でしょう。
 もう頭の中は可愛い女の子の下着を見ることだけ」

なにもかも鈴音の言うとおりだった。
あと少しで見えそうなところで、嘲笑うように裾がひらひら上下する。
見たい……見たい……見たい…よ…。

「それじゃあ……サービスです」

裾がふわりと持ち上がる。
ピンク色のパンツが見える。
布地によった皺までくっきりと。

「ふふ……おちんちん、すごい暴れてます」

鈴音の手のなかで、ペニスが上下にびくびくと跳ねる。
普通ならとっくに射精していておかしくない動きだった。
だけど、誰かに見られるかもしれないという恐怖が、
ぎりぎりのところで射精をこらえさせる。

「あれ、頑張りますね……。
 でもお兄さん……やっぱり頭が悪いんですね。
 本当は早く射精した方が楽なのに。
 さっさと全部終わらせた方が、お兄さんにとっては安全なのに。
 それとも長びかせて、色んなことをしてほしいんですか?」

鈴音がペニスを掴み、自分の股間に近づけて揺らす。
パンツからほんの数ミリのところで、亀頭が震える。

「おちんちん、くっつけたいですか……?」

こくこくと首を振る。
鈴音が妖しく微笑む。
僕は唾を飲み込み、腰を突き出して、そこで。

「はい、お預けです」

少女の身体がすっと下がる。
そんな…とみっともない言葉が口からこぼれる。
鈴音は楽しそうに唇を歪ませて、呟く。

「お客さんですよ」

「……!」

一人の女の子が店に向かってくるのが見えた。
ペニスをズボンに押し込むのと、自動ドアが開くのが同時だった。
僕の姿は鈴音の陰になっていたから、
なにをしていたかまでは見られていない……と思う。

入ってきたのは、鈴音と同じ高校の子だった。
よく来る子は大抵覚えているのだけれど、あまり見覚えがない。
胸が大きくて、制服が膨らんでいるのがはっきり分かる。
でも大人っぽい身体つきとは裏腹に、
表情にはどこかあどけなさが残っていた。

女の子はファッション雑誌を手に取ると、立ち読みをはじめる。
でも、どこかその動きに違和感がある。
なにより、時折レジにいる僕らにちらちらと視線を走らせる。

鈴音が僕に視線を走らせて、囁くように言う。

「見られたのかも、しれませんね」

思わず唇を噛む。
見られてた……本当に……?
本当にそうだったら、どうなる……?
彼女が誰かにそれを言って、噂が触れ回って、そしたら……。

「お兄さんの人生はもう終わり、ですね」

心臓がきゅうっ…!としぼむ。
そんな…そんな……!
冷や汗が背中に滲むのが分かる。
指先がぶるぶる震える。

「じゃあ……さっきの続きをしましょうか」

一瞬、なにを言われたのか分からなかった。
だけど、頭よりも早く身体が理解する。
鈴音の手が再び僕の股間に伸びてくる。

「やめ……そんな……ねぇ…!」

涙まじりのかすれ声だった。
けれど鈴音は気にしたふうもなく、ペニスをまた引きずり出す。

「大丈夫ですよ……私の身体で隠してあげますから」

そう言って、鈴音は僕の前に立つ。
ひどく不自然な格好ではあったけれど、
たしかに女の子の視線からは隠れてる。
でも……こんなことぐらいじゃ……。

「お兄さん……よく考えてください。
 もうばれてるとしたら、今さらなにをしても手遅れです。
 だったら、最後に気持ち良くなった方が得でしょう?
 それに……」

そこでいったん言葉を切ると、
鈴音は女の子をしばらくじっと見つめる。

「それにきっと……気づかれませんよ」

どこか嬉しそうにそう呟くと、
鈴音は後ろ手にペニスをさすりはじめる。

くちゅ…ぬちゃ…とカウパーが粘ついて音を立てる。
その音がひどく大きく聞こえる。

「お願い……やめて………あとで…いくらでも……」

「……おかしなこと言わないでくださいよ、お兄さん。
 いつ、どこで、なにをするのか決めるのは私。
 そうでしょう?
 お人形さんは可愛がってもらえるかわりに口答えしない。
 お洋服を脱がされて、裸でごみ箱に放り込まれても、
 文句を言ってはいけないんですよ……」

そうだけど。そう約束したけれど……でも……!
後ろ手にしごいているせいなのか、
どこか鈴音の手にもぎこちなさがある。
だけど、いつもとは違う刺激がまた気持ちいい。
裏筋あたりにむずむずとした快感がたまっていく。

