まどろみスープ

「はい、お待たせー」

ふんわりと笑いながら、先輩が手料理をテーブルに並べていく。
ホワイトソースのかかった白身魚に、ガラスの器に盛られたサラダ、
それからクリーム色したポタージュスープ。

「じゃあ、いただきます」

手を合わせてから、僕らは夕食を食べはじめる。
料理はどれもすごく美味しかった。とくにスープが好みだった。
そのことを告げると、先輩は少し照れくさそうにはにかむ。

「気に入ってくれたんだ……ふふ、よかった」

その笑顔を見ていると、こっちまで幸せな気分になる。
こんなに幸せでいいのかな、なんて思ってしまうほど。
大学に入ってまもなく、年上の素敵な先輩に告白されて。
彼女の部屋で、あったかい夕食を二人で囲んで。
そしてもしかしたら、このあと…………。

視線が無意識に先輩の身体に伸びる。
白くてほそい指が、フォークを握ってる。
長い髪の毛の隙間から、形の良い鎖骨が見える。
唇についたホワイトソースが、舌でゆっくり舐め取られる。
スープをすくおうとして、服の胸元から谷間がのぞく。
性格も口調もしとやかな先輩なのに、
なぜかその身体だけは妙になまめかしく見える。

「ん……ぼーっとして、どうしたの?」

「あ……。えと……おいしいなって、味わってたんです」

下手な良い訳だったけれど、先輩はそれ以上追及しなかった。
しばらくは食事をしながら、他愛のない会話に花が咲いた。
友達のこと、家族のこと、好きな本や音楽、子供の頃の思い出。

だけど、だんだんと僕の口数が減っていく。
なぜだか……すごく眠くなってきたから。
食事が終わる頃には、まぶたが重いと感じられるほどだった。

「ね……大丈夫? すごく眠そうだよ。
 ちょっと横になった方がいいんじゃない?」

平気です、と口では言ったものの、いまにも眠ってしまいそうだった。
頭がふらついてしまうのが分かる。
食器を片づけようとして、スプーンを床に落としてしまう。
見かねたのか、先輩が僕の手をとってベッドに連れていく。

「ほら……少し眠った方がいいよ。
 私のことは気にしなくていいから……ね?
 あとで元気になったら、いっぱい楽しいことできるから」

ほとんど先輩のなすがまま、彼女のベッドに横になる。
枕に頭を乗せると、かすかに花のような香りがする。
身体に布団がかけられると、その芳香がつよくなる。
先輩の匂い……女の人特有のどこかやらしい匂いに、
肩からつま先まですっぽり覆われる。
ぬるま湯に身体を浸すみたいに、
心地よさがじんわりと手足の先まで伝わってくる。
そのまま…………僕は眠りに落ちた。
 
 
 
     * * *
 
 
 
夢を見ていた。
頭のどこかが、これは夢だ、とはっきり知っていた。

壁も天井も真っ白な部屋だった。
何メートルもある大きなベッドに白いシーツがかかってる。
その上で、二人とも裸で抱き合っていた。

まだ見たことのないはずの先輩の裸体が、
夢の中でははっきりと描かれていた。
肩から胸にかけての大きくなめらかな曲線。
真っ白い乳房の先端にある乳首。
触りたくてたまらなくなる形の良いお尻。

先輩が身体をもぞもぞと動かす。
ペニスに十本の指が絡みついてくる。
竿の表面を、いくつもの指の腹が撫で回す。
陰嚢のしわまで、ひとつひとつ引き伸ばされる。
夢だと気づいたときから、すでにペニスは張り詰めてる。

