『教祖様のおとしかた』 第5話 彼女の思惑

壇上で話す僕の声だけが、辺りに響く。

「――あらためてもう一度、考えてみてください。
 欲望に囚われ、溺れることの醜さを」

集会場の皆に語りかけながら、
自分がしでかしてきたことを一つずつ思い出す。
菜々美との性的な関係に陥り、
それを絶ったところで、今度は姉さんの裸で自慰に耽った。

「自分の心を律することを忘れ、
 ただ目の前の快楽に流されるだけの愚かな人間。
 そんな人に……幸福になる資格はありません」

偽らざる、僕の本心。
形だけの空虚なものではない、心からの言葉。

そうだ。
僕に、幸福になる資格なんてない。
……ただ、それでも。

「けれど……もしそんな欲望に負けそうになったら。
 そのときは、思い出してください。
 自分にとって一番大切なものは、なんなのか。
 譲れないものを守るために、どうすればいいか。
 その答えは、皆さんの中にあります」

集会場は、しん、と静まり返っていた。
僕の雰囲気がなんだか違うと、伝わったのかもしれない。
けど、皆の反応に大した興味はなかった。

「…………」

いつもなら菜々美がいるはずの席を一瞥する。
彼女の姿はない。
当然だった。

だって菜々美は……僕の部屋にいるはずだから。
 
 
 
 
 
 
「教祖様、お疲れ様でした…♪」

自室に入ると同時に、菜々美に声をかけられる。
カーテン越しの光だけの薄暗い部屋で、
いつものセーラー服を着てた。

後ろ手にドアを閉め、鍵をかけ、
それから……椅子に座る彼女の前にひざまずく。

「菜々美、お願い……」

おぼつかない手つきでベルトを外し、ジッパーを下ろす。
取り出したペニスは、すでにガチガチに勃起してる……。

「くす……♡
 がっつきすぎですよ、教祖様?
 『もうやめよう』だとかおっしゃってたのは、
 どこへ行ったんでしょうか」

「……ぅ……それは……ごめん……」

一度は断ち切ったはずの菜々美との関係を、
僕は自分から復活させた。
そうするしか……自分を抑えようがないと思った。

もしも……自分の欲望が、際限なく暴走してしまったら。
下着を汚すどころか、姉さん自身になにかしてしまったら。
そう考えたら、寒気がして止まらなくなって、
気づいたら……菜々美に連絡をとっていた。

「精液びゅーびゅーすることしか、
 もう頭になくなってしまったんですか?
 ご立派な教祖様は、どこ行っちゃったんでしょう…♡」

菜々美の足先が、僕の前でぷらぷらと揺らされる。
靴下は脱いでて素足だった。
足の爪には薄いピンクのマニキュアが施されていて、
そのせいか、かえって肌の白さが際立って見える。

「おちんちん、とっても元気ですね…♪
 私と会わないあいだ……ずっと我慢してたんですか♡」

いきり立ったままの竿の裏側が、
足の甲で、とん…と優しく叩かれる。
それだけで、ペニスが自分のお腹に当たりそうなほどに跳ねる。

「それとも……変わらずオナニー三昧でしたか?
 馬鹿みたいにどぷどぷ射精しつづけて、
 それでも、ちっとも収まらないんでしょうか……♡」

僕の膝の上を、菜々美のつま先がからかうように
すり、すり……とゆっくりと這う。
ズボン越しでも、ぞくぞくとした震えに似た快感が走る。
カウパーが、勝手に溢れだす……。

「教祖様、大好きですものね。
 私のえっちな動画で、おちんちんをしこしこ……♡
 お気に入りは……ふふっ、そうそう。
 お風呂のシーン、でしたね?
 覗き魔さんみたいな気分で、人の裸を見ながら……♡♡」

「っ……な、なに言って………」

思い出して、しまう。
菜々美の裸だけじゃない。
姉さんの裸をこっそり覗いた……あの瞬間を。
姉さんのショーツのすべすべの感触、
ブラにたっぷり染みついた甘い匂い。
精液が尿道をどくどく駆け抜けた、あの気持ち良さ……。

