花火の下で(後編)

今日二度目の射精の後も、ゆっくりと快楽の名残に浸っているわけにはいかなかった。
ひとつには、花火が打ちあがり始めたことで、辺りが一斉に賑やかになったから。
それからもうひとつ、女の子が僕の手を引いてきたからだった。

「え……どこいくの」

「どこって、花火大会ですよ?
 花火見なくてどうするんですか」

さも当然といった調子で、彼女はすたすたと橋の外に向かって歩いていく。
僕は慌ててペニスをしまい、半ば誘導されるように彼女についていく。

辺りは明るかった。
花火大会はまさに始まったばかりで、夜空には色とりどりの花が咲いている。
まばらながら人影もあるが、みんな空を見上げていて、
橋の下から出てきた僕たちのことを気にとめている人はいないようだった。

「ほら、上見てみてください。綺麗ですね」
「うん……そうだね。今年はとくに豪華な打ち上げだって聞いたけど」
「ああ、花火のことじゃなくて」

その言葉の意味がわからなかった僕に、女の子は満足そうに微笑んだ。

「お兄さんの彼女さんのこと、ですよ。……ほらあそこ」

少女が指差す先に、涼子がいた。
僕たちのほぼ真上で、欄干にもたれかかったまま夜空を見上げていた。
暗さと距離があいまって、その表情までは分からない。
でも、それはたしかに僕の恋人の涼子だった。

「思い出しました?
 自分が気持ちいいことしてもらっているあいだ、
 ずっと美人な彼女さんを放りっぱなしだったこと」

後ろめたさの棘が、ちくちくと僕の胸を刺した。
でも、それは恐れていたほどの痛みじゃなかった。
睡魔に負ける寸前のような、仕方ないじゃないかというような、
甘い諦めにも似た気持ちがあった。

「お兄さん、今からでも彼女さんのところに行きますか?
 行ってもいいですよ。どうします?」

「………………もう、いいよ」

「もういいってことは……恋人を捨てるんですか?
 そんなことより、私に気持ちよくさせてもらう方が大事ですか?」

その質問にうなずくことを少女は望んでいる、そう思った。

「そう……そうだよ。
 僕は、君にもっと気持ちよくしてもらいたい。
 涼子より、君の方が」

「そういうのってつまらない、と思いませんか?」

少女の真意がわからず、またしても僕は眉根を寄せる。
すると……彼女は僕に抱きついてきた。

当惑する僕に、女の子は囁くように言う。

「ここで彼女さんを捨てて、私たち二人で仲良くなってどこかに行って、
 ずーっとイチャイチャして、気が向いたらエッチなことして。
 幸せな生活、みたいですよね」

「それじゃ、だめなの?
 僕のことが……嫌い、とか?」

「ううん、好きですよ。
 変態で、惨めで、自分に甘えてばかりなお兄さんは好き。
 自分の意志を貫けなくて、打ちひしがれるお兄さんは好き。
 ……でも、私と恋人同士になって、私に甘えきって、
 安心して快楽を貪ってるような人は嫌いなんです」

次々と打ち上げられる花火に会わせるように、少女は喋る。
ひどく歪んだことを喋っているのに、でも言葉に陰鬱さはない。
愉悦に満ちた響きだけがある。

「よくわかりませんか? でもいいですよ。
 お兄さんがしなければいけないことは、私がちゃんと教えてあげます。
 ……お兄さんはね、いまから私とまた気持ちの良いことするんです。
 でも、彼女さんと別れちゃダメ。今も、これからも。
 ずーっと彼女さんを裏切りつづけながら、私から精液を搾られてください」