「ね……出したい?」

耳の穴に唇を押しつけられたまま囁かれる。
僕は馬鹿みたいに、こくこくとうなずく。
彼女がくすりと笑ったのが、耳穴にかかる吐息でわかる。

「いっぱい……してあげるね」

右手の指が輪っかを作って、竿を上下にしごきはじめる。
わざと指をカリ首に引っかけるようにしながら、
なめらかな手つきで何度もこすり上げられる。

尿道をカウパーがとろとろと流れるのが分かる。
あっというまに先輩の指までぬるぬるの液体にまみれる。
彼女が手を動かすたびに、腕のあいだから乳首が見え隠れする。
そこから目が離せなくなる。
彼女を視姦しながら同時に犯されているような、
そんな奇妙な感覚に陥ってしまう。

「ふふ……すごくひくひくしてる。
 出ちゃいそうになったら、出るって言わなきゃだめだからね?」

本当はいますぐにでも、出てしまいそうだった。
ペニスの根元で精液がぐつぐつと煮えたぎってるような気がする。
先輩の手のなかに思いきりぶちまけてしまいたい。
だけどこの夢が終わるのが惜しくて、必死に射精をこらえる。

「せっかくだから……これもしてあげる」

先輩の舌が伸びて、鈴口の隙間をれろり…と舐める。

「………ぁ……っ…」

不意の刺激で達しそうになり、思わず唇を噛む。
もう少し、もう少しだけ、このいやらしい女の人と遊んでいたい。
もうちょっとだけでいいから……。

僕が我慢しているのを見て、先輩が妖艶に微笑む。
それからまた舌が絡み付いてくる。
亀頭の表面だけが、丹念にゆっくりと舐めまわされる。
カウパーがどくどくと溢れてきて、先輩の唾液にまざる。
だらだらと竿から流れ落ちるその混合物を、
十本の指がまたペニスになすりつけていく。

「じゃあ、そろそろ……出しちゃおうね」

あたたかくぬめった舌が、裏筋をべろり…と大きく舐め上げる。
舌のざらついた感触に、背筋がぞくぞくと震える。
まるで性器の中の神経を直接舐め回されるような感覚。
熟した果実が裂けるみたいに、射精感がじゅぱっ…と破裂する。

「……ぁ…………で…る……っ……!」

先輩が嬉しそうに目を細める。
手と舌がペニスのいたるところを、さわさわとかき回す。
精液が根元から一気に駆け上がってくる。

……びゅぶっ……!……じゅちゅっ……ずびゅっ……!

あとからあとから精液が噴き出してくる。
舌がまるで催促するみたいに裏筋を何度もなぞる。
そのたびにペニスが脈打ち、精を吐き出していく。
いくら出しても止まらない。
何回も、何十回も、果てしなく射精が続いていく…………。
 
 
 
     * * *
 
 
 
下半身の生ぬるい感触で目が覚めた。
確認するまでもなく、自分が夢精してしまったのだと悟っていた。
夢の内容もはっきりと覚えていた。
先輩を性の対象としか見ていないような低劣な夢。
そんな夢を見て……先輩の布団のなかで射精した。

(…………最低だ……)

だけど、自分に反吐が出そうになる気持ちも長くは続かなかった。
それよりも、今は夢精の後始末をしないといけない。

精液は下着の隙間からこぼれ落ち、ズボンに染みを作り、
さらには……シーツまでを汚していた。
シーツと布団の隙間からは、濃い精液の匂いが漂ってくる。
枕にまで、汚らしいよだれがこびりついていた。

(……どうしよう…)

部屋の明かりはついたままだったけれど、先輩の姿はなかった。
時計を見ると、まだ一時間ほどしか経っていない。
どこかに出かけてるんだろうか。
だとしたら、いまのうちになんとかしないと。

そっと布団を剥ぎ取り、足を床に下ろす。
ベルトを外して、ズボンと下着を脱いで。

(…………あ…れ……)

こめかみが痛んだかと思うと、立ちくらみのように意識がかすんだ。
一瞬視界がブラックアウトして、気づいたら床に尻餅をついていた。
ベッドに上半身を預けたまま、痛みに耐える。
ほどなくして痛みは消えた。
だけどかわりに……どうしようもなく眠くなる。

