『教祖様のおとしかた』 第1話 少女の裸

手元に一通の封筒がある。
表には「教祖様へ」とだけ書かれてる。
ついさっき、教祖である僕に手渡されたものだった。

渡してきたのは、この教団に最近入った女の子。
まだ十代で、たしか高校にも通ってる。
若い子の入信はめずらしかったし、
僕自身と年が近いことにも、なんとなく親近感を覚えてた。
なにより……とても綺麗な子だった。

封筒は糊付けもされてなかった。
逆さにすると、USBメモリがひとつ出てくる。

受け取るときに聞いた話が本当なら、
この中には……彼女の私生活が映ってる。

――恥ずかしいので、教祖様お一人で見てくださいね?

彼女の言葉を思い出して、無意識に唾を飲み込んでしまう。
そういうことを期待しちゃいけない、と思う。
だけど、もしかしたら……と心のどこかが期待してる。

電気もつけてない自室は薄暗い。
カーテンの隙間からこぼれていた夕暮れの赤い光は、
もう青暗い夜の帳に変わりはじめてた。
ノートパソコンの液晶だけが、煌々と光ってる。

コーヒーカップの最後の一口を飲み干し、
思い切ってUSBメモリを差し込む。
幾つかの動画アイコンが表示される。
震える指でマウスを操作し、先頭の動画を再生する。

液晶モニタの中に……明るい部屋が映し出される。
家具の少ないシンプルな部屋だけど、
それでも一目見ただけで、女の子の部屋だって分かった。

カメラはベッドを真横から映してる。
朝の光の中で、女の子が上半身を起こす。
上に着てるのは薄ピンクのTシャツ一枚だけだった。

その薄い布地が、胸の先端だけ小さく尖ってるように見える。
気のせいかも、しれない。
カメラが遠くて、はっきり分からない。
女の子が小さく伸びをする。
丸い膨らみがわずかに揺れる。
シャツの裾が引き上げられて、お腹の辺りが見える。

伸びを終えた女の子が……Tシャツの裾に手をかけた。
……まさか。
ピンクの裾が、やけにゆっくりとめくられてく。
白い肌がどんどん露わになってく。
ズボンの中で、ペニスがひくつく。
興奮、してしまってる。
こんなの、こんなこと……。
……教祖として、絶対だめなのに。
 
 
 
     * * *
 
 
 
「律心教」という名の宗教団体がある。
僕の父が立ち上げた、新興宗教だ。

その教義はシンプルで、教団名のとおりに「心を律する」こと。
この世にある様々な誘惑、
食欲、物欲、性欲……そういうものに流されないように、
心を律して生きようと説いている。
この理念に賛同した人たちが入信し、信者になる。

二十年前……ちょうど僕が生まれた年にできた教団は、
少しずつだけど拡大していった。
世間一般から見れば、いまでもまだ弱小の団体だろう。
それでも内側から見れば、それなりに隆盛していた。
なかには熱狂的な……狂信者と呼べそうな人までいるほど。

そんなとき――教祖である父が亡くなった。
旅行先でバス事故に巻き込まれて、あっけなく。
そして……僕が教祖になるしか、なかった。

……本当は嫌だった。
子供の頃から、一番したくないと思っていた生き方だった。
でも誰かが引き継がないと、
あのときの皆はなにをしでかすか分からなかった。

教祖の息子として、
いつのまにか現人神みたいに祀り上げられていた僕が、
新しい「教祖様」になるしか、なかった……。
 
 
 
     * * *
 
 
 
ノートパソコンの画面の中で、
女の子がさらに服の裾をめくり上げる。
でも次の瞬間、手がするり、とTシャツから抜けてしまった。
……わき腹を掻いただけ、みたいだった。

口の中に溢れそうなほどに溜まってた唾を、慌てて飲み込む。
鍵も掛けておいたドアを、それでも振り向いて確認する。
万が一、誰かに見られでもしたら大変だった。

性欲に流されるのは、律心教では許されない。
……父が勝手に作った、馬鹿げた教え。
頭ではそう分かってる。
でも子供の頃から繰り返し聞かされたそれは、
まるで呪詛のように僕の心と身体に染み込んでる……。