背徳的、という言葉が瞬間的に浮かんだ。
でも、それさえなにか違う気がした。
それならどう言えばいいのか、を考えるより早く、少女の指が僕の股間に伸びてきた。

「さ、じゃあ今からもう一回。
 彼女さんを見ながら、気持ちよくしてあげます」

女の子の手は素早く動き、再びジッパーを下ろしていく。

「ちょっと待って…! こんなところじゃ」

近くに涼子がいるのはもちろんのこと、まばらとはいえ周囲には人もいる。
そんななか、性器を露出するわけにはいかなかった。

「大丈夫、ですよ」

少女はさらに身体を密着させてくると、浴衣を少しだけめくり上げた。
そしてそのままペニスを取り出し、太ももに挟み込んだ。

「これなら、周囲からは抱き合ってるようにしか見えませんよ。
 とはいえ、さすがにまだ小さいですね。
 でも……うん、大きくなってきましたね」

今日はすでに二回も出しているというのに、僕のペニスはすぐに硬くなってゆく。

ふにふにとした内ももの柔らかさと、僕の身体にかかる彼女の吐息。
それから浴衣ごしでも伝わってくる、わずかに膨らんだ胸の感触。
そんなものが一体となって、一気に僕の情欲を駆り立てる。

「さ、また喘がせてあげますよ」

言うなり、少女は左右の腿をわずかずつ動かし、僕の肉棒を内ももで擦る。
太ももの動きにあわせて、ペニスの皮が左右に伸び縮みし、
亀頭の左右に何度も摩擦刺激が走る。
自分でするオナニーとまるで違って、
カリの上下ではなく左右から快感が伝わってきて、その異常な感覚に僕は身悶えする。

「ん……んんっ…」

「ふふっ、まだまだ我慢してる声ですね。
 いいですよ。我慢してる顔、ステキです」

そのセリフとは裏腹に、彼女はさらに刺激の種類を変えてきた。
今度は太ももを内側に向けて強く押し付けてくる。
むにっとした感触がペニスの周りにまとわりつく。

「まるで挿入してるみたいだって、想像してません?」

そんな想像をする余裕なんてなかった。
でも、少女に言われてしまうと途端にそれがはっきりしたイメージになる。
年下の女の子の浴衣をはだけさせ、強引に犯している、
そんな淫靡な空想が湧き上がる。

「あれれ、ペニス硬くなりましたよ。
 やっぱり想像しちゃったんですよね……私を犯してるとこ」

じわり、とカウパーがペニスの先から染み出してくるのが感じられる。
少女の太ももで搾り出されるみたいに、腰の中からぬるぬるとした液体が
どんどんと送り出されてゆく。

「あ、この感触……先走り、漏らしちゃいました?
 早漏なお兄さんですね、ホント。
 女の子を犯してる想像しながら、なのにじつは逆にペニスを挟まれてるくせに。
 ……それもこぉんなに人がいっぱいいるのに」

女の子が視線を動かした先に、二、三組のカップルの姿があった。
はっきりとは分からないけれど、彼らは僕らの行為に気づいているように思えた。

「やっぱり……まず、い…よ」

「なにがまずいんですか?」

とぼけた調子で言いながら、少女は右腿だけを
まるで自転車のペダルでも漕ぐみたいにくるくると動かす。
円を描くその不思議な刺激とともに、カウパーが女の子の足にこすりつけられ、
その粘液がまた僕の肉棒に絡みつく。

二人の下半身から響く、ぬちゃぬちゃとした小さな音が理性を溶かしていく。
ペニスはすっかりカウパーでべとべとになっていて、だからちょっとしたことでも
ペニスがぬるりと太ももの間から抜けそうになる。
そうならないよう、気がつけば僕は彼女の身体を抱いて、肉棒を思い切り押し付けていた。

「こんな風に私をつかまえといて、まずいも何もありませんよ。
 言い訳なんて、もうできません……もう誰にも。
 ねえ……彼女さん、気がついてますかね?」

僕は女の子の肩を抱いたまま、はっとして橋の上を見上げた。
涼子はまだそこにいた。
でも幸い、視線はまだ上を向いて花火を見つめている。

「次に花火が止んだら……うつむいちゃうかもしれませんね。
 そしたら、気がつかれちゃうかも」

「だめ……だめだよ。
 僕は彼女と別れたっていい。でも、こんな形じゃ」

「こんな形じゃ嫌ですか?
 自分が恋人を裏切ってエッチしまくる変態だって知られて終わりなんて
 そんなのは嫌ですか?
 ……いいですよ、その怯えた顔。わがままで自分勝手な顔。
 その表情のまま、だらしなく射精させてあげます」