いましがたまで眠っていたはずなのに……どうしてだろう。
このままなにも考えずに眠り込んでしまいたい。
身体が熱っぽいような気もする。風邪を引いたんだろうか。
そういえば手足もなんだかすごくだるくて…………。
 
 
 
「……くん、大丈夫?」

先輩の声で、意識が再び浮上する。
ほんの少し……たぶん一分か二分ほど、気を失っていたのだと直感する。
下半身を丸出しにしたままの僕を、先輩が気遣わしげに見ていた。

なんとか言い訳しないと……と、とっさに思った。
だけどそれ以上に身体が重くて、結局なにも言えなかった。
眠気はまだ続いていて、いまもまだ夢の中にいるような感じがする。

「こんな格好で、どうした…の……」

脱ぎ捨てられた僕の衣服にこびりついた精液と、
シーツの汚れを見て先輩の声が途切れていく。

もう……終わりだ。
軽蔑されて、嫌われて、捨てられる。
そう思った。でも。

「そっか……夢精しちゃったんだ?」

先輩はやわらかい表情に戻って、
なんでもないことのようにそう言った。
嫌悪を押し隠しているようには見えなかった。

「男の子だもんね、そういうこともあるよね。
 私のベッドで寝るのが気持ちよくて、
 ちょっとだけやらしい夢を見ちゃったんだよね。
 いいんだよ、気にしなくて。たんなる生理現象なんだから。
 それより……」

傍らにあったティッシュを数枚抜き取って、
先輩が僕の股間に手を伸ばしてくる。
陰毛にこびりついた精液が拭われていく……。

「ここを濡らしたままだと、風邪引いちゃうよ?
 だから、ちゃんと綺麗にしておこうね……」

今度はペニスに先輩の手が伸びてくる。
薄いティッシュ越しに、指がペニスをさする。
夢の中でされていたことを思い出してしまう。
この指を……僕は…汚して………。

「………ぅ…」

いけないと思っているのに、性器に血が流れ込んでいく。
みるみる固くなって、濡れたティッシュを引き裂いていく。

「あ………えっちな気持ちになっちゃった?」

「ご……ごめんなさっ……」

「謝らなくていいの。 だってしょうがないもんね。
 男の子はいつだって、射精したい生き物だもんね」

先輩の口から、平然と射精という言葉が出ることに
違和感……というよりも、底冷えのする恐怖を感じてしまう。
どうしてこの人は、なんでもない顔でペニスを拭けるんだろう。
射精するのが当たり前なんて、どうして思えるんだろう……。

だけど、そんな疑問も長くは続かなかった。
先輩の指が本格的にペニスを弄びはじめる。
拭く、という動作から、くちゅくちゅとこね回すような動きに変わる。
精液を吸ったティッシュ越しに、亀頭が手のひらで揉まれる。

「このまま……出しちゃおうね。
 おちんちん、大きいままだと気になって眠れないでしょ?
 だから……ほら」

親指の腹が、竿の根元からぐぐっ…と上に向かって動く。
途端に鈴口からカウパーが溢れてくる。
ティッシュのもろい繊維が破けて、先端が丸見えになる。
露出した尿道口を、白い指がふにふにと押し撫でる。

「………ぁ……っ……」

「ん……出ちゃいそう?
 いいんだよ……男の子なんだから。
 やらしいことされたら、我慢できないんだよね。
 いっぱい射精したくてたまらないんだよね。
 えっちなお姉さんの虜になっちゃうんだよね」

まるで暗示でもかけようとするように、
先輩が優しく甘い言葉を囁きつづける。
そのあいだもペニスをしごく手は止まらない。
僕の足のあいだに上半身をうずめて、
上目づかいいのままで先輩が微笑む。