映像に目を戻すと、女の子がベッドから出るところだった。
小さくあくびをしながら、眠そうに目を擦ってる。
下に穿いてるのは、クリーム色のパジャマだった。

あらためて、綺麗な女の子だと思う。
このぐらいの年頃だと、普通は可愛いって表現したくなる。
けど、透明感……と形容したくなるような、
しずかで清楚な雰囲気が、彼女にはあった。

艶やかな黒髪に、白くきめ細やかな肌。
薄めの唇に、わずかに切れ長の瞳。
どこか上質な工芸品を思わせる美しさ。

それでいて、胸元もしっかりある。
いわゆる巨乳というほどじゃないけど、
でも、線の細い身体には、アンバランスにも思える大きさ。
Tシャツにできたゆるやかな膨らみは、
やっぱり先端が尖っているように見える。
ペニスがまた、ひくっと動いてしまう。

女の子がカメラに視線を向けた。
たぶんスマホで撮ってたんだろう、
ちゃんと撮影できてるか確かめるように手を伸ばしてくる。
身をかがめたせいで、シャツの胸元が開く。
白い谷間がちらっと見えた。
またペニスが跳ねる。

ズボンの中が窮屈で苦しい。
取り出したい、触りたい。
そんな思いが湧いてくるのを抑えられない。
けど……だめだ。
この映像は……そういう目的のものじゃ、ないんだから。

確認が終わったのか、女の子が元の位置に戻る。
それから床にひざまずいて、目をつぶる。
手をあわせて……祈りの言葉を唱えはじめる。
 
 
――信仰試験、と教団では定義されてる。
一日のなかで祈りを欠かさず、絶えず心を律しつづける。
それを第三者に確かめてもらい、信仰の物差しとする。
この試験に合格すれば、敬虔な信者であると認められる。

もっとも……教義書にはそんなことが書かれてるけど、
ほとんど形骸化した制度だった。
少なくとも僕が教祖を引き継いで以来、
誰かがそれを実践したなんて話は他に聞かない。
まして、高校生の子が私生活を晒すなんて……。
 
 
考えているうちに、映像ではお祈りが終わってた。
祈りの言葉が合っていたのかさえ、確かめてなかった。
慌ててシークバーを元に戻そうとして、
映像に続きがあるのに気づく。

「…………?」

手を止めて、映像の続きを待つ。
お祈りを終えた女の子が立ち上がり、
するり、とパジャマの下を脱いだ……。

「え……」

すらりとした太ももが見える。
それどころか、ショーツまで見えてしまってた。
白……いや、ほんのり薄いピンク色のショーツ。
真ん中には少しだけ皺が寄ってる……。
女の子のパンツ……。

すでに膨らんできていたペニスが、
ぎゅうぎゅうとズボンを下から突き上げ始める。
もう、どうしようもないほど勃起してた。

とっさに股間を手で押さえつける。
けど、その動きで亀頭をかるく擦ってしまう。
ズボンの上からなのに、甘い快感が走る。

「…ふ……ぁ…っ……」

自分でも分かるほど、みっともない声。
だけど、耐えられなかった。
性欲からも身を守るようにと、
小さい頃から、僕は性的なものから遠ざけられてた。
自分が教祖になってからも、
快楽に溺れてしまうのを恐れてなるべく避けていた。
なのに、こんなの……っ…。

画面の中では、Tシャツとショーツだけになった女の子が、
なぜかまたカメラがわりのスマホを確認しにくる。

やわらかそうな内ももが揺れ動いて、
そのあいだでピンクのショーツもよじれる。
普段なら、スカートやズボンに隠れて見えない下着が
カメラの前に惜しげもなく晒される。