それに反論をする間もなく、女の子の身体が僕にいっそう押し付けられる。
それから彼女は両腕を背後に回すと、両脚のあいだを……太ももの隙間から
顔を出していた亀頭を、浴衣の上からそうっとなぞった。

「…………んぅっ…!」

びくっ、と電流の走るような快感が背筋をつらぬく。
やわらかでとろけきった肉に包まれていたからだろう、
浴衣の布のようなかすかにざらついた感触さえ、いまは強烈な刺激だった。
しかも少女は器用に、包皮のなかからのぞいた亀頭表面だけを
丁寧に何度も何度も布で愛撫してくる。

その摩擦に必死に耐えていたときに、不意にカリの下側をそっと浴衣で擦られた。
ごく小さな快感の火種だったのに、それは一瞬で絶頂感まで達した。

「…ひっ………あ…あぁぅっ……!」

射精する、という意識さえないままに僕は精を漏らしていた。
突然すぎるその射精には恐怖すら感じて、僕は小さく悲鳴まで上げた。

ぴゅぴゅっ、とペニスの先端から精液が噴き出す。
溜まっていた欲望を吐き出すというよりは、水面に飛沫が上がるような
ごく小さな射精だった。

「ん? ……お兄さん、もう漏らしちゃったんですか?
 いくらなんでも早すぎますよ」

かといって失望する様子を見せるでもなく、
少女は精を漏らしたペニスをさらに丹念にこすってくる。
愛撫というよりは、なぶる、という表現のほうがもはや近かった。

「………ん……ひ、ぃっ………や…やめて」

本格的な射精でなかったせいで、僕のペニスはまだしっかりと硬さを保っていた。
けれど同時に、射精直後のくすぐったく耐えがたい敏感さが残っている。
その状態で責められるのは、拷問にさえ感じられた。

脳を直接に紙やすりで擦られるような激しい快感に思わず目を閉じる。
周りにどう見られているのか、涼子はまだ気づいていないのか、
そうした不安は片隅にまだ残っていたけれど、
それよりなにより声を出さないこと、膝から崩れ落ちないこと、に必死だった。

やがてペニスの感度が次第に下がり、一緒に浴衣の布地にも精液とカウパーが染み込み、
徐々に摩擦に耐える余裕が出てくる。

恐る恐る目を開けてみると、ちょうど夜空に見事なナイアガラの滝の花火があった。
花火大会は豪勢な仕掛け花火の乱発に入ったようで、周囲の視線も僕らからは外れていた。

「ほっとする暇、ないと思いますよ?」

その声とともに、女の子はペニスの先をいじるのをやめた。
かわりに、僕のTシャツの裾に右手を滑り込ませると、乳首に触れてきた。

「………ふぁっ」

女性に乳首を触られるのなんてもちろんはじめての体験だった。
それどころか、乳首なんてほとんど自分でいじったことさえなかった。
他人に乳首を撫でられるだけでこんなに気持ちいいなんて、想像もできなかった。

「ほぅら、乳首って触ると気持ちいいですよね? 知りませんでした?
 じゃあ、よかったですね。私に教えてもらえて。
 年下の女の子に乳首つままれて、みっともない声上げさせてもらえて
 よかったですね、お兄さん」