「無理して否定されなくていいですよ?
 なにも、本当の覗き魔さんじゃないんですから…♪
 私が差し上げた動画を見ただけ。
 本当に悪いことをしたわけじゃ、ありませんよね……♡」

僕の内もものあたりを、
菜々美のつま先が、すーっ…♪と何度も撫でる。
左をさすったかと思うと、今度は右。それからまた左。
くすぐったさと快感のどちらともつかない、
甘くて優しい刺激が送り込まれつづける。
けど、あまりに、もどかしくて……っ…。

「あ、教祖様。自分で触るのはだめですよ?」

思わずペニスに伸ばしかけた右手が、
足先ですっと払われる。
そん…な……っ……。

「人に射精をおねだりしておいて、
 その挙句に我慢できずにオナニーとか……♡
 そういうの……いけないと思います♪」

また足がぷらぷらと揺らされる。
つま先がペニスに触れそうで、触れない。
ときおり足先で揺らされた風が亀頭に当たるだけ。
じれったさだけが、どんどん募ってく。

「菜々美……早く………」

「そう言われても困ってしまいます……♪
 お忘れではないですよね?
 私はなにも、教祖様の奴隷でもなければ、
 セフレでもありません。
 ただ少し、欲しいものがあるだけです…♡」

机の上にあった僕のノートパソコンを、
菜々美が膝の上に移動させる。
画面がこちらに向けられると、すでにブラウザが起動してた。
銀行のログイン画面だった。
……まさか。

「パスワード、教えていただけますか?
 そしたら……してあげます♪」

「…………」

いまこの瞬間までは、どんな対価を求められても
僕は差し出してしまうだろうと……思ってた。

僕には破滅がお似合いだ。
こんな教団も、なくなってしまえばいい。
だから堕ちるところまで堕ちてしまおうと、
そう覚悟を決めていたはずなのに……。

「ふふっ。さすがに教祖様でも迷っちゃうんですね。
 いいですよ、べつに急ぎませんから。
 それまで少し……遊びましょうか」

ノートパソコンを机の上に戻して、菜々美が微笑む。
ついで、足を持ち上げ、僕の眼前に差し出す。

「ほら……つま先、触ってもいいですよ…♪
 おちんちん以外でなら、ですけど……♡」

見え見えの罠だった。
なのに、分かっているのに抗えない。
その小さな足に、両手を伸ばしてしまう。

足の甲はひんやりしていて、すべすべだった。
さっき一瞬ペニスに触れられた快感を思い出す。
足裏はしっとりと柔らかい。
どうしたって、ペニスが擦れることを想像してしまう。

「もっと上も……気になりませんか?」

菜々美の手のひらが、
ふくらはぎ、太もも、スカートの裾……と撫でていく。
真っ白な肌が、薄闇の中で妙にくっきり見える。
触ると気持ちいいですよ、と脚に囁かれてる気がする。

「触るだけなら構わない、と言いたいところですけど。
 少しはなにかもらいましょうか……♪
 ……パスワード、最初の文字はなんですか?」

「………ぅ…」

くるぶしより上に伸ばしかけた手が、止まる。
菜々美の意図に気づいてしまう。
だめだ……いま、やめないと……きっと……。

「大丈夫ですよ、教祖様。
 ここのパスワードって最低八文字って書いてあります。
 一文字ぐらい、なんの問題もないですよ……♡」

菜々美自身の手が、何度も執拗にふくらはぎを撫でる。
その手つきがあまりになめらかで、
とっても触り心地がいいだろうって想像させられる。
ペニスが、ぴく、ぴく…と耐えきれないように跳ねる。

「……アルファベット……の………」

僕の告げた文字を、菜々美がカタッとキーで叩く。
それから、ふんわりと優しく笑う。

「はい、ありがとうございます…♪
 ならいいですよ……膝から下は、ご自由に♡」

言われた途端、菜々美の脚に飛びついてた。
ふくらはぎに両手を当てて、その感触を貪る。
ベビーパウダーでもまぶしてるみたいにさらさらで、
撫でてるだけで、背筋が震える。