「お兄さん、口がだらしなく開いてますよ。
 ほらほら、またあの子に怪しがられますよ?
 真面目な店長さんの顔をしてくださいよ」

立ち読みしている女の子と視線が合う。
女の子は身体を震わせて、目を逸らした。
だめだ……きっと…気づかれてる……。

また唇を噛み、下を向く。
するとペニスが鈴音にしごかれているのが見えてしまう。
白く華奢な指が、竿や亀頭にからみついて、
透明な粘液にまみれながら淫らに踊ってる。

「んっ……おちんちん、また跳ねましたね。
 そろそろ出ちゃいそうですか?
 さっき出せそうで出せなかったから、
 きっともう我慢の限界なんですよね……」

がくがくと膝が震える。
もう本当に射精してしまう寸前だった。
震えが腰の奥まで伝わってくる。
だめだ……出しちゃだめだ……終わってしまう。
なにもかもが……ぜんぶ……。

「無駄ですよ」

鈴音がいつのまにか上着とブラウスの胸元を開いていた。
真上から覗きこんでしまう。
ノーブラだった。
白くなだらかな膨らみの先に乳首が見えた。
スカートの裾が尿道口をざらりとこすった。

「……ぁ……ぁ…!」

どぷっ…どぷっ…とポンプの水を押し出すみたいに、
精液が吐き出されていく。
鈴音が両手で亀頭を包み込んでる。
そのあったかい手のひらのなかに、精液がどぽどぽとこぼれる。

「あは……出しちゃいましたね」

鈴音の声は心底楽しそうだった。
僕は数秒放心して、はっと女の子のことを思い出す。
女の子はいつのまにかお菓子売り場にいて、
僕と目が合うと、またびくっと身体を震わせた。

「お兄さん、それは仕舞っておいてください」

指で、とん、と柔らかくなったペニスをつつかれる。
僕があわてて性器を隠すと、
鈴音はすぐに洗い場に行って手を洗いはじめる。
床にも何滴かこぼれているけれど、
あとで拭けばわからないレベルだった。
それよりも、いまはあの子をどうにかしないと。
本当に見られていたのかどうか、たしかめないと…!

鈴音が手を洗い終わるのと、
女の子が逃げ出すように自動ドアに向かうのが、
ほぼ同時だった。

「待ってください」

女の子に声をかけたのは、鈴音だった。
声をかけられて、一瞬女の子の足が止まる。
でも、もう一度逃げ出そうとして。

「待ってくださいよ、川村先輩」

自動ドアが鈍い機械音を立てて開く。
だけど、女の子はそこから出ていなかった。
目を見開いて、鈴音を見つめてた。
鈴音がまた口を開く。

「川村先輩、万引きしましたよね?」
 
 
 
     * * *
 
 
 
「あ、店長……お店の方は大丈夫ですか?」

「うん、ちょうど高田くんが来てくれたからね。
 レジとかは任せてきた」

答えながら、鈴音の隣に座る。
小さなテーブルを挟んで、僕らの前にはさっきの女の子がいる。
うつむいたまま、黙りこくっていた。

「盗んだのは……これだけ?」

女の子に…というよりは、鈴音に確認するように聞く。
テーブルの上には、眠気覚ましのガムが一つ転がっていた。

「川村先輩は、そう言ってますけど」

名前が出た途端、女の子がいっそう身を小さくする。
鈴音の話では、この子は川村伊織といって
同じ学校の先輩らしかった。
美人で有名だから、鈴音の方では顔を知っていたらしい。

僕が鈴音に遊ばれているあいだ、
この子はずっと万引きする機会をうかがってた。
だから挙動不審だったし、僕らがしてることにも気づかなかった。
そういうことだったらしい。

「で、君はなんで万引きなんて」

「……ごめんなさい…!」

僕の言葉を遮って、女の子が声を上げる。
女の子がうつむいたまま、
涙がぽたぽたとテーブルにこぼれる。
小さな水たまりが増えていく。

「えと……ほら、泣かないで。
 そんなおおごとにしようってわけじゃないし」

ティッシュを何枚か抜き取り、女の子に渡す。
涙がゆっくりとにじんでいくのが見える。

「ごめんなさい………ごめんなさい…」

やっと顔を上げた彼女は、本当に泣いていた。
目を真っ赤に腫らして、涙の跡が頬で光ってる。

「店長」と唐突に鈴音が口を開く。

「川村先輩はこういうことする人じゃないんです。
 きっと、なにか理由があるんです。
 だから……許してあげてください。
 私からも……お願いします」

鈴音が隣にいる僕に向けて頭を下げる。
そういうことをする人じゃない、というのは
さっきもちらりと鈴音から聞いていた。
とても純真で素直で、誰にでも親切な人なんだ、と。

鈴音はさらに頭を深々と下げる。
不自然なぐらいに頭が下がってくる。
そしてじっと身を固くして動かない。

「そこまでしなくても、もともと………っ…!」

鈴音の指が、ズボンのジッパーを引き下ろしていく。
テーブルの陰になっているせいで、川村さんからは見えない。
でも…まさか……こんなとき…に………?

