『教祖様のおとしかた』 第4話 戻らない日常

菜々美が手伝いに来るようになって、一ヶ月以上が過ぎた。

そのあいだずっと、僕は過ちを犯しつづけた。
彼女の手で、口で、太ももや下着で、何度も射精した。
蛇口が壊れたみたいに、
欲望も精液も垂れ流しになっていた。

ただ……ごく稀に過ちを犯さない日もあった。
でもそれは、僕が理性を保てたからじゃない。
単純に、菜々美がそういうことをしなかったからだ。

……今日も、そうだった。
一通りの事務作業を終えたあとで「お疲れ様です」と、
丁寧にお辞儀をして、それだけだった。
教祖にかしずく信者の顔で、かすかに微笑むだけ。
そんな彼女に、自分から快楽はねだれなかった。

だけど、吐き出せなかった欲望が消えるわけじゃない。
むしろ異常に膨れ上がってしまう。
そんな日はいつも、自慰に耽るしかなかった。
彼女の動画を見ながら、ひたすらに……。
 
 
 
イヤホンから、ちゃぷ…という水音が響く。
目の前のノートパソコンには、
湯船に沈んだ太ももが映ってる。
あのUSBメモリに入っていた動画のひとつで、
お風呂に入っているところを撮影したものだった。

浴槽の中で足が組み替えられると、水面が波打つ。
お湯越しの太ももの輪郭がにじんで、
それからまた、すらりとした曲線に戻っていく。

……その太ももの感触を、僕はもう知ってしまってる。
事務室で誘われるままに、
彼女の脚にペニスを擦りつけて、どぷどぷ射精した。
資料室で声をひそめながら、太ももで挟んでもらった。
そんな記憶が、幾つも脳裏をよぎる。

そのたびに、パスワードだったり名簿だったり、
彼女は僕からひとつずつ情報を奪っていった。
いまさら後悔が胸のうちに冷たく広がって、
なのに……ペニスはいきり立つ。
映像を見ながら、その太ももの触り心地を
いまや簡単に想像できる。

「……ぁ……はぁ……っ……」

すでにズボンも下着も、足元に落ちていた。
カウパーを指に絡めながら竿を扱く。
くちゅくちゅ…と股間で水音が響く。
ちゃぽ、ちゃぷん…と耳元からも水音が聞こえる。

浴槽の中で彼女に抱きつき、
太ももに腰をへこへこ擦りつけてるような気がする。
ペニスがさらに硬くなる。
亀頭に押されて、太ももがやわらかく沈み込む。
カウパーが菜々美の肌に伸び広がり、
お湯の中なのに、ぬるぬると気持ちいい。

「……あ…ぁ……っ……」

みっともなく声が漏れる。
まるでそのタイミングを見計らったみたいに、
撮影しているスマホのカメラが、くるりと反転する。
菜々美の乳房と、口元が見える。
こまかく揺れるお湯のせいで、乳首がはっきりとは見えない。
口元より上の表情は分からない。
小さな唇だけが、僕の行為を肯定するように微笑んでる。
色白の肌が、上気して薄桃色に染まってる。
湯船に立ったさざ波が止んで、だんだん乳首が見えてきて。

「そのシーン、お気に入りなんですか?」

「…………!?」

耳元で、声がした。
イヤホン越しでもはっきり分かるほどの近く。
僕の右肩に顎を乗せるようにして、菜々美が囁いてた。
小一時間前に別れたときと同じ、セーラー服姿だった。

なんでここに、と思う。
だけど、ここにいるはずがない、とは思えない。
僕の部屋は二階で、菜々美が普段来ることはない。
でも、一階に出入りしてる以上、階段を上るだけだ。
鍵はかけたつもりだったけど……正直、自信がない。