「ふふ……おててで触れるだけで大喜びですね。
 びゅーびゅー射精できるわけでも、
 おちんちんが気持ち良くなれるわけでもないのに…♡」

くすくすと笑われるたび、ペニスがひくつく。
足に擦りつけることも、手で扱くこともできない。
いっそ触らずに射精できれば、とも思う。
だけど、このままじゃ、それさえ……。

「次は……そうですね、三文字ほど教えていただけますか?
 そうしたら……ふともも、触っていいですよ♡」

「…………ぁ……」

勝手に口が動く。
心の奥で、血の気が引くような恐怖が広がる。
でも、太ももから目が離せない。
触りたい……さわりたい………。

「これで四文字、と……♪
 じゃ、教祖様……どうぞ♡」

「う、うん……」

上半身を持ち上げ、膝立ちで一歩前に進む。
ほとんど身体を投げ出すようにして、太ももにすがりつく。
鼻先数センチまで、きめ細かな肌が近づく。
年下の女の子の、菜々美の匂いがする。
上品で甘酸っぱいのに、なぜか頭の芯がとろける香り。

右の太ももを両手で挟んで、無我夢中で撫でる。
ふくらはぎよりも、ほんのりあったかい。
手を強く押しつけると、柔肉が少し沈み込み、跳ね返る。
むにむにっ…とした弾力が、たまらない。
それに……。

(……ぁ………スカートが………)

太ももの奥に手を抜き出しするたび、
スカートの裾が、ふわっ…とかすかに浮かぶ。
いまにも、パンツが見えそうだった。

つい、奥の方を撫でてしまう。
スカートの裾が、ひらひらと小刻みに揺れる。
でも、ショーツはぎりぎり見れない……。

「教祖様、パンツ見たいんですか…♡」

「っ……」

慌てて顔を上に向けると、
にんまりと口元をほころばせた菜々美がいた。

「じゃあ、また三文字……と思いましたけど♪
 パンツ見るだけなのも、かわいそうですよね」

スカートの裾が一瞬持ち上げられ、また落ちた。
黒いショーツが見えた、ような……。

「私のここに顔をうずめても、いいですよ……♡
 パンツの匂いくんくんしながら、
 ふとももで、ほっぺをぎゅー……♡♡
 教祖様、きっとそういうの、お好きですよね♪」

ペニスが、ぎちっ…と音を立てそうなほどに膨らむ。
そんな……そんなの……我慢、できるわけ………。

「ついでに、おまけも付けちゃいます。
 足でおちんちん、いっぱい触ってあげます♡
 びゅるるー♡って、できちゃいますよ。
 そのかわり……残りの文字、ぜんぶ教えてください♪」

「なっ……」

無理に決まってる。
いくらなんでも、そんなの言えるわけ……。

「いいじゃないですか、いまさら♪
 教祖様も本当は……分かってるんじゃないですか?
 ここまで来たら引き返せないって……♡」

ペニスに、足の甲がしゅるっ…と擦れた。
たったそれだけなのに、下半身全体が甘く痺れる。
倒れそうで、太ももにさらにしがみつく。

視界いっぱいに、菜々美の白い肌が広がる。
スカートの奥もさらに深くのぞき込めてしまう。
黒のレース、かもしれない。

「教祖様がどれだけ悩むふりをしても、
 早いか遅いかの違いだけ、なんですよ…♪
 だって、そうでしょう?
 このまま射精せずに終われますか……♡♡」

……このまま、なにもせずに終わってしまう?
勃起したペニスを放置されたまま、
菜々美が立ち去ってしまう?
そんなことになったら、僕は………。

「想像ですけど……なにか私を呼び戻した理由が、
 教祖様にはあったんじゃないですか…♪
 えっちなことせずにいられない、なにかが……♡」

(………そうだ)

思い出す。
姉さんの裸で、姉さんの下着で、射精してしまったこと。
与えられる快楽に溺れるよりもっと最低の、
自分の欲望のために他人を傷つける行為。
またあんなことを、するぐらいなら……。