鈴を転がしたような可愛い声を出しながら、少女は僕の乳首を撫で回す。
指の腹で優しく、あるいはときに爪を軽く立てながら、乳首を責めてくる。

そうやって楽しそうに僕を弄んでいた少女が、
急に「あは」と嬌声を上げた。

「お兄さん、いま、彼女さんがこっち見てますよ」

「……!」

僕の身体がぞくりと震えた。
それはもう恍惚と背徳と恐怖がないまぜになっていて、
自分でもどれが一番強い気持ちなのかわからなくなっていた。

「いいですか、顔上げちゃだめですよ。
 顔上げたら、お兄さんが誰かってきっとバレちゃいます」

そうやって釘を刺す一方で、少女自身はとにかく嬉しそうに喋りつづける。

「あはっ……見てます、見てます。
 抱き合ってる私たちのこと、じーっと見てますよ。
 こんなはしたないことしてる、私たちのことを」

女の子は僕の乳首を触りながら、さらに彼女自身の胸を押しつけてくる。
決して大きくはないが、それでも確かな膨らみをもった柔らかさが、
僕のお腹にぎゅむっと当たる。

「お兄さんのアソコ、ピクピクが止まらないですね。
 彼女さんに見られてるの意識してるから?
 それとも、女の子のおっぱいの感触がはじめてだから?」

僕がうつむいたまま何も答えないでいると、少女は楽しげな声をあげた。

「いいこと思いついた。
 お兄さん、彼女さんとの馴れ初め、教えてくださいよ」

「……え?」

「どうやって知り合ったのか、恋人になったのか」

女の子はくっつけていた胸を離して、同時に両脚の力も抜いてしまう。
肉棒を締めつけていた圧迫感も弱くなり、快楽がぴたりと止まる。

「言ってくれないと、続き、してあげませんから」

女の子はさらに両脚の力を抜いていき、
いまにもペニスが彼女の肌から離れそうになる。

「僕らは、その、歯医者の待合室で、知り合って」

逃げてゆく快感を追いかけるようにして僕は喋りだしていた。

「二人とも、土曜日の同じ時間帯に予約してたから、それで、よく会うようになって」
「へえ、そうだったんですか」

少女はにやにや笑いながらも、かすかに足の力を戻してくれる。
温かくぬめった感触のなかに再びペニスが包まれ、僕はかすかに安堵のため息を漏らす。

「で、告白は彼女さんから、だったんですよね、きっと。
 変態お兄さんに、自分から告白する勇気があるとは思えないし。
 ……あ、図星ですね」

女の子の言う通りだった。
涼子と付き合うにあたって、僕が主体的に取った行動なんてほとんどない。
あらためて指摘されると、いかにも惨めだった。
でも、その惨めさを曝け出すことに、なぜだか僕は心地よささえ感じはじめていた。

「それで付き合いはじめてどうなったんですか?
 お兄さんのことだから、まだエッチもさせてもらってないんですよね。
 おっぱいくっつけられたぐらいで、ピクピク震えるぐらいだし」

「……うん」

「ふふ、また彼女さんがこっち見てますよ。じーって見つめてます。
 もしかして、まさか、って心配しはじめてるのかな?
 ……ね、お兄さん、残念でしたね。
 私と会わなければ、なんの罪悪感もなく、彼女さんと付き合っていけたのに。
 きっとそのうち、あのおっきいおっぱい揉ませてもらえたり、
 上手くいけばお口で咥えてもらえたり、
 それからトロトロのアソコに入れさせてもらえたはずなのに」

いままで空想するだけで、まだ一度もしていない涼子とのセックス。
この少女とは違う、成熟した身体を味わいつくす行為。
その快楽を想像して、僕のペニスが少女の足のあいだで律動する。

「きっととんでもなく気持ちいいですよ、彼女さんとのエッチ
 ……でも、もうできない。
 一度、裏切っちゃったから。
 今度エッチしようとしても、お兄さんは私を思い出す。
 私の虜になって、ホントに彼女さんをもう愛せなくなる。
 どうしようもない……最低の人になる」

そして女の子は再び身体中を使って僕に快楽を与え始めた。
右手で僕の乳首をつまみ、左手ではTシャツの上から乳首を触る。
おっぱいを押しつけながら、腰を動かして股間で亀頭をこする。

「ほら、お兄さんのペニス、私のあそこに当たってますよ。
 すべすべのパンツの感触、わかりますか?
 年下の女の子の太ももに挟まれて、パンツでコスコスされてますよ?
 気持ちいいですか?」

僕は快感に喘いで天を仰ぎ……そこで涼子の姿を見てしまった。
視線までは合わさっていない。本当に彼女が僕らを見ているのかはわからない。
でも、僕はたしかに見られていると感じた。
そう意識した途端、絶対に射精しちゃいけない、という決意が突然に生まれた。