「申し訳ありません、お邪魔してしまって。
 じつは忘れ物しちゃったんです。
 ひょっとして教祖様、ご存知ないかなって」

「忘れ、もの……?」

「はい。赤のボールペンなんですけど」

心当たりはなかった。
僕がなにも答えないでいると、菜々美がくすっと笑う。

「そうですか、すみません。
 なら、他のところで落としたのかもしれないですね。
 失礼しました、せっかくのオナニー中に……♡」

「いや……これ、は………」

なにか言おうとしたけど、言い訳が思いつくはずもない。
誰がどう見たって、オナニーの真っ最中だった。
しかも……。

付けたままのイヤホンから、
さぁぁっ…と、シャワーの水音が聞こえはじめる。
映像は、菜々美が身体を洗う場面になっていた。
彼女をおかずにしてた、と丸分かりだった。

「あっ……み、見ちゃだめ……だよ……」

とっさにノートパソコンの画面を手で覆った。
途端、現実の菜々美が吹き出すように笑う。

「あはっ…♪
 それ、私の裸なんですから、隠しても意味ないです…♡」

菜々美が僕の手を取り、画面からそっと引きはがしてく。
モニターの中では、裸の菜々美がシャワーを浴びてる。
おっぱいに、水滴が当たってこまかく弾ける。
背中や太ももを、水が幾筋もつたい落ちる……。

「女の子のお風呂をこっそり覗いてるみたいで、
 興奮しちゃいますよね、こういうの……♡」

画面から引きはがされた僕の手が、
そのままペニスに添えられる。
さっきまで以上に、がちがちに勃起してた。

「オナニー、続けていいですよ……♡」

そう言って、僕の手が少し動かされる。
カウパーが、ぬるりと擦れる。

「射精したくてたまらなかったんですよね?
 今日も、私のこといっぱい見てましたもんね……♡
 胸元とか、スカートとか、手とか……♡♡」

「…………ぅ……」

記憶がたちまち蘇る。
事務室でキーボードを打つ彼女の胸元を、
教えるふりをしながら上からじっと眺めてしまった。
高い戸棚に手を伸ばすときのスカートを、
下着が見えないかと凝視してしまった。

「今日もおちんちん触ってくれないかなって、
 期待に満ちた目をして……♡
 でも、ご自身ではなんにもおっしゃれなくて……。
 最後は、オナニーのことだけ考えてましたよね?
 どの動画を見ようかとか、そんなことばっかり……♡♡」

ペニスを握る指の隙間に、
女の子のほそい指がすっと入り込んでくる。
自分の右手を上下させると、
菜々美のすべすべの手も一緒にペニスを擦る。
異様な快感に、口の中に唾液が溢れだす。

「で、このお風呂のにしたんですか…♪
 私の裸が、一番たくさん映ってるやつですね。
 今日は触るどころか見ることもできなかった、
 おっぱいやお尻を眺めて、
 びゅーびゅーしちゃうんですね……♡♡
 『僕は裸だって知ってるんだぞ』って、
 情けない優越感に浸りながら、しこしこ……♡♡」

モニターの中の菜々美が、身体を洗いはじめる。
ボディソープをたっぷりと泡立てて、
それを乳房に擦りつけてく。

おっぱいの上側、谷間、下乳……と、
やたらに時間をかけて丁寧に泡を塗りつけてく。
そのたびに、乳房がたわむ。
菜々美の手が、タイミングよく僕の右手を動かす。
画面の中のおっぱいに亀頭を押しつけてる気がして、
ペニスがひくひくと脈打つ。

「おちんちん、すごい喜んでますね。
 そんなに気持ちいいですか?
 どうせ何回も、何十回もご覧になったはずなのに…♪」

「そ、そんな……ことは……」

「ふふっ、教祖様が嘘ついちゃだめですよ?
 ごみ箱のなか、ティッシュだらけです。
 欲望に負けてはだめ、なんて皆に言っておいて、
 信者の女の子の裸でオナニーして……悪い教祖様です♡」

映像では、泡立ったボディソープが
お尻、太もも、腕……と次々と塗りたくられてく。
全身が泡まみれになっていく。
ついで、蛇口がひねられて、シャワーがまた流れ出す。
ペニスが、一際大きく跳ねてしまう。