「さ……教えてください」

スカートの端が指でつままれ、ゆっくり持ち上げられる。
やっぱり、黒だった。
繊細なレースがちりばめられた淫靡さと、
小さなリボンの可愛らしさが同居してる。

女の子の下着を見つめながら、幾つかの文字を口にする。
菜々美が片手でキーを叩き、満足そうに息を吐く。

「ん、よくできました…♪
 では、ご褒美どうぞ……♡」

菜々美が足を少し開く。
生じた隙間に、たまらず頭を潜り込ませてしまう。
女の子の匂いが、むわっ…と鼻と喉に絡みつく。
股間に血が流れ込み、亀頭が破裂しそうに膨らむ。

「……っ………ぁ…っ………」

息を吸うと、さらに濃密な女の子の匂いがする。
肺いっぱいに溜めたその空気を吐き出すと、
ショーツに吐息が跳ね返り、まぶたや目元を湿らせてく。

年下の女子高生の、それも信者の女の子のパンツに
顔をうずめて深呼吸してしまってる。
僕はなんて気持ち悪いんだろうと思えば思うほど、
なぜか深く甘い陶酔感が広がる。

「くすっ……教祖様、ワンちゃんみたいですよ?
 おあずけにされてたご飯に、
 やっとありつけたみたいな喜び方です。
 こういうの……ずっとしたかったんですか♡♡」

こくこく、と頭を動かしてしまう。
鼻筋がショーツにすりすり擦れて、それがまた気持ちいい。
レースのざらついた感触が混じるのも好きだった。

菜々美の言うとおり、こういうことがしたかった。
最近は用事で街中に出ても、
セーラー服の女の子をいつも目で追ってしまってた。
胸の膨らみを眺めて、スカートのひらひらに心奪われて。
電車の向かいにスカートの短い子が座るたび、
こんなふうに欲望のままに匂いと感触を味わいたかった……。

「さて、あとは……ふともも、でしたね♡
 はーい、お顔をぎゅっ……♡♡」

太ももが、左右から僕の頬を優しく包む。
両腿を擦り合わせるみたいに、菜々美が身じろぎする。
すべすべの太ももが、頬にたっぷり擦れてく。

「ん……ぁ……っ……」

射精感がいきなりこみ上げる。
ペニスに触れられてないのに、出ちゃいそうだった。
菜々美の匂いと、体温と、やわらかさに包まれてるだけで
身体が勝手に射精しようとしてる。
あぁ……でも……まだ……っ……。

「ふふっ、大丈夫ですよ、教祖様…♪
 パンツにお顔くっつけて、ふがふがなさってたって
 おっしゃりたいことは分かりますから。
 おちんちん……ちゃんと触ってあげます♡」

ひんやりした素足が、竿を両側からぴったり挟み込む。
すでにペニスはカウパーまみれで、
菜々美の小さな足が、ぬるり…と滑る。
射精感がまた膨らんで、必死にそれに耐える。
まだ……もっと、もっと………。

「…………♡」

菜々美の足裏が、ペニスを弄ぶ。
亀頭を足裏でこね回したかと思うと、
カウパーに濡れた竿を挟み込んで、上下に扱く。

にゅるにゅるとした甘い感触に、
身体の力が抜けそうになる。
精液がいまにも噴き出しそうで、腰の奥が蠢く。

少し冷たかった菜々美の足が、
ぬるま湯に浸かったみたいにあったかくなる。
顔に押しつけられるパンツや、
頬に密着してる太もものぬくもりも、心地いい。
ふわふわした浮遊感が、全身を包み込む。

(あ……ぁ………)

射精をこらえることが、もうできそうにない。
ペニスが脈打ち、射精の準備に入る。

「あ……出ちゃうんですね♪
 なにもかも捧げておちんちん気持ちよくなれたのに、
 もう終わっちゃうんですね……哀れな教祖様♡
 ……でも、それなら」

ふわり、となにかが後頭部にかかる。
スカートだ、と遅れて気づく。
僕の頭にかけたプリーツスカート越しに、
菜々美が頭を撫でてくれる。

「思い残すことのないように、
 たくさんたくさん出しましょうね……ほら♡♡」

菜々美の足が、竿を根元から先端へと勢いよく撫でる。
にゅるり…と一際強い快感が走って、それで。

……びゅるっ……びゅく…っ……びゅるるっ……!