「お願いします、店長。今回は見逃してあげてください。
 ガムひとつ盗っただけじゃないですか。
 それとも、他になにか盗んでるはずだって、そう言うんですか?」

誰もそんなこと言ってない。
そう言い返したいのだけれど、突然のことに声が出ない。
鈴音はさらにひとりで発言を続けていく。

「じゃあこうしてください。
 川村先輩が本当に他のものを盗ってないってわかったら、
 許してあげてください。お願いします。
 学校や警察にも言わないって約束してください…!」

本当に先輩を助けたがってる、
声だけ聞けばそう錯覚してしまいそうなほどの真剣な口調だった。
だけど、僕からだけかろうじて見える口元は……薄く笑っていた。

ペニスがゆっくりと取り出される。
さっき出した精液のかすが乾いて、いたるところにこびりついてる。
ほんの数十分前に自分たちがしたことを思い出す。
ペニスがいきなり膨れ上がる。

「店長、お願いします。
 どうなんですか……店長」

声色のなかに、かすかな艶やかさが混じる。
肉棒全体がさするように穏やかにこすられはじめる。
僕はお腹をテーブルにくっつけ、必死に下半身を隠す。

「店長……答えてください」

妖艶さのなかに、今度は獲物をいたぶるような声音が混じる。

「そう…だね……うん……。
 えと……他に盗ってないなら、べつに、いいよ。
 反省もしてくれてる…みたい……だし……」

「…ほんとう、ですか……?」

僕らの様子をわずかにいぶかしみながらも、
女の子は許されたことに明るい顔を見せる。
長い睫毛が、ぱちぱちと何度も上下する。

「じゃあ、服を脱いでもらわないといけませんね」

「え……?」

鈴音の言葉に、川村さんの表情が固くなる。
僕だって同じだった。
鈴音はいったい……なにを………?

疑問に思うあいだも鈴音の手は止まらない。
こんな状況だっていうのに溢れてきてしまうカウパーを、
まるでボディクリームみたいに入念に肉棒に塗りつけてくる。

「だって、そうじゃないですか。
 万引き犯を見つけた場合は、手荷物と服をチェックして、
 他にも盗まれているものがないか確認すること。
 私にそう教えてくれたのは店長じゃないですか」

嘘だった。
そんなこと言うわけがなかった。
だけど……それで僕には分かってしまう。
鈴音がなにをしたがっているのか。
どうしていまここで、僕のペニスを露出させたのか。

この女の子が服を脱ぐのを見ながら……。

それが鈴音のやろうとしてることだった。
僕が止めなきゃいけないことだった。
なのに……テーブルの下でペニスが馬鹿みたいに跳ねる。
口の中によだれが溢れてくる。

ああ……くそっ………こんなの……だめ…なの…に……。

「じゃあ、お願いします。川村先輩」

「…え…だって…そんなの……」

女の子が僕と鈴音の顔を交互に見る。
その手が震えてるのがわかる。
ああ…でも……その手の向こう側の膨らみが気になってしまう…。
あの巨乳を見てみたい……。

「でも、そうしないと疑いが晴れないんです。
 店長も私も、本当はこんなことしたくないけど、
 でもマニュアルで決まってるんです……ごめんなさい。
 あ、そのかわり、もし店長がなにかしようとしたら、
 私がこれを刺してでも止めますから」

鉛筆立てに入っていたカッターナイフを取り、
チキチキと音を立てて刃を伸ばす。
ぞくっとした寒気が背筋を走る。

「い…いいよ…そこまでしなくても……。
 そういう決まりだったら……仕方ないもんね。
 あの、さすがに……下着は脱がなくても…いいですよね」

「も……もちろん。
 まあ、その……なんだ…学校の身体検査みたいな…ものだから」

……あぁ…僕は……なにを言ってるんだ……。

「ふふ……上手いこと言いますね、店長」

机の下で、カリ首が優しくなでなでされる。
ペニスの根元が大きく収縮する。いまにも出してしまいそうだった。

鈴音が僕を見て、一瞬だけ笑う。
視線だけで囁かれる。

『ほら、お兄さん、もうすぐこの子の下着姿が見れますよ。
 それを見ながら、びゅーびゅー射精しちゃいましょうね』

女の子がブレザーを脱ぎ、鈴音に手渡す。
鈴音がその内ポケットを確認して、空なのを確認する。

ブラウスのボタンが上から外されていく。
一つ……二つ……。

ボタンが外れて、胸元がぱっと開く瞬間に合わせて、
裏筋が指でこすられる。

「……ぁ……っ」

狂おしいほどの射精感に襲われる。
本当に射精したみたいに、ペニスがびくびく蠢く。
それでもまだ……耐えていた。

快感に比例するように、自分への怒りが膨れ上がる。
僕はなにをしてるんだ……なにを……!
いまここを出て行けば、そうすれば、彼女を目で犯さずに済む。
まっとうな人間でいられる……そうだ……そうしよう……。

……でも……でも…だめだ……。
ペニスを丸出しで……こんなカッコで…出て行けない……。
だから……しょうがないんだ……。
このままこうしてるしか……ないんだ……。
…そうだろう……?