「あ……♡
 びくーって、なりましたけど……どうしたんですか♪
 もうすぐ大好きなシーン、だったりします?
 泡々の身体を洗い流して、
 おっぱいとか、乳首とかいっぺんに見えちゃう瞬間が
 大好きなんですか……♡♡」

「っ……」

菜々美の言うとおりだった。
シャワーのお湯が、まず腕の泡をきれいに洗い落とす。
火照りを伴った白い肌が、どんどん露わになる。
それからシャワーの水流が胸元に近づく。
泡のせいで、乳首はすっかり隠れてしまってる。

ペニスを扱く速度が上がってく。
僕の手と菜々美の手が、どちらも激しく上下する。
扱きながら、同時に扱かれてるような感覚。

女の子の、菜々美の体温を感じる。
彼女の匂いがする。
本当にお風呂場に一緒にいるみたいだった。
シャワーを浴びる彼女の間近でオナニーしてる錯覚に陥る。
射精感がぷくっ…と膨らむ。
あと何秒も持たない。
射精してしまう……射精できる。
そう思った、次の瞬間。

「――くん、ちょっといい?」

「…………!」

ドアをノックする音と一緒に、深雪姉さんの声がした。
心臓が止まったかと思った。
部屋の入口を振り向くと……ドアは閉まってた。
菜々美が僕のイヤホンを抜き取り、小声で囁く。

「ああ、ドアはちゃんと閉め直しておきましたよ。
 良かったですね、ばれなくて…♪
 ……鍵は、かけてませんけど」

ぞわり、と総毛立つ。
たしかに鍵はかかってない。
立ち上がろうとしたけど、菜々美がペニスを離さない。
こんな状況なのに、まだ勃起したままだった。
どうか、してる。

「――ね、聞こえてるー?」

「ご、ごめん……ちょっと取り込んでてて。
 どうしたの?
 そこから話してくれたら、いいから……っ…」

声が上ずってるのが自分で分かる。
でも、幸い姉さんはなにも気づいてないみたいだった。

「そっか……ごめんね、忙しいときに。
 菜々美ちゃんからメッセージが来てたんだけど、
 忘れ物したらしくて……。
 えーっと、なんて書いてあったかな……?」

姉さんが、おそらくスマホを操作してるであろう気配が
ドアの向こうから伝わってくる。

どうしよう。どうすればいい。
せめて、ズボンを穿きなおさないと。
……なのに、僕のペニスには菜々美の手が絡んだままで、
ゆったりと竿が撫でられつづけてた。

「教祖様、どうしたんですか?
 オナニーの続き、しなくていいんですか……♡」

「こんな状況で、そんな……こと…っ……」

「………?
 ――くん、なにか言った?」

不審がる姉さんに、なんでもない、と慌てて返す。
嫌な汗が背筋をつたう。
いまだにペニスが小さくならない。
射精したい、という気持ちも消えてない。
自分のおぞましさに吐き気がする。

「いいじゃないですか、いまさら……♡
 ばれずに済めば、なんの問題もありません。
 ばれたらばれたで……破滅するだけです。
 欲にまみれた人間の末路は悲惨だって、
 教祖様、ご自分でおっしゃってたじゃないですか…♪」

「…ぅ……けど…………。
 お願いだから……いまは………」

姉さんに見られる。軽蔑される。
それだけは、どうしても避けたかった。
自分を教祖様と勝手に崇める人達にならともかく、
姉さんにだけは……。

「そんなに嫌なんですか、そうですか…♪」

菜々美がペニスから手を離し、立ち上がる。
安堵するとともに、
彼女の手を少しだけ恋しく感じてしまう。
そんな自分に怒りを覚えて、
それで……彼女の行動に気づくのが遅れた。

「なら、もっと嫌がらせしちゃいます……♡」

僕の両脚のあいだに滑り込み、身をかがめる。
ペニスに、菜々美の吐息が自然とかかった。
それだけで、背筋が震え、全身が跳ねた。

「教祖様……私の胸、大好きですよね…♪」

セーラー服の裾が、少しだけめくり上げられる。
ピンクのブラに包まれた下乳が見える。
……また少しめくり上げられる。
服から押し出されるみたいに、乳房がだんだん露わになる。
見てるだけで、カウパーがつーっ…とこぼれる。