大量の精液が迸る。
スカートに頭を突っ込んでいて見えないけれど、
尋常な量じゃないのが身体で分かる。
尿道を駆け抜ける精液の勢いが強すぎて怖いほどなのに
その外側から菜々美の足が、にゅこにゅこ…と竿を扱く。

「…う…ぁ………あああぁ…あぁ…っ……!」

あまりの快感に、菜々美の脚にもっとしがみつく。
手のひらに太ももが触れて、
思わずその感触を貪るように乱暴に撫で擦る。
オナニーのたびに呆れるほどに妄想したその肌を、
触って、触って、触りまくりながら、また射精する…っ。

「いっぱい、いっぱい出していいですよ……♡
 それだけのものを、教祖様は差し出したんですから♪
 女の子の足とパンツのために、
 人生投げ捨てちゃったんですから……♡♡」

精液も絡んで、さらにぬるぬるになった足裏が、
竿をゆったりと往復する。
精液がなおも溢れてくる。
まだ出せる……まだ……射精、するんだ………。
 
 
 
 
 
 
「では、私はこれで♪」

足にこびりついていた精液をハンカチで拭きおわり、
菜々美が立ち上がる。
僕はといえば、いまだに床に座り込んだまま、
呆然として射精の余韻に浸っていた。

「ああ、それと……分かってらっしゃると思いますけど、
 念のためにお伝えしますね」

「…………?」

ぼんやり、菜々美を見上げた。
短いスカートからは、下着が見えそうだった。
ついさっきまで、そこに頭を突っ込んでたのに、
いまもそんなことを思ってしまう。

「これでもう、欲しいものはぜんぶいただきました。
 教祖様は用済みです…♪」

「え……?」

「なに情けない顔なさってるんですか。
 しっかり、してください。
 明日からまた、皆さんの前に立つんですよね?
 笑われちゃいますよ……♡」

菜々美がドアを開ける。
やっと、気づく。
そうだ。彼女にとって、僕の利用価値はもうない。

「待っ……」

「もう遅いですよ。
 とってもお馬鹿な、おにいさん……♪」
 
 
 
     * * *
 
 
 
それから数日のことは、ほとんど記憶がない。
もっとも、寝込んだりしたわけじゃない。
まるで一部のプログラムだけが残ったロボットみたいに、
教祖のふりを続けてたことだけは覚えてる。

やっと思考能力が戻ってきたころには、
なにもかもが手遅れだった。
教団の口座は暗証番号もパスワードも変更されて、
もはや僕の手を完全に離れてた。
通帳や印鑑も消えていて、どうしようもなかった。

警察に届けることも考えたけれど、
それは……僕が彼女としたことを白状するようなものだ。
言えるわけが、なかった。

でも、どちらにせよ教団は資金不足でまもなく破綻する。
そうしたら……なにもかもが白日の元に晒されて、
僕は………。
 
 
 
「――くん、どうしたの?」

深雪姉さんの声に、はっとする。
自分がいま、どこでなにをしてたのか一瞬分からない。

リビングのソファに座っていて、
手には姉さんが淹れてくれたコーヒーがあった。
残り少しだけど、だいぶぬるくなってる。
知らないうちに、またぼうっとしていた。

「あ……ごめん、なんでも、ないんだ……。
 またちょっと、疲れてるの……かな」

「……ほんとにそれだけ?」

姉さんが僕の左隣に座る。
横から身を乗り出すようにして、僕の顔を覗き込む。

「なにか心配ごと……あるんだよね。
 そういうの、分かっちゃうんだよ?」

コーヒーの香りに混じって、姉さんの匂いがする。
子供の頃から慣れ親しんだ、安心できる優しい匂い。
ただ……。

「ほら、目を逸らしたー♪」

「いや、それは、そういうのじゃ……なくて……」

姉さんが着てるのは、すで着古したTシャツだった。
もともとゆったりしたデザインな上に、
襟元の生地もだらりと伸びて、胸元が大きく開いてた。

白い谷間が、惜しげもなく晒されてる。
ブラもつけてない。
そのうえ姉さんの良い匂いがずっとしてて、
どうしても……性的な記憶が混じりそうになる。
僕は、姉さんの下着に……。

