一つ屋根の下で(前編)

玄関ドアに鍵を差し込み、小さく回す。
ガチャリ、という金属音がして鍵が開く。

部屋に入り、後ろ手にドアを閉める。
鍵はかけずに、そのままにしておく。
使った合鍵を仕舞ってから、靴を脱ぐ。
それから僕の恋人……涼子の部屋に上がる。
カーペットの上に座り、彼女のベッドに頭を預ける。

この部屋に来るのも、もう随分と慣れてしまった。
年上の彼女が通う大学に合格して、
同じ校舎で学ぶようになってしばらく経つ。
大学近くで下宿している涼子の部屋にも、
しょっちゅう訪れるようになった。

いまでは、合鍵までもらってしまってる。
涼子は僕のことを本当に信頼してくれてる。
そのことがすごく嬉しくて……すごく苦しい……。
だって……僕は…………。
 
 
 
十分ほど経ったところで、ドアが開く音が聞こえた。
それから靴を脱いでいる気配がして。
ひたひたと、しずかな足音とともに彼女がやって来る。

「こんにちは……お兄さん」

なにを言えばいいか分からなくて、
ぼんやりと視線だけを彼女に向ける。
いまだに名前さえ知らない女の子。
僕の心のすべてをさらっていった年下の少女。

今日の彼女は、レースをあしらった白いサマーブラウスに、
かすかにピンクに染まった薄手のスカートを履いていた。
視線が……無意識にその太もも辺りを追ってしまう。
スカートの下からなにか見えないか、探してしまう…。
いけないのに……だめなのに………。

「どこ見てるんですか、お兄さん?
 まったく……挨拶もちゃんとできないんですか?
 それとも、暑さで頭の中まで溶けてしまいましたか?」

彼女が手に提げていたコンビニの袋から、
小さなアイスクリームが取り出される。

「じゃあ、これでも食べて涼しくなりましょうか」

女の子が僕の両足の上に座る。
少女のやわらかい臀部の感触がする。
スカートの裾が、僕の太ももの上にまで広がる。

女の子はカップ型のアイスのふたを開けて、
少し柔らかくなったバニラアイスを指ですくう。
僕の口元に、アイスの塊をのせた指が差し出される。

そのまま……彼女の指を口に含む。
冷たさと、甘さと、女の子のやらしい味がする。
それだけで、もう……。

「また大きくしてるんですか、お兄さん?」

ズボンの股間部分にできた大きな膨らみを、
少女が余った手指でそうっと撫で上げる。
それだけで、身体がびくっと跳ねてしまう。

ひくひく…ひくひくっ…と、ペニスが小刻みに震える。
口の中に湧いてきた唾液を飲み込む。
バニラの味のする唾液が、喉をとろりと流れていく。

「期待、してるんですか?
 今日もまた、なにか気持ちいいことをしてもらえるかもって。
 でも……本当にそんなことをしていいんですか?
 ここは彼女さんの部屋ですよ。
 そこに他の女の子を連れ込んで、やらしいことをするなんて。
 本気でそんなことを望んでいるんですか?」

ほっそりとした指が、僕の唇から引き抜かれる。
唾液の糸が一瞬伸びて、それからぷつりと切れる。

「僕じゃ……ない。
 こんなことしようなんて、僕は……言って…ない」

「また下手な言い訳ですか?
 たしかに、言い出したのはお兄さんじゃなくて私ですね。
 でも、断らなかったのはどこの誰でしたか?
 私の目の前にいる、快楽に流される最低な人でしたよね」

少女がまたアイスクリームを指ですくう。
さっきよりもたくさんのアイスが、指にべっとり付着する。
僕の口の中に、冷たい塊が差し込まれる。

無意識に舌で舐め取ってしまう。甘い味がする。
冷たいバニラの向こうから、少女の指の体温が広がる。
溶けたアイスクリームごと、その華奢な指先を啜る。
女の子の肌が僕の唾液でふやけてゆくことにすら、
奇妙な幸福感を覚えてしまう。

「もう……私の指がそんなに好きですか?
 ああ、でもそうですよね。
 いつもお兄さんの性器を気持ちよくしている指ですからね」

くすっと笑って、女の子が指を引き抜く。
僕の唾液にまみれたそれを自分の口に含んで、
ちゅうっ…と音を立てて啜る。

「それじゃ…今日も気持ちよくしてあげましょうか」

少女の唾液で濡れた人差し指が、
僕の耳の後ろに触れる。
やわらかい指の腹がこすりつけられる。
耳たぶの裏側に、生あたたかい唾液がたまっていく。

やがて、ゆっくりと指が滑り落ちはじめる。
頭蓋骨の形に添うように、頬からあごへかけて
少女の唾液が塗られていく。
それに合わせるように、もう片方の手がジッパーを引き下ろす。
下着の隙間から、固くなったペニスが取り出される。