ふと、流したままの映像にも目をやってしまう。
シャワーシーンはすでに終わってた。
かわりにまた湯船に戻って、
手に持ったスマホで自身の上半身を映してた。
お湯の揺れにあわせて、乳房が左右にゆらめく。

「そっちの画面もいいですけど……
 おっぱい、こっちにもありますよ?」

目の前に、ブラにみっちり詰まった乳房があった。
セーラー服はすっかり上までめくられ、
小さなフリルが沢山ついたピンクのブラが、丸見えだった。
菜々美の指が、ブラの中央部に引っかけられる。
……まさか。

「おっぱいの中でオナニー、しませんか……♡」

ブラが引き上げられ、たぷんっ…と乳房が溢れ出す。
画面の中でゆらゆらと誘うように揺れてる胸が、
ペニスからほんの数センチのところにある。
ほっそりした身体つきには不釣り合いな、豊かな胸元。
見てるだけなのに、重量感がはっきり伝わる……。

「――そうそう、ボールペンらしいんだけど、
 事務室かどこかに落ちてなかった?」

姉さんの声が聞こえる。
けど、喉がからからでなにも答えられない。

菜々美が両手で乳房を持ち上げる
真っ白なおっぱいが、手のひらに乗って形を変える。
下乳にできた溝が、亀頭にあてがわれる。
ぷにゅぷにゅとした甘い感触だけで、
射精感がすでに大きく膨らんでく。

「教祖様ったら……ちっとも拒まないんですね♪
 じゃ、入れちゃいますよ……♡♡」

「…………!
 待…っ………」

抵抗しようとしたときには遅かった。
おっぱいの下側から、ペニスが飲み込まれてく。
カリ首がわずかに引っかかったかと思うと、
いきなり亀頭が埋もれる。
それから、にゅるるっ…と竿が一気に入り込む。
カウパーにまみれた乳肉が、一斉に絡みついてくる。

「ひ…ぁ……っ……」

「――くん、ごめん……なんて言ったの?
 ちょっとよく聞こえなくて」

返事が、できない。
いま口を開いても、まともに喋れるわけがない。
だからせめて声がそれ以上出ないようにと、
喉を引きつらせて、快感に悶える。

(姉さん、諦めてどこかに行って……)

そんなことを考えてる自分に反吐が出る。
だけど、このまま射精するのだけは。
僕の唯一の理解者の、優しい姉さんのそばで、
みっともなく堕落してしまうのだけは……っ…。

「オナニーの続きなんですから、
 本当は教祖様に腰を振ってほしいんですけど、
 しょうがないですね…♡」

菜々美が、自分の胸元を抱きかかえるようにして、
両手で乳房をぎゅっ…と寄せる。
おっぱいが、ペニスに嬉しそうにくっついてくる。
亀頭を舐め回すようにねっとり、乳肉が這い回る。

「……ぁ……ぁ…っ……」

亀頭が、ぷくっ…と膨らんでは戻り、また膨らむ。
絶頂がすぐそこまで来てる。
姉さんはまだ、ドアの向こうから動かない。

菜々美は微笑んでる。
ほんのニ、三ヶ月前までは、
ただ可愛い子だな、胸がなかなか大きいなって、
そう思っていただけの信者の女の子。
そんな女の子の谷間に、ペニスを突っ込んでしまってる。

「ん……♡」

菜々美が唾を垂らす。
谷間に落ちて、おっぱいの中に流れ込んでく。
カウパーと混ざりながら、亀頭にまとわりつく
なじませるように、胸がさらに押しつけられる。
たぷ、たぷ……と、やらしいリズムで乳房に押し潰される。
腰から先が、あたたかい幸福感で溶けていく。
なにかを我慢する気持ちが、消えていく。