「じゃ、どうしたのかなー♪
 あ、おっぱい……見えちゃいそうで気になる?」

襟元を指でつまんで、ぱたぱた開く。
乳首まで見えちゃうんじゃないかと思うほどに、
谷間が大きくはだける。

「ね、姉さん……なにして……」

あけすけなところがあるとはいえ、
いままで、こんなふうに接してきたことはない。
なにかおかしい……まさか、また夢でも……。

「あのね……えっちな気持ちになっちゃったなら、
 なにもそれを……隠さなくてもいいんだよ?
 少なくとも、私には」

「え……」

「ずっと無理してたの……私には、分かるから。
 だから……楽にしてあげたいなって、思って」

股間に、しゅるり…となにか細長いものが絡む。
姉さんの指が、ズボンの膨らみにかぶさってた。
理解した途端、どくんっ…とペニスが膨らむ。
すでに勃起してたのが、一気に限界まで硬くなる。

「なっ……だ、だめ……。
 そんなところ、きたな……っ……」

「そんなことないよ……♡
 汚くもないし、悪いことでもなんでもないよ。
 それにー…♪」

姉さんが、にやーっ…と、いたずらっぽく笑った。

「もし汚いなら、お姉ちゃんのパンツにびゅーびゅーって
 いっぱい出しちゃったのはいけないと思うな……♡」

「…………!」

ばれ…てた……。
というより、ばれてない方がおかしいと思ってた。
あのとき替えの下着がないことに気づいた姉さんが、
違和感を持たないはずがない。
でも翌日の様子も変わらなかったから、もしかしたらって……。

「ふふっ、怒ってるわけじゃないよ。
 ううん……むしろ、嬉しいぐらい。
 やっと、自分の気持ちを押し殺すことを
 やめてくれたんだな、って」

しずかに囁きながら、
そのあいだも姉さんの指はずっとペニスをさすってる。
気になるものを見つけた小動物みたいに、
ズボンの上から、亀頭をすりすりと擦りつづけてる。

(……う…ぁ………)

服越しのごく弱い刺激なのに、
姉さんにされてると思うだけで、異様に気持ちいい。
ここ数日、呆けてオナニーすらしてなかったのもあって、
あっというまに射精感が湧き起こる……。

「ね、姉さん……ほんとに、だめ……。
 で………出ちゃう…から……」

「だからいいんだよ、出しちゃっても……♡
 したいように、すればいいの。
 たとえば……じーっと見ちゃってるおっぱいも、
 触っていいんだよー……ほら♪」

僕の左手をとって、Tシャツの中に滑り込ませる。
襟元がぐにゃりと伸びて広がり、
乳首が見えたかと思うと……それを僕の手が覆ってしまう。
むにゅり……と、姉さんのおっぱいを揉んでしまう。

菜々美のより、もっと巨乳だった。
ぎゅっと掴むと、手のひらから溢れそうに大きく重い。
ふと、シャワーを覗きながらブラを嗅いだことを思い出す。
ブラに染みついた、おっぱいの甘い匂い。
想像するしかなかった姉さんの胸を、いま揉んでて。

「……ぁ……だめ………あぁぁああぁぁ…っ……!」

いきなり暴発する。
ズボンをぎゅうぎゅうと突き上げながら、
姉さんの指の感触をねだるように、びくびく射精する。
身体も跳ねて、右手に持ったままのカップから、
びちゃびちゃとコーヒーがこぼれてく。