「わかるよ……もうすぐ出ちゃうんだって。
 じゃあ、精液びゅーってする準備しようね。
 どこに出すかも、ちゃんと決めておこうね」

先輩は右手でペニスをこねまわしながら、
左手で服の胸元を引っ張ってみせる。
くっきりとした谷間が露わになる。
そこから目が離せなくなる。

「ふふ……ここに出していいよ。
 おっぱいのあいだにたっぷり…ね。
 白いねばねばしたの、
 いっぱいかけちゃっていいんだよ」

先輩が身体をぐっと寄せて、
ペニスに触れる寸前まで谷間を近づけてくる。
人差し指が裏筋を円を描くように弄ぶ。
腰の奥で、熱い塊が溶け出していく。

「……ぁ………あ………ぁぁ…っ……!」

絶頂の瞬間、ペニスがひときわ大きく跳ねた。
先端が乳房の隙間に触れて……そのまま射精する。

……びゅるっ……びゅ……ぶびゅ…っ……!

後から後から精液が噴き出す。
先輩の谷間も服も、さらには頬の一部までが
飛び散った精液で白く汚れていく。
裸を見たことさえない彼女の肌を、
自分の体液がべとべとに汚してる。
そう考えるだけで、何度でもペニスが震える……。
 
 
 
「……ふふ、いっぱい出たね。
 あ、先に言っておくけど謝らなくていいからね。
 私は少しも気にしてないから」

先回りしてそう言われると、謝罪も弁解もできなかった。
でも、先輩は本当に気にしていないようだった。
というより……幸せそうにさえ見えた。
だけど、全部僕の都合の良い思い込みかもしれない。

性欲は落ち着いたけれど、
頭にもやがかったような眠気と疲労感は消えてない。
むしろ射精したことで、かえって強くなってる。
このまま床に倒れこんでしまいたい。

「……まだ眠い?
 風邪かもしれないから、安静にしてないと。
 もう少し寝ておいた方がいいよ?」

肩を貸してもらって、ベッドの端に腰かける。
先輩はシーツについた精液の汚れを拭きとって、
それからタンスから淡いピンクのパジャマを取り出す。

「さ……服も着替えちゃおうね」

着替えるように促されて、半ば操り人形のように
先輩のパジャマに足を通していく。
下着を履いていないから、つるつるとした生地がペニスにこすれる。
そのむず痒いような感触にまた興奮しそうになるけれど、
でも、いまはそれ以上に眠かった。
汗をかいているから、という理由で上半身も着替えさせられる。
全身が先輩の匂いに包まれる。

少しでも栄養をつけた方がいいから、と言われて
食事の残りのスープを何さじか飲む。
それからまたベッドに潜り込む。
先輩の枕に頬を乗せて、先輩のシーツと布団に身体を挟まれて。
先輩のパジャマに腕も足もどこもかしこも包まれて。
自分が精液になって先輩の肌に広がっていくような、
そんな感覚のまま、すうっと夢へと沈んでいった…………。
 
 
 
     * * *
 
 
 
夢のなかで、また先輩と淫らな行為に耽る。

彼女の乳房にペニスを押しつけ、
そのやわらかい弾力を感じながらだらしなく精をこぼす。
寝そべった僕の上で、先輩が優しく笑いながら腰を動かす。
そのたびにあたたかくぬるんだ膣が精液を搾り取る。

彼女の長い髪の毛のなかにペニスを差し込み、
さらさらとした毛髪がこすれる感触のなかで射精する。
四つんばいになった彼女の背後から、
思いきり性器を突き入れて激しく腰を振る。

何度も何度も、先輩の身体に精液をぶちまけた。
現実でも射精してしまっているだろうということは、
夢の中でもなんとなく知っていた。
だけど、やめようとは思えなかった。
こんな気持ちいいこと、やめられるわけがなかった。
いつしか僕は下卑た笑みを浮かべ、
何度も何度も先輩の身体を汚しつづけた。
 
 
 
     * * *
 
 
 
薄暗い部屋のなかに、意識が戻ってくる。
いつのまにか部屋の照明は消えていて、
カーテンの隙間から月明かりが差し込んでる。
先輩の姿は見えなかった。

「ん……起きちゃった?」

突然に耳元で声がして、心臓が大きく跳ねる。
先輩が僕の背後から横向きに抱きついていた。
それだけじゃない。
彼女の手が僕の寝巻きに入り込み、
指がペニスに絡みついていた。