「こんなの、よくない」

「うん、よくないですよね」

僕は精一杯の気持ちを込めて言ったのに、少女はさらりと肯定してしまった。
それで拍子抜けしたところに、また股間がこすりつけられる。
彼女のパンツが湿った感触があって、それがカウパーだけじゃない、
きっと愛液も混ざったものだと本能的に感じて、ついペニスが反応する。

「だから、よくないことなんですよ。
 とってもいけないこと、だめなこと。
 ……なのにお兄さんは耐えられない。
 凛々しい顔してみせたって、自分が可愛いだけだから。
 どうせ快楽には抗えない。このままびゅーびゅー射精しちゃう」

「違…う……僕は………」

「なにが違うんですか?
 ほら、いまにもぴゅるぴゅる精液が先っぽから出そうなんですよね?
 女の子のパンツとお股におちんちんこすりつけて、ほら、腰も動いてますよ?
 変態さぁん、なんとか言ってくださいよ。
 僕は射精しない、とか、宣言してみてくださいよ」

「ぼく……は…」

言葉が止まってしまう。
ペニスの周りのぬるぬるの感触が、脳みそまで溶かしてしまったみたいだった。
頭のなかで、熱い煙のようなものが渦を巻いている。
このぐるぐると回るなにかを吐き出してたくてたまらない。

「じゃあ、とどめです」

女の子はペニスを挟んだままで、右足と左足を交差させた。
僕の肉棒にかかる圧迫感が猛烈に強くなり、もう左右から挟まれているというより、
肉壷のなかに包まれているような感覚になる。

「女の子のなかに入れたことのない童貞お兄さん。
 これが、彼女さんのあそこよりもずうっと気持ちいい、お兄さん専用の挿入穴です。
 いくら出し入れしても、いくら中出ししても、ずうっと童貞のままの
 でも最高に気持ちのいいアソコですよ」

ペニスの周りが三百六十度やわももに囲まれ、
ローションのように大量に溢れたカウパーと愛液でぬちゃぬちゃと音を立て、
にゅるにゅるした粘液のなかに閉じ込められる。

「さあ、イッちゃってください。
 太ももに挟まれたまま、恋人さんに見つめられたまま、
 だらしなく出しちゃってください」

足を交差させたまま、少女はリズミカルに両腿に力を入れてくる。
ペニスの根元に精液が溜まるのが感じられ、そして一気に絶頂した。

びゅびゅるっ……! びゅじゅっ…ぶっ……じゅっ…!

少女のきめ細やかな肌の上に精液がぶちまけられていく。
ペニスの感触だけで、その光景が目に浮かぶようにイメージできた。

太ももに圧迫されての射精感は独特だった。
開放感というよりも、一回どくっと精が外に吐き出されるたびに、
さらに強く精が引きずり出されるように二回目の律動が続く。

長い時間をかけて精はすべて吐き出された。
夜空では、色とりどりの花火が一斉に打ちあがり、周囲では歓声が上がっている。
そのなかで、僕は少女にしがみついたまま、いつまでも荒い息をついていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それから三ヶ月が経って、季節はすっかり秋になった。
僕はいまだに涼子と付き合っている。
あの日のことに彼女が気づいていたのかどうか、それは今でもわからない。

代わりに確かなのは、僕があの少女の言うとおりになっている、ということ。

僕は週末になると涼子と決まってデートをする。
涼子はいつもとても楽しそうに笑う。可愛い恋人だ、とそのたび思う。
そのたびに、自分が涼子を裏切っていると自覚する。

デートの終わりは、いつも僕から切り出す。
ホテルに行く雰囲気になることがあっても、僕は必ず断る。
いまだにセックスはしていない。

してはいけない、とあの少女と約束したから。
そしてなによりも、涼子では……いいや、他のどんな女性とのセックスでも
もう自分は射精できないだろう、とわかってしまうから。

デートの後、僕はいつも息を切らせて走る。
少女との待ち合わせ場所に向かって走る。
それから射精をさせてもらうのだ。何回でも、何回でも。

その日の罪悪感をすべて溶かしてもらうまで。

END