「わ、すぐ出ちゃった……♡♡」

たちまち、股間があたたかくぬるんだ感触にまみれてく。
ペニスの律動は、なかなか終わらない。
数日分の溜め込んだものを吐き出すように脈打ち、
姉さんの指も嬉しそうに、亀頭の辺りを擦りつづける。
出してしまった後悔が、受け入れられてる安堵にすり変わり、
また精液が上ってくる…っ。

「ん……また、びくびく……♡
 いっぱい出てるね……♪
 それだけいっぱい、我慢してたんだよね。
 うん、よしよし……♡♡」

「…………ぅ……」

まだ射精が完全には終わっていないのに、
もう次を期待するようにペニスが硬くなりはじめる。
指に力を込めて、おっぱいのやらかさを味わうと、
すぐにまた射精直前の大きさを取り戻す。

「ズボン、べとべとになっちゃたね……♪
 ちゃんと拭かないと、風邪ひいちゃうよー。
 あ、コップも片付けないと」

ほとんど空になったコーヒーカップが取り上げられ、
机の上に片付けられる。
ついで、ズボンと下着が脱がされてく。
なすがままだった。

なんでこんなことになってるんだろう、とかすかに思う。
でも、姉さんの体温と匂いがそれを塗りつぶす。
いまは……難しいことや怖いことを、考えたくない……。

「あ、おちんちん、おっきいままだー♡
 うん、そうだよね……。
 小さな頃からずーっと我慢してたんだから、
 簡単には収まらないよね。
 それじゃー…♪」

姉さんが一度立ち上がると、
正面から僕の身体をまたいで、ソファに膝立ちになる。

ちょうど胸の谷間が、僕の顔の高さだった。
胸元は完全にはだけて、左のおっぱいは外にこぼれてた。
ソファのクッションがわずかに沈み込むたび、
真っ白の大きな乳房も、たぷ、たぷ…と小刻みに揺れる。

「ふふっ。おっぱい、すごい見てるー……♡
 そんなに気になるなら、
 もっと早く言ってくれたら良かったのにって思うけど…♪
 ……でも、きっと無理だったんだよね。
 いまやっと素直に見てくれるようになったんだよね。
 えへへ、嬉しいな……♡♡」

姉さんがペニスに両手を絡める。
愛おしそうに、僕の性器をぜんぶの指で撫で回す。
姉さんにこんなことをしてもらってる。
どうしようもない後ろめたさを感じてるのに、
なぜか……奇妙な安心感もある。

このまま心地良さに身を委ねたい。
姉さんの気持ちのいい身体に、溺れていたい。
そう思ったら……頭を、ぽふっと谷間に預けてた。

「んー、どうしたのかな♪
 おっぱいに甘えたくなっちゃった?」

「………うん…」

まるで幼児みたいに、うなずいてしまう。
鼻先が乳房にあたって、やわらかさがよく分かる。
そのうち、手が勝手に動いて。

「はーい、今度はまた、おさわりだねー♪
 さっきみたいに、たくさんどうぞー♡♡」

谷間に顔を埋めながら、
その重量感たっぷりの巨乳に手を沈める。
片手はTシャツの外にこぼれたものを、
もう片方の手はシャツの中に潜り込ませる。

「ふ……ぁ……」

むにむにした感触が、手のひらいっぱいに広がる。
乳肉がたわむのを感じながら、
谷間そのものを、もっと顔に押しつける。
あのときブラを嗅いだのより、
ずっと濃密なおっぱいの匂い……。

「もう……そんなにくんくんされたら、
 さすがに恥ずかしいなー♡
 でも、いいよ……♪
 気持ち良くなれるならなんでもしてあげる……♡♡
 それこそ、おっぱいだってあげちゃうよー」