「どんな夢を見てたか、覚えてる?
 きっとね、とってもやらしい夢だったんだよ。
 だってほら、いっぱいびゅーってしてたから」

ペニスの先端をくちゅっ…と小さくこねてから、
先輩の指が布団の外に引き上げられる。
指のあいだも、手のひらも、手の甲も、
どこもかしこも白く粘ついた液体にまみれていた。

「すごいどろどろだね……ふふ。
 私のパジャマも、臭いが落ちないぐらいに精液まみれ」

表情は見えないけれど、先輩の声には愉悦があった。
暗く歪んだ喜びに満ちた声だった。

おかしい。
なにかが……なにもかもが、おかしい。
僕はまだ夢を見てるんだろうか。
先輩がこんなことするはずがない。

それに、何回でも射精できてしまうのも変だ。
眠気と脱力感もひどすぎる。
いまだって、先輩に抱きつかれてるだけなのに、
振り払う力さえ湧いてこない。
こんなの……まるで……。

「なに考えてるか分かるよ。
 じゃあ、そろそろ種明かしをしちゃおうか」

僕の身体が、ごろんと先輩の方に向けられる。
そこではじめて、先輩が服を着ていないことに気づく。
黒いブラとショーツだけはつけていたけれど、
あとは真っ白な肌を月明かりに晒していた。

「私はね、あなたにちょっとした薬を盛ったの。
 ぐっすり眠れるお薬と、ここが元気になるお薬」

嬉しそうに目を細めながら、先輩の指が亀頭を撫でる。
あれだけ出したのに、ペニスはまた勃起していた。
竿の根元が筋肉痛のようにひりひり痛む。
だけど、少しも萎える気配がない。

「すごい固いね……また出したいんだ?」

彼女の言うとおりだった。出したくてたまらない。
だけど、出したらいけない、と頭のどこかが警告してる。
取り返しがつかないことになる、と。

「我慢せずに、出しちゃおう?
 そうしたらね……あなたはもっと眠くなる。
 眠くて眠くて、立つことも歩くこともできなくなる。
 私に射精させてもらうほかは、なぁんにもできなくなる。
 それで、いつかどこかで……永遠に眠っちゃうの」

「…………う…そ……だ……」

「嘘じゃないよ?
 そうやって、あなたは私の恋人のまま一生を終えるの。
 誰にも奪われない、私の永遠の恋人になるの」

先輩の声はとても落ち着いていた。
だからこそ、冷静な狂気を感じる。
疲労感がひどくて、声を出すことすら辛い。
それでも必死に、拒絶の意思を示す。

「………や…だ………」

「だぁめ。嫌だなんて口でも言っても、信じてあげない。
 だって……男の子は射精できるなら、なんでもいいんだから。
 愛してるなんて口先だけの言葉、
 なんの価値もないんだって、私は知ってるんだから」

それから先輩は少しだけ過去を語った。
自分が好きだった恋人が、他の女性に寝取られて。
その様子を全部聞かされて。
そして男性は性欲に抗えない猿だと気づいた。
そんな話だった。

「私はあなたを気持ちよくしてあげる。
 でもね……どんなに快楽をあげても、
 私が目を離したらあなたはきっと別の女も抱きたがる。
 だから、どこにも逃げられないようにするの。
 永遠に私だけの恋人になれるように……ね?」

先輩が脚を持ち上げて、股のあいだにペニスを挟み込む。
弾力のある肉がペニスをみっちりと押し包む。
ショーツのレースが、カリ首をざらりとこする。

「さ……身体の力を抜いて、もっと楽にして。
 我慢なんてせずに、だらだらってよだれを垂らすみたいに、
 みっともなくいっぱい射精しちゃおう?
 眠かったら、寝ちゃってもいいよ。
 夢の中でもたっぷり精液出させてあげるから……」