「――くん、大丈夫?
 なんだか……おかしいよ?」

姉さんの声に、ほんの一瞬、後悔が広がる。
でも……またモニターをちらっと見てしまう。
お湯に入った菜々美が、自分の乳房を指でつつく。
手のひらで持ち上げる。
そのやわらかさを想像してしまう。
それがいま、自分のペニスを包んでると意識させられる。

……ペニスに、乳肉がむにゅりと絡む。
このまま、射精できる。
菜々美のおっぱいの中に、射精できる。
その気持ちを後押しするみたいに、
おっぱいが一際強く押しつけられて、それで。

……びゅるっ……どぷっ……びゅるるっ……!

菜々美の胸の中で、精液が噴き出す。
鈴口から溢れだしては、
ぐいぐいと密着してくるおっぱいに押し潰されて、
乳房の表面や竿に塗りつけられてく。

さらに滑りが良くなった谷間を、
菜々美はなおも楽しげに上下に動かす。
ぬるぬるのおっぱいに、ペニスがもみくちゃにされる。
また射精感が弾ける……っ…。

「……ぅ……ぁ……っ…」

声にならない叫びを上げる。
ドアの外では、姉さんが僕の名前を呼んでる。
姉さんに心配されながら、射精の快楽に浸ってる。
頑張って立派な教祖のふりをしてると言いつつ、
本当は……信者の女の子と淫らな行為に耽ってる。

最低だって分かってるのに、やめられない。
いつのまにか、自分で腰を振っていた。
椅子がぎしぎしと鳴る。
姉さんがドアを開けないか、心配でたまらない。
なのに、おっぱいを貪りつづけてしまう。
腰を突き出し、亀頭で乳肉をめいっぱい味わう。
にゅむにゅむと、どこまでもやらかく形を変えるのが
気持ち良くてたまらない。

(……ぁ……また……っ……)

精液がまた押し出される。
いまだけは、この瞬間だけは。
もっと射精したい。
これで破滅してもいい。
なにもかも終わりになってもいい。
これがきっと、最後の過ちだから………。
 
 
 
 
 
 
やがて……姉さんは自室に戻っていった。
結局、部屋には入ってこなかった。
僕の体調が悪いなら、そっとしておこうと思ったみたいだ。

「はい……オナニー、お疲れ様でした。
 もう小声で喋らなくても大丈夫でしょうか…♪」

僕の両脚のあいだにかがんだまま、
いまもなお半勃ちのペニスを谷間で弄びつつ、
菜々美がくすくす笑う。
とても可愛くて……でも悪魔にも見えた。

「……菜々美」

「はい。なんですか、教祖様?
 もう一回、続けましょうか……♡」

「もう……こういうのは、やめよう」

気づいたら、そう呟いてた。
ペニスに当たる乳房の感触がまだ名残惜しい。
それでも、いまなら言える。
射精直後の身勝手だとしても、それでいい。

「教えてしまったことは、好きに使ったらいい。
 僕とのことを世間にばらすのも、好きにして。
 ……姉さんにだって、言いたいなら言えばいい。
 でも……こういうことは、もう終わりにしよう」

「…………」

菜々美は、黙って谷間からペニスを離した。
どろどろに濡れた性器に空気が触れて、ひどく冷たい。

「教祖様がそうお望みなら……もちろんいいですよ。
 望まれないことをするつもり、ありませんから」
 
 
 
     * * *
 
 
 
それから、菜々美は手伝いに来なくなった。
もっとも信者であることまでやめたわけじゃない。
集会には相変わらず律義に顔を出し、
以前と同じ澄ました顔で僕の話を聞いていた。
なにを考えてるのかは、まるで分からなかった。

彼女に渡した情報が、悪用された形跡もなかった。
考えてみれば、一介の高校生がそんな情報を手に入れて
どうにかできるとも思えなかった。
……でもそんなことを言い出したら、
一介の高校生があんなことをした理由だって分からない。