「っ………」

「あれー…♡ ほんとに欲しいんだー♡♡」

姉さんがわずかに腰を浮かした。
乳首が、僕のあごの辺りに擦れる。
それで……気づいたら、おっぱいに吸いついてた。

「ちゅーちゅーって、していいよ……♡
 もちろん、ミルクが出たりはしないんだけど…♪」

言われるがままに、舌の上の乳首を吸ってしまう。
小さく尖った乳首が、僕の唾液に濡れてく。

風呂場を覗いたあの日。
シャワーを浴びながら、ぱしゃぱしゃと水滴を弾いてた、
姉さんの大きなおっぱい。
あの巨乳に、むしゃぶりついてる…っ。

唇にも、ふにふにした乳房の弾力が押しつけられる。
手のひらで乳房を持ち上げ、その甘い重みを感じる。
もう一方の手は、思うままに胸をまさぐる。
どこもかしこも、やらかくて、あったかくて、
こんなの……頭が、おかしく……っ……。

「おちんちん震えてる……♡
 また、どぷどぷーってしちゃいそうだ……♡♡」

言われて気づく。
射精感が、もう限界まで膨らんでた。

とっさに、まだ出したくない、と思ってしまう。
まだこの時間に浸っていたい。
だけど、姉さんの手は少しも止まらない。

「いつでも出しちゃっていいからね……♪
 服が汚れるとかは気にしないで……って、
 ふふっ、それは心配いらないかな。
 気持ち良くびゅーびゅーするためなら、
 お姉ちゃんのパンツだって汚しちゃうんだし♡」

「………ぅ…っ……」

恥ずかしさで、顔から火が出そうだった。
それを隠したくて、もっと胸に吸いつく。
ちゅぱちゅぱと音がしそうなほど、乳首をしゃぶる。

姉さんが笑いながら、カウパーまみれのペニスを弄ぶ。
竿を根元からにゅこにゅこ扱きながら、
同時に、鈴口に手のひらを押しつけてごしごし擦る。

「……ん…ぅ……っ……」

腰から先が、じんじん熱い。
もう出てしまう。
それが分かるから、姉さんの胸にいっそう強く吸いつく。

「ん……出ちゃうね。
 でも大丈夫。ちっとも悪いことじゃないよ。
 射精するのは、とってもいいことなんだから。
 だから、安心してどぷどぷしようね……♡」

赤ちゃんをあやすみたいな、慈愛のこもった声。
僕に囁きながら、亀頭を優しく一撫でして。それで。

「…ぁ…っ……あっ……あぁああぁぁあぁ……っ…!!」

精液が噴き出る。
お姉ちゃんは「大丈夫、大丈夫…♪」と囁きつづけながら、
ペニスをゆったりしたペースで扱きつづける。
お姉ちゃんの服や体に、びたびたと精液が降り注ぐのが
見えなくても分かってしまう。

「いっぱい出すと、おちんちん気持ちいいねー…♡
 すごく幸せな気分になれるよね……♪
 だから、これは良いこと。
 お姉ちゃんとえっちなことするのは、良いことだよ…♡」

まるで背中を撫でてもらってるみたいな、
不思議な心地良さの中で、とぷとぷと精を漏らす。
お姉ちゃんの乳首をちゅうっと吸うたびに、
ペニスがひくつき、精液が後から後から溢れてくる。

腰がひとりでに動いて、お姉ちゃんの手に甘えちゃう。
ずっと、ずっとこうしていたい。
お姉ちゃんのおっぱいに抱きついたまま、
ただただ精液を漏らしていたい………。
 
 
 
 
 
 
「――くん、落ち着いた?」

「う…ん………」

射精が終わって頭が冷えてきても、
自分がいまいる状況が信じられなかった。

自慰という過ちを僕が犯したことがあるとはいえ、
昨日まではたんなる仲の良い姉弟だったのに……。
後悔してるとかじゃなくて……ただ信じられない。
……それに。

「姉さんに……言わなきゃいけないことが、あって」

こんなことになっても、
いやこんなことになってしまったからこそ。
姉さんには真実を話さないといけない。
教団の資金のことも、菜々美としたことも。

「その前に……私も言わなきゃいけないことがあるの。
 どこから言えばいいのかなって思うんだけど……」

可愛らしい困り眉を作って、
それから姉さんはふんわりと微笑んだ。

「まずは……♪
 もう入ってきていいよ――菜々美ちゃん」