「くちゅくちゅ…って、してあげますね」

ペニスの裏筋に人差し指が乗せられる。
残る四本の指で竿をそっと押さえ込んだまま、
指の腹で裏筋を上下にさする。

「ほら、こっちも……ですよ」

もう片方の人差し指が、いつのまにかあごの下まで来ていた。
あごの下で、指がくるくると何度も円を描く。
くすぐったさと一緒に、ぞくぞくとした快感が背筋を走る。

「こっちのぬるぬるも……たくさん出てきましたね」

女の子の言うとおり、カウパーが大量にこぼれ出してた。
あっというまにペニスを触る指が粘液にまみれる。
ぬめった指が、さらにくちゅくちゅと裏筋を刺激してくる…っ…。

カリの縁がつつっ…と甘やかなになぞられる。
尿道口に指を当てられ、とんとんと小さく叩かれる。
溢れたカウパーが少女の指と一緒に持ち上げられ、
また性器に当たって、ちゅく…ちゅくっ…と音を立てる。

「ぬるぬる、とってもたくさん出てきますね。
 ね、どうしちゃったんですか?
 我慢しておくための蛇口でも壊れちゃいました?」

にやにやと笑いながら、
女の子がペニスの根元まで指を伸ばしてくる。
そのまま蛇口を閉めるみたいに、
付け根のところを反時計回りにゆっくり撫でる。
う……ぁ……気持ちい…ぃ……。

「あはっ……かえってたくさん出てきてますね。
 ほら、もう垂れていっちゃいますよ?」

カウパーが竿の裏側を流れて、
そのまま陰嚢にまで垂れ落ちてくる。
しわの間に、粘液がゆっくり入り込んできて…。

「そうそう……こっちも触ってあげないと、でしたね」

陰嚢が……不意に指で押し広げられる。
しわば伸ばされて、そこにカウパーを塗り込められる。
女の子のほそい指のあいだで玉が転がされる。
その感触だけで、腰の奥が収縮する。
尿道口から、たらり…と透明な液体がまたこぼれ出す。

「ほんとうに……だめなお兄さん。
 ねえ、いまの自分の状況を分かってますか?
 自分の恋人の部屋で、こんなものを垂れ流しているなんて。
 お兄さんには、罪悪感というものがないんでしょうか」

股間から指がわずかに離れる。
透明な糸を引いたカウパーを、指がくるくると巻き取っていく。

「けど……違いますよね。
 罪悪感がないんじゃなくて、ただ忘れているだけ。
 忘れたふりをして、気持ちよくよがりたいだけ。
 でも……そういうのはルール違反です」

薄く笑って、女の子が近くのテーブルの上に手を伸ばす。
置かれていた涼子のカップを持って……その縁を指でこする。
透明なものが……僕が他の女の子に欲情した証が、
カップの縁に絡みついていく…!

「やめ……っ……!」

思わず声が出た。
されてはいけないことを、されてる。
理由も分からないまま、本能的にそう感じた。

「ん……どうしてだめなんですか?
 お兄さんのぬるぬるが私の指を汚したから、
 それをちょっと拭っただけですよ」

「だけ…ど……そんな…ふうに……」

「こうやってカップを汚したら、まずいですか?
 ね……それはどうしてですか?
 恋人さんに私のことがばれるから?
 それとも、恋人さんを裏切ってるんだってことを
 思い出さずにはいられないからですか?」

少女の手のひらが、またペニスを一撫でする。
カウパーを指に絡めたまま、
テーブルの天板に手のひらをべったりとこすりつける。
透明な粘液が、醜い五本の筋を残す。

「名前も知らない女の子に性器をなぶられて、
 だらだらと汚い液をこぼして、
 それを自分の恋人のものに塗りつけられる。
 とっても胸が痛みますよね?
 心臓が潰れるような思いがしますよね?
 ふふっ……それでいいんです」

少女の手の甲が、尿道口に押しつけられる。
おかしなぐらいに溢れてくるカウパーが白い肌に広がる。
今度はそれが、カーペットにこすりつけられる。
大量の粘液が、絨毯の毛足に絡みついていく……。

「快楽に浸るかわりになにを犠牲にしてるのか、
 それを忘れちゃだめですよ……お兄さん。
 そのかわり……ちゃんと忘れずにいるあいだは
 身も心もとろけるほどの快楽をあげますから」

嬉しそうに目を細めながら、少女が立ち上がる。
なめらかな動作で、僕が背中を預けていたベッドに乗る。
そのまま僕の両脇に、すらりとした足が下りてくる。
マットレスにもたせかけていた僕の頭が、
左右の太ももにそうっと挟み込まれる。