先輩の指が、僕のパジャマのボタンを外していく。
それから胸板に、彼女の乳房が押しつけられる。
ブラからおっぱいがこぼれて、乳首がこすりつけられる。
ペニスがびくびくと震える。

「えへへ………キスしちゃお……」

唇があたたかな感触に塞がれる。
彼女の舌がするすると入り込んできて、
僕の舌の表面を優しくなぞる。

「………んっ…………」

まるで舌の動きに合わせるようにして、
先輩の指が、太もものあいだから突き出た鈴口をなぞる。
よだれとカウパーが大量に溢れ出す。

長い睫毛が僕の顔をくすぐる。
舌が口内をれろり…と大きく舐めまわす。
指が亀頭の表面をつつっ…と円を描くように撫でる。

だんだん息が苦しくなってくる。
だけど、手足が重くて思うように動かない。
意識もまどろんでいて、まだ夢を見てる気がする。
それなのに性器の感覚だけが強烈にある。

「……んふ…っ………出したくなってきた?」

唇を離して、先輩が淫靡な笑みを浮かべる。
唾液がこぼれて、ぽたり、ぽたり…と僕の頬に落ちて、
ゆっくりとあごを伝い落ちていく。
それと一緒に、精液が尿道口をじわりと上ってくる。

出したらいけないと、頭では分かってる。
出せば出すほど、疲れて動けなくなる。逃げられなくなる。
なのに、身体は先輩を求めてしまう。
やらしい肉に密着しようと、疲弊した身体が必死に反り返る。
柔らかい乳房が変形していく感触。
ぬるぬるの液にまみれた太ももに性器が揉まれる感覚。
それから射精感が膨れ上がって。

……じゅぶっ…!……ずびゅっ……びゅぶっ……!

先輩の両脚のあいだで、精液が勢いよく吐き出される。
ペニスが律動するたびに、太ももとショーツにこすれて、
その刺激でまたどぷどぷと精液が送り出される。
真っ白い快感が頭の中で弾けて、かわりに意識が遠くなる。

「ふふっ……出しちゃったね。
 このまま死んじゃうかもしれないってわかってるのに、
 やっぱり射精しちゃうんだね。
 しょうがないよね……男の子なんだから」

先輩がふんわりと笑って、僕の髪の毛を指でかき回す。

「……かす……み………さ…ん……」

最後に彼女の名前を呼んだ。
でも、そこから先はなにも言えなかった。
彼女に言うべき言葉が見つかるより早く、
睡魔が僕の意識をさらっていく………。
 
 
 
     * * *
 
 
 
それから数日が経った。
僕は……本当になにもできなくなった。

先輩に手伝ってもらわなければ、トイレに行くことすらできない。
食事はときおりスープを飲むだけ。
二度寝してしまう瞬間のような強烈な眠気が常につきまとう。
その眠気が消えるのは、わずかに射精の瞬間だけ。
そのあとで、きまって泥のように深い眠りがやってくる。

そのうち……目覚めることすらなくなるだろう。
先輩はそのことを知っていて、
僕がいなくなっても不審がられないように手続きをとっていた。
大学には休学申請の書類を送ったらしい。
友達には「田舎に帰ることになった」と僕の携帯からメールを送った。
実家の両親には、元気にしてる、というメールを定期的にしてる。

誰にも怪しまれないままに、僕はいなくなる。
先輩の思い出のなかだけの恋人になる。
そんなの嫌だった。怖かった。死にたくなかった。

なのに……なのに僕は今日も先輩の身体を汚す。
指で少し弄ばれただけで、たやすく精をこぼしてしまう。
そんな僕を見て、先輩がまた微笑む。

「ふふ……愛してるよ。
 どうしようもないあなたを……私だけが愛してあげる。
 だから……永遠に私のものになってね」

それでいいのかもしれないと思う。
それで仕方ないのかもしれない。
だって。

「だって……あなたは最低の生き物なんだから」

END