「…………ぅ……」

ズボンのジッパーを下ろしてしまう。
だめだ、だめだ、と頭の中で自分に言い聞かせる。
分かってる、分かってる、と自分が必死にうなずく。
なのに……なのに手がペニスを取り出す。
取り出しただけ。少し触るだけ。
射精さえしなければ、大丈夫……。

不意に女の子が身をかがめる。
ショーツが遠ざかり、かわりに……胸元がアップになる。

さっきはちらっとしか見えなかった谷間が、
画面に大写しになって、ゆったりと揺れる。
それにTシャツの襟元が前より広がってる気がする。
おっぱいがほとんど丸見えで。
乳首の先まで見えちゃいそうで、でも見えなくて。

くちゅくちゅ、と音がうるさい。
いつのまにかカウパーが大量にこぼれ出してた。
あたたかいぬるぬるに包まれながら、竿を擦る。
亀頭を執拗にこね回す。
脳から、幸福感と罪悪感が同時に溢れる。

画面の中では、女の子の顔は見えない。
口元だけが映ってて……優しく笑ってる。
僕の行為を見透かしてるみたいに、
それでも受け入れてくれるみたいに、ふんわり微笑んでる。

射精感がこみ上げる。
だめだ……手を、とめなきゃ。
出しちゃうのは……本当に、だめだ……。
でも、この子は笑ってる。
僕がそうするってきっと分かってたはずなのに。

形の良い丸い乳房が、
Tシャツ越しにたゆん、たゆんと揺れ動く。
ときどき乳首まで見えそうになる。
画面の墨では、ピンクのパンツもちらちら見えてる。

「……手、を……離さ……なきゃ……」

自分に命令するように、呟く。
声に力がない。
でも、ほんの少しだけ……扱く速度が弱まる。
このまま手を、指さえ……離せば………。

『…………♡』

女の子の口元が、さらに深く笑みを作った。
両手を交差させながらTシャツの裾をつかむ。
そのまま……Tシャツがめくり上げられる。
真っ白なおっぱいが、ぷるんっと飛び出す…っ…。

「…あぁぁあああぁ……っ…!!」

いきなり精液が迸る。
もう扱く手さえ止めていたのに、
腰の奥が勝手に蠢いて、破裂して、出てしまってた。
びゅるり、どくりっ……と何度も精液が飛び散る。

「……ぁ…っ……ぁ……っ……」

気づいたら、ペニスを再び扱きだしてた。
やってしまった。出してしまった。
だったら、だったら、せめてもっと、たくさん……っ。

モニタの中の女の子を凝視する。
いまや完全にTシャツを脱いで、パンツしか穿いてない。
その小さなピンクの布切れに、
想像の中で、鈴口をしゅこしゅこと擦りつける。
現実の精液が、どぷりと溢れる。
竿をつたい落ちて、僕の指に絡まる。熱い。

ペニスはちっとも萎えない。
目が自然と、たぷたぷ揺れるおっぱいを追ってしまう。
そのやわらかな乳房に亀頭を押しつけ、
乳首に鈴口を擦りつけるのをイメージする。
また竿の根元がひくつき、精液が駆け上ってくる。
いままで以上の勢いで、びゅくびゅく噴き出る。
ノートパソコンの画面に、
女の子の色白の谷間にまで精液が飛び散る……。

「……ぁ………はぁ……」

わずかに勃起が弱まる。
でも手を動かしていると、ねっとりとした快感が
まだ身体の奥から湧いてくる。
どぷ……とぷ……と精がまだこぼれる。

それからやっと虚脱感がやってくる。
そして暗く冷たい後悔が胸の内に広がる……。
なのに……映像はまだ続いていた。

いったんカメラの前から女の子が離れ、
ブラと制服を取って戻ってくる。
さっきまで笑っていたのが嘘みたいな、
丁寧な仕草で服を身に着けてく。
そんな姿さえ、いまは淫らなものに見えて。
ペニスがまた硬くなっていく……。
ああ……だめなのに………また、僕は………。

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