「こういうのも……きっと好きですよね」

女の子の脚がかすかに上下に動く。
耳たぶに、柔らかくてさらさらしたものがこすれる。
少女がとても薄いストッキングを履いていることに、いまさら気づく。
きめ細やかな生地が、耳や頬にこすりつけられる。
優しくて甘い快感で、全身が小さく震える。

「ん……やっぱり。
 脚をこすりつけてあげるたびに、お兄さんの性器、
 馬鹿みたいにひくひく跳ねてますね。
 上から見てると、よーく観察できますよ。
 さあ……もっとしっかり見せてください」

小さな手のひらが、僕の頭に乗せられる。
太ももが少しだけつよく頭を挟み込む。
後頭部に、しっとりとしたあたたかさを感じる……。

「びくっ…って、一際大きく跳ねましたね。
 どうしたんです……お兄さん?
 なにかいやらしいことでも想像してしまいましたか?
 たとえば……頭の後ろに押しつけられてるもの、とか」

くすくすと笑いながら、少女がさらに僕の頭に体重をかける。
首の部分にぬくもりが押しつけられる。
これって………。

「そうですよ……ストッキングとショーツ越しに
 私のあそこがお兄さんの身体に、ぎゅって押しつけられてるんです。
 嬉しいですか、なんて聞くまでもありませんよね。
 はっきりと、ここで示してくれてますから」

きめ細かなストッキングに包まれた足指が、
ペニスの側面を一撫でする。
それだけで馬鹿みたいに竿が跳ね上がって、
でもすぐにもう片方の足で押さえつけられる。

「あ……逃げちゃだめですよ。
 こうやって私を彼女さんの部屋に招いて、
 信頼してくれてる恋人の気持ちを裏切って、
 そこまでして気持ちよくなりたかったんでしょう?」

唇だけが、違う、という言葉を何度も形作る。
だけど、少しも声になってくれない。
戸棚の上に置かれた、小さな写真立てが目に入る。
今年のはじめに、初詣にいったときに涼子と撮った写真。
だけど、このときでさえ僕は…僕は……この子と………。

「……ぁ……あ………ぁ……」

「そんな泣きそうな声を出したりして、
 一体どうしたんですか、お兄さん?
 自分の情けなさが身に沁みましたか。
 とってもいい傾向ですよ、それは。
 もっとも、いまはご褒美の時間なんですから
 快楽に身を委ねたほうが楽しいですよ?」

女の子の左手が、僕の視界を覆い隠す。
指はまだ、かすかに彼女の唾液で濡れていた。
まるで涙をぬぐうみたいに、
目元のところがそっと指で撫でられる。
もう……写真立ては見えない。

「さ、目をつぶってください。
 私の体温と、匂いだけを感じてください。
 お兄さんのものにこすれる布地や、
 押しつけられる柔らかい身体を感じてください。
 ほら……」

少女の身体が、僕に覆いかぶさる。
左手が僕のまぶたを優しく撫でる。
右手がお腹や腰のあたりをまさぐっていく。
ゆるやかな胸の膨らみが、頭頂部に時々こすれる。

女の子のやらかい足裏のあいだで、
ペニスがぎちぎちと破裂しそうなほどに膨らむ。
小さな五本の足指が、薄くてこまかい網目越しに
裏筋のところをさすりつづける。

「息が荒くなってきましたね。
 そろそろ、精液をびゅーってしたくなっちゃいましたか?
 白く粘ついたのを、私の足に吐き出したいですか?」

目尻を指で小さくこすり続けながら、
女の子が僕に問いかける。
僕はこくこくと頭を何度も振る。
そのたびに首筋に彼女の秘所が当たる。

頭の中で、その秘所を想像してしまう。
下着越しのそこに亀頭と尿道口を押しつけて、
びゅくびゅくと黄ばんだ精液をこぼす。
それがショーツに染み込んでとれなくなるぐらいに、
何度も何度もペニスでこすりつける。
そんな淫猥な妄想が止まらなくなる。

「ん……私に足で扱かれてるだけなのに、
 腰がかくかく動いちゃってますよ。
 私の中に入れるところでも想像してるんですか?
 それともお兄さんのことですから、
 空想の中でさえ私を犯せなかったりしますか?
 ふふっ……私はどちらでも構いませんけど」

くすくすと笑いをこぼしながら、
女の子の両足がペニスをしっかりと挟み込む。
左右の足指とかかとをくっつけて、
あいだにできた土踏まずの狭い隙間で
竿をみっちりと押し包む。

だらだらと垂れ流しっぱなしだったカウパーのせいで
もう足裏もストッキングも、すっかり粘液にまみれてる。
そのまま足が上下に動き出す…!