マスコミがなにかを嗅ぎつけた様子もない。
姉さんの様子も変わりない。
なにもかも、菜々美の動画を観たあの日の前に、
元通りに戻ったように……そう見えた。

だけど……違う。
いまだに、おかしいままだった。
……僕の身体と欲望だけは。
 
 
 
「…………」

ノートパソコンのキーを叩いていた手が、止まる。
次の集会のための講話をまとめているところだった。
ただ……ペニスがわずかに膨らんでた。

マウスが、つい違うウィンドウを開きそうになる。
菜々美の映像を見たい、と思ってしまう。
だけど……必死にその衝動を抑え込む。
もう二週間以上、見ていなかった。
それどころか、オナニーさえしていなかった。

彼女とは、もう決別したんだ。
平穏な生活に戻ったんだ。
そう自分に言い聞かす。
なのに……ペニスの疼きが収まらない。
気を抜いたら、いまにも自慰に耽りそうになる。
どうしてここまで、と自分を殴りつけたくなる。

我慢しすぎが良くないんだ、とは思う。
だけど一度でもタガが外れたら、
また際限なく堕落してしまいそうな気がする……。
それに、いくら性欲が溜まってるからって、
こんな日常生活に支障をきたしそうなほどなんて……。

(だめだ……いったん頭を冷やそう)

立ち上がり、部屋を出る。
一階のリビングまで下りると、冷蔵庫を開けた。
よく冷えたミネラルウォーターを取り出し、
近くのコップに注いで、一息に飲む。

「………はぁ…」

冷たい水が喉を潤すと、少し気分が落ち着いた。
いまだにペニスはかすかに膨らんでるけど、
傍目からでは分からない程度だ。
姉さんに会ったところで……。

(……ああ、でもいまはお風呂か)

シャワーの音が、廊下の奥からかすかに聞こえる。
深雪姉さんは長風呂だから、当分出てこないだろう。

さぁぁっ…という、シャワーの水音。
……お風呂に浸かり、身体を洗う菜々美の姿。
それを見ながら手で弄ばれ、
彼女のおっぱいに挟んでもらって射精した……。
とても……気持ち良かった……。
できることなら……もう一度………。

(っ……)

無意識に、あの日のことを思い出してた。
かぶりを振って、そのイメージを追い出そうとして、
唐突に気づく。

いつのまにか、脱衣場に来てた。
シャワーの音が、すぐ近くからはっきり聞こえる。
曇りガラスの戸越しに、輪郭のぼやけた人影がある。

「…………!」

とっさに戸棚のある壁際に身体をくっつけた。
自分がここにいるって、ばれてしまう。
そう思ったから。
でも……ばれたから、なんだっていうんだ。
べつに悪いことをしてる、わけ……じゃ………。

……棚に、姉さんの着替えが置いてあった。
丁寧に畳まれた黒いシャツ。
それから……淡い水色のショーツとブラ。

姉さんの下着から、女の人の良い匂いが漂ってる。
もちろん、そんなの錯覚のはずだ。
だけど、まるでフェロモンがそこから分泌してるみたいに
棚に置かれた下着に惹かれてしまう。
視線が離せない。
ペニスがズボンを突き上げる。

なに考えてるんだ、と心の中で叫ぶ。
だけど……手が動いてしまう。
触り心地を確かめるだけ。
匂いを少し嗅いでみるだけ。

ブラを手に取ると、つるりとした生地に指が滑る。
それでいて、レースの部分はざらざらと違う刺激がある。
思わず、ぜんぶの指で撫でてしまう。

それから……カップの内側に鼻を近づける。
女の人の甘い匂いが広がる。
僕の大好きな姉さんの、でも僕の知らない匂い。
姉さんの、乳房の匂い。

姉さんのブラはすごく大きい。
身体は小柄な菜々美と違って、
姉さんは単純にスタイルが良い。
もともと文句なしの美人の上に、巨乳だった。
並んで座ったときに、
シャツの大きな膨らみに何度どぎまぎしただろう。