ちらりと横目で、鈴音の顔を見る。
その目はやっぱり笑っていた。

『頭のなかでどんな言い訳を考えてるんですか?
 お兄さん、本当はぜんぶぜんぶ分かっているんでしょう?
 本当はなにもかも、あさましい自分をごまかすための言い訳だって。
 でもそんな屑な自分を意識したら、
 お兄さんのもろくて弱い脳みそはぼろぼろ崩れちゃうから。
 だから、言い訳を探すんでしょう……。
 いいんですよ、でも最初からそんなこと考えなくて。
 お兄さんは私の人形になったんですから。
 考えることはご主人様の私にまかせて、
 脳みそなんてものはとろとろに溶かしておいて、
 射精人形として精液をどぽどぽ撒き散らしましょうね……』

女の子がうつむきながら、最後のボタンを外す。
それからゆっくりと……肩を震わせながらブラウスをはだけていく。
白い肌と、淡い緑色のブラが見えてくる……。

ブラのフリルが揺れる。
とってもやわらかそうな、大きなおっぱいが見える。
胸元を隠そうとする仕草のせいで、
かえって谷間が深くくっきりと強調される。

鈴音の手のひらがペニスの先端を包み込んで、
まるで乳のなかに挟み込んだみたいに、
ぎゅっ…ぱっ…ぎゅっ…ぱっ…と開け閉めを繰り返す。

「あの……下も……ですか………」

「うん……ごめんなさい。でも…規則だから」

もうなにも言えなくなっている僕のかわりに、
申し訳なさそうな声音で鈴音が言う。
だけど、もう僕にはまるで違う台詞に聞こえる。

『ごめんなさい……このお人形さんが、
 もうちょっとで最高に気持ちよく射精できそうだから。
 だから、スカートの下も見せてくださいね』

はい……と弱々しくうなずいて、
女の子がスカートに手をかける。

鈴音の人差し指が、じらすようにカリ首あたりを小さく何度もなぞる。
もうちょっとですから、我慢、我慢…と言われてる気がする。
息が荒くなるのを押さえようとすると、酸欠みたいに頭がガンガン痛む。

「これで……いいですか?」

スカートがすとんと床に落ちる。
ブラと同じ薄緑色のパンツが露わになる。

鈴音の手のひらがきゅうっ…と強く、
それでいてひときわ優しく亀頭に押つけられる。
妄想やイメージ以上のなにかが弾ける。
この女の子のあそこにペニスをくっつけてる…!

……どぷっ…!……じゅぱっ………びゅぶっ……!

精液が飛び出す瞬間、鈴音が手を離すのを感じた。
机の下の空間に、精液がびゅーびゅーと放たれていく。
精液が机の裏に当たる音さえ聞こえる気がする。

あっというまに部屋に生臭い匂いが広がりはじめる。
女の子もわずかに眉をひそめる。
快感の余韻と、すべてがばれてしまう恐怖に、背筋がぞくりと震える。

「はい、これで大丈夫です。川村先輩、辛いことさせてごめんなさい。
 それじゃ、もう服着てもらってもいいですから。
 店長に見られないあっちで着替えましょう」

鈴音が立ち上がり、女の子の服を手に取ると、
事務室の奥にある更衣スペースへと導いていく。

「そうだ……店長、掃除忘れないでくださいね。
 それと、あとで伝えたいこともありますから。
 ああ、安心してくださいね、良いニュースですから」

なに食わぬ様子で言って、鈴音は女の子を連れて行った。
机の下をのぞき込むと、大量の精液がこぼれていた。
まるで数年ぶりに射精したみたいな有様だった。

机の下の匂いに、自分がしたこと、してしまったことの
異常さをあらためて感じる。
なんで……こんなこと……あぁ………。
僕は……おかしく…なってる………。

自分が壊れていくような感じがする。
怖くてたまらない。

なのに…なのに……口元がにやけてしまう。
さっきの鈴音の言葉が、頭の中で反響する。
良いニュース……それってなんだろう。
今日のこれよりもっと……気持ちいいのかな……。

立ち上がると、女の子が泣きこぼした涙が見えた。
涙に触れると、指先にくっついていた精液が白く流れ込み、
やがて……ただの汚く濁った液体になった。

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