「……ひ……ぁ……っ…!」

くちゅ……くちゅっ…くちゅちゅっ…と、
卑猥な水音がどんどん激しくなっていく。
ぬるぬるが裏筋やカリの裏側、
皮の隙間にまでどんどん入り込む…っ…。
脳に直接ローションをかけられてるみたいな、
甘く粘ついた陶酔感が押し寄せる。

「情けない声、出ちゃってますよ?
 ああ、でも今日は構わないんでしたよね。
 いつもと違って、恋人さんに聞かれる心配はないんですから。
 みっともなくよがって、はしたない声を上げていいんでしたね。
 良かったですね、お兄さん…♪」

いつになく優しい女の子の声。
そんな声が聞けることさえ嬉しくて、背筋が震える。
まるでもう射精してしまったみたいに、
腰とペニスが上下に何度も跳ね上がる。

唾液が口のなかに収まりきれなくなって、
そのまま唇の端からこぼれ落ちる。
視界が白くかすんで、思考がとろけていく。
甘い匂いがする。もっと嗅ぎたい。もっとこの匂いが欲しい。
それで気づいたら、女の子の太ももに鼻を押しつけて
必死に匂いを吸い込んでた。

「んっ……くすぐったいですよ、もう。
 年下の女の子に足でなぶられながら、
 その太ももの匂いを嗅いで嬉しいですか?
 本当にだめな人ですね……お兄さんは。
 ああ……今度は手でも触りたいんですか?」

僕は両手を上げて、彼女の太ももに乗せる。
ストッキングのすべすべした感触を味わいながら、
その向こうのあたたかくて、やらかい太ももを感じる。
精液が、腰の奥でどくどくと脈打ってる。
もう出ちゃう。出てしまう。
だけど、あと一秒でも、一瞬でもいいから
この快楽の海に浸かったままでいたい…っ……。

「お兄さんがなにを考えてるか、
 私にはちゃんと分かってますよ?
 この気持ちよさを永遠に、味わいつづけたいんでしょう?
 なにも考えずに、後ろめたさも後悔も忘れて、
 ずうっとこのままいたいんでしょう?
 でも……やっぱりそれはだめですよ。
 だから……出しちゃいましょうね」

ふわり…と、頬をなにかがかすめる。
かすかに少女の匂いが強くなる。
思わず目を開ける。
薄い、ひらひらとした、淡いピンクの……スカート。
その裾が僕の顔に覆いかぶさってた。

「さ、お兄さん……射精のお時間ですよ」

ふわふわの布が、頬をくすぐる。
張り詰めていた身体の力が……抜ける。
腰の奥から熱いものが流れてくる。
射精感が……弾ける…っ…!

……びゅじゅぷっ…!……びゅぶっ……どぷびゅっ…!

気持ちいい……気持ちいい…っ……!
頭の中がそれだけしか考えられなくなる。
こんなの……こんなの気持ちよすぎる……ぅ…。

……じゅびゅっ………じゅぷっ……びゅぶぶっ…!

薄いスカートの向こうで、精液が迸るのが見える。
何度も何度も、白い粘液が大量に飛散する。
そのたびに甘く痺れた快感に包まれる。

「くすっ……気持ちいいですか、お兄さん?
 それはそうですよね、
 こんなにたくさん精液をびゅーびゅー撒き散らして。
 ね……ところで、ですけれど。
 ここは誰のお部屋、でしたっけ?」

ぞくっ…と、快感とは違う寒気が走る。
忘れていた大切なことを……思い出す。
そうだ。そうだった。ここは……涼子の部屋だ。
僕はその部屋に、精液を……っ…。

「……ぅ……あ…っ…!」

「ん、どうしたんですか、お兄さん?
 そんなに暴れずにもっと気持ちよくなりましょうね。
 ほら……まだびゅーびゅーしてる最中なんですから」

……びゅるっ……どぷっ………ど…ぽ…っ……。

目の前で、残りの精液がこぼれていく。
それはほとんど少女の足を汚すだけだったけれど、
でももうその頃には、床にも大きな精液溜まりができていた。
それだけじゃない。
机の上や、さっきのカップにも白く濁ったものがこびりついてた。

「ふふっ……大変なことになっちゃいましたね。
 ほら、早く拭かないと取れなくなりますよ?
 ああ、でも掃除をはじめる前に……」

女の子の足が、僕のペニスから離れる。
ねちゃり…と、白く濃い粘液が幾筋も糸を引く。
足の裏側も、甲も、くるぶしも、精液まみれだった。

「まずはちゃんと私の足を拭いてくださいね。
 自分の後始末は、ちゃんと自分でしないとだめですよ。
 そうですよね……お兄さん」

→ 次へ