でも、姉さんを自慰の対象にしたことは一度もない。
そんなの、絶対に許されないことだ。
なのに……じゃあ、僕がいましてるのはなんだ。
ペニスが痛いぐらいに勃起する。
萎えることが想像できないほどに硬い。

「…………」

シャワーの音は続いてる。
姉さんが出てくる気配はない。
ズボンと下着を、脱いでしまう。

心臓が跳ね、こめかみを血がどくどく流れる。
自分自身の気持ち悪さにめまいがして、
でも取り出されたペニスは嬉しそうにひくつく。
カウパーが滲んだ亀頭に、そっとショーツをかぶせる。

「……ぁ……っ…」

声が出そうになって、慌てて唇を噛みしめる。
それでも、歯の隙間から息がこぼれる。
……気持ちいい。
姉さんのパンツが、亀頭にするする擦れる。
それがどうしようもなく気持ちいい。

菜々美にショーツで扱かれたことも思い出す。
だけど、あの精を搾り取る強烈な快感とは違う。
姉さんの下着だって思うだけで、
腰が砕けそうな甘く深い快感に包まれる。
ぱんぱんに張った亀頭の上を、
優しくなだめるようにショーツの生地が滑ってく。
つるつるの生地がたまらない。

「……ぅ……っ………」

また声が出そうになって、必死に息を殺す。
目をつぶって、快感に集中する。
ブラに染みついたおっぱいの匂いを吸い込み、
パンツのなめらかな感触を鈴口で貪る。
射精感が膨らむ。
半月近く溜め込んだ精液が、ぐつぐつ沸き立つ。

このまま出すわけには、いかない。
分かってる、分かってる。
汚しちゃったら、どうやって取り繕うんだ。
けど、もうカウパーはとっくにこびりついてる。
だったら、だったら……。

「――――♪」

姉さんが鼻歌を歌ってる。
僕のいる脱衣場には背を向けてるのが分かる。
……もう自分がなにをしてるのか、理解できなかった。
頭の中が白く霞んで。
繰り返し見た、菜々美のシャワーシーンが思い出されて。

浴室のドアをほんの少し開いて……覗いてしまう。
裸の姉さんが、身体を洗ってた。
少しだけこちらに斜めに身体を傾けて、胸を洗ってる。

(……ぁ……僕……は………)

姉さんのおっぱいを、見ちゃってる。
覗いちゃってる。
しかも……姉さんの下着でオナニーしながら。

巨乳にシャワーが当たって、こまかな飛沫が弾ける。
蒸気と一緒に、姉さんの匂いが流れ込んでくる。
ペニスがさらに大きく膨らみ、
水色のショーツに、すりすりと擦れる。
腰の奥でなにかが潰れて、精液が流れ込んでくる……っ…。
あぁ……出ちゃう………。
せめて汚れないように……パンツを外さ、なきゃ……。

「…………♪」

下側から乳房が持ち上げられ……たぷっと揺れ落ちた。
それを見た、途端。

(あぁぁああぁぁぁ……ぁ…っ……!)

どぷり、どぷりっ…と、音さえ立てそうな勢いで
姉さんのパンツの中に精液が噴き出てく。
どうしよう、汚してしまった、という焦りと後悔が、
すべすべの気持ち良さに塗りつぶされてく。

小さな頃から一緒だった姉さんのパンツに、
精液が際限なくぶちまけられてく。
一擦りするたびに、精液がショーツに馴染んで、
ぬるぬるの快楽にすり替わってく。
また尿道が膨らんで、その中を精液が駆け抜けてく。

(……ぁ……あぁ……っ……!)

姉さんはこちらを振り向かない。
いまも熱心に胸元を洗いつづけてる。
おっぱいを揺らして、たわませて、僕に見せつける。
ブラを顔に押しつけて、
そのやわらかさを精一杯想像しながら、腰を突き出す。
ショーツのクロッチに鈴口を擦りつける。

びゅく、びゅぷっ……と、まだ精液が迸る。
頭の芯が快感でずっと痺れてる。
いくら出しても、出したりない。
もうどうなってもいいから、
この水色の小さな下着に、もっと